今秋オークション・シーズンの最注目! 219億円予想のクリムトの傑作含むローダー・コレクションがセールに

サザビーズニューヨークで11月18日に予定されているオークションに、アートコレクターとして知られた億万長者、レオナード・ローダー(1933-2025)のコレクションが出品されると9月15日に発表された。その中には、落札価格が1億5000万ドル(約219億円)を上回ると予想されるグスタフ・クリムトの傑作《エリザベト・レデラーの肖像》(1914-16)も含まれる。

グスタフ・クリムト《エリザベト・レデラーの肖像》(1914-16)Photo: Courtesy Sotheby's

サザビーズは、11月18日にニューヨークで開催されるイブニングセールで、6月14日に92歳で死去した億万長者レオナード・ローダーのコレクションを出品すると9月15日に発表した。

1933年にニューヨークに生まれたレオナード・ローダーは、1958年に家業のエスティ・ローダー・カンパニーズに参画。社長やCEO、会長職を歴任する中で、化粧品ブランドの「アラミス」「クリニーク」の立ち上げや、「ボビイ ブラウン」「M・A・C」「ジョー・マローン・ロンドン」などのブランドを買収を行って巨大企業へと成長させた。美術にも造詣が深かったローダーは、US版ARTnewsのトップ200コレクターズの常連だった。そして1977年から2011年までホイットニー美術館の理事を務め、死去するまで名誉理事長の地位にあった。

今回彼のコレクションからサザビーズに出品されるのは55作品。中でも群を抜いているのがグスタフ・クリムトの《エリザベト・レデラーの肖像》(1914-16)で、落札価格が1億5000万ドル(約219億円)を上回ると予想されている。同作はウィーンでロスチャイルド家に次ぐ第2の富豪だったレデラー家が、クリムトに当時20歳だったエリザベトを描かせたもので、その後わずか10年で当主の死去とナチス・ドイツの侵攻により没落していく一家のひとときの栄華がカンバスに描き留められている。

エドヴァルド・ムンクの《聖ヨハネの夜》(1901-03)Photo: Courtesy Sotheby's

そのほかの出品作品、クリムトの風景画2点、《花咲く草原》(1906)は8000万ドル~1億ドル(約117億円~146億円)、《ウンテラッハの森の斜面》(1917)は7000万ドル~9000万ドル(約102億円~131億円)、エドヴァルド・ムンクの《聖ヨハネの夜》(1901-03)は2000万ドル(約29億円)、アグネス・マーティンの絵画には1000万ドル(約14億円)超の予想落札価格が付けられており、総額は4億ドル(約586億円)と予想される。これは、この秋ニューヨークで開催されるオークションで最大の取引額となる。

しかし、この発表の数日前に、ガーディアン紙はサザビーズが2億4800万ドル(約363億円)の損失を計上したと報じた。また、8月にはニューヨーカー誌に、匿名の元幹部が、サザビーズを全株買収したパトリック・ドラヒのリーダーシップは、強引な施策で混乱させるトランプのそれと同じだと証言。舞台裏の不和を示唆した。

そのような状況を抱えながら迎える今回のオークションではあるが、サザビーズの最高経営責任者は最大級の期待を寄せている。タイムズ紙の取材に対して、「このコレクションで私たちは歴史を作ることになると思います。それは長い間語り継がれることになるでしょう」と語った。(翻訳:編集部)

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