今週末に見たいアートイベントTOP5:現代アートの視点から「ゴースト」を眺める、角文平が「物に宿る時間」をテーマに新作を発表

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地 ソフィア クレスポ / エンタングルド アザーズ(シャネル・ネクサス・ホール)より、Entangled Others –《specious upwellings》detail

1. 角文平個展「記憶のボリューム」(アートフロントギャラリー)

撮影:野口浩史
撮影:野口浩史
撮影:野口浩史

角文平が見つめる、物に宿った時間

国内外で注目を集めるアーティスト、角文平による個展。角は2012年以降、瀬戸内国際芸術祭や百年後芸術祭などにも参加し、着実に活動の幅を広げてきた。海外においても今年5月には韓国で初となる個展を開催し、今後益々国際的な活躍が期待される。

本展は角がこれまで手掛けてきたシリーズの中から、古来日本では、長年使われた物には魂が宿るとされ、「付喪神(つくもがみ)」として神格化される思想に着想を得た「記憶」シリーズに焦点を当て、新作を中心としたインスタレーションを展開する。角はこの展覧会を通して、物に宿る時間、人や場所に蓄積された記憶、そしてそれらに向き合う私たちの感覚を問いかける。

角文平個展「記憶のボリューム」
会期:9月12日(金)〜10月25日(土)
場所:アートフロントギャラリー(東京都渋谷区猿楽町29-18)
時間:11:00~17:00
休館日:日月祝


2. ゴースト 見えないものが見えるとき(アーツ前橋)

山内祥太《Being... Us?》2025年
ヒグチユウコ『Fear』より 2020年 ©HIGUCHI YUKO
尾花賢一《赤城山リミナリティ》2019年 撮影:木暮伸也

現代美術から多角的に「ゴースト」を眺める

「ゴースト」をキーワードに現代美術の多様な表現を紹介する大規模展。本展ディレクターの南條史生が集めた、国内16組、海外4組のアーティストによる約100点が展示されている。

展覧会は、山内祥太や平田尚也による新作のほか、彼らの先駆といえるトニー・アウスラーによる大規模な映像インスタレーションなどを紹介する「多様なメディウム、テクノロジーで出会うゴースト」、クリスチャン・ボルタンスキー、丸木位里・俊、ハラーイル・サルキシアン、丹羽良徳の作品を通して、私たちを揺り動かす歴史上の幽霊=ゴーストと向き合う「歴史や土地のゴーストと向き合う」、尾花賢一+石倉敏明が水にまつわる赤城山の伝説を取材した新作を館内で展示する「前橋のゴーストを探る」といった3つのテーマに沿って作品を紹介していく。ほか出品作家は、岩根愛、諸星大二郎、ヒグチユウコ、松井冬子、新平誠洙、竹村京、西太志、横尾忠則諏訪敦アピチャッポン・ウィーラセタクン+チャイ・シリ、マームとジプシー、daisydoze。

ゴースト 見えないものが見えるとき
会期:9月20日(土)〜 12月21日(日)
場所:アーツ前橋(群馬県前橋市千代田町5-1-16)
時間:10:00〜18:00(入場は30分前まで)
休館日:水曜


 3. NEW New Artists / NEW Backbone Artists 2025(Art Center NEW)

西村梨緒葉《歌を教える》撮影:黒坂ひな
orm「Specular Land」撮影:黒坂ひな
白川真吏《GO! 超器官戦隊オーガンジャー(カラオケver)》撮影:黒坂ひな

同時代を生きる「表現者」たちの競演

今夏実施した公募企画で選出されたアーティストによる展覧会。公募は2部門設けられ、「NEW New Artists=35歳未満」は片山真妃・高田冬彦・秋葉大介が、「NEW Backbone Artists=35歳以上」は倉知朋之介・スクリプカリウ落合安奈・平野遥が審査を担当した。その結果、NEW New Artists部門のグランプリは佐藤清、白川真吏、白間アミーナ、西村梨緒葉、森下綾香、渡邉元貴によるグループ、NEW Backbone Artist部門はorm / オームが受賞した。

本展は、グランプリ2組に審査員特別賞4組の計6組による作品を展示する。佐藤清はじめ6人によるグループは、様々な人生の場面に寄り添ってきた「カラオケ」という存在についてそれぞれ再考する。orm / オームは、自閉スペクトラム症をもつ子どもとの出来事を起点に、家庭という内向的で可視されにくい小さな社会とそれを取り囲む大きな社会を地続きに捉えるインスタレーション作品を発表する。

NEW New Artists / NEW Backbone Artists 2025
会期:9月26日(金)〜 10月19日(日)
場所:Art Center NEW(神奈川県横浜市西区みなとみらい5-1 新高島駅B1F)
時間:12:00〜20:00
休館日:水木


4. 再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える(高知県立美術館)

ハインリヒ・カンペンドンクを詐称したヴォルフガング・ベルトラッキ《少
女と白鳥》 1990年代、高知県立美術館蔵
作品の分析調査風景 提供:株式会社堀場テクノサービス (C) HORIBA

古今の美術界を騒がせてきた「贋作」について考える

高知県立美術館がドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの作品として1996年に購入した《少女と白鳥》の贋作疑惑が2024年に浮上。同館は京都大学准教授の田口かおりに協力を依頼して同作の科学分析調査を行い、来歴や証拠資料などを含めて総合的に検討した結果、この作品が贋作であるとの結論に至った。

本展は《少女と白鳥》を公開すると共に、作品の購入・収蔵の経緯や実施した科学分析の内容もあわせて紹介することで、様々な角度から本作について「再考」する。また、古今東西の主な贋作事件を取り上げ、贋作にまつわる歴史を年表形式のパネル展示を行うほか、田口が《少女と白鳥》と共に科学的な調査を行った同館所蔵のマルク・シャガール《空を駆けるロバ》(1910)やパウル・クレー《故郷》(1929)などの調査結果を実際の作品と共に紹介する。

再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える
会期:第2期 10月4日(土)〜19日(日)
場所:高知県立美術館(高知県高知市高須353-2)
時間:9:00〜17:00(10月4日は19:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日は翌平日)


5. Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地 ソフィア クレスポ / エンタングルド アザーズ(シャネル・ネクサス・ホール)

Entangled Others –《specious upwellings》detail
Entangled Others –《specious upwellings》detail

AIと生命科学が生み出す芸術とは

リスボンを拠点に活動するアーティスト、ソフィア クレスポと、彼女がアーティスト・デュオとして参加するエンタングルド アザーズの作品を紹介する。クレスポは、人工知能(AI)と生命科学の融合において独自の詩学を築く。エンタングルド アザーズは、そんなクレスポとノルウェー出身のアーティスト・研究者であるフェイレカン・カークブライド・マコーミックによって2020年に結成された。

本展では、海中2000メートル以深の世界を探る《liquid strata: argomorphs》(2025)、海水が深層から表層に湧き上がる現象「湧昇」という地球規模の現象とAIの視覚言語を結びつけた《specious upwellings》(2022-2024)、そして遺伝情報とデジタルデータの構造を重ねた《self-contained》(2023-2024)を含む5シリーズを紹介する。映像、彫像、そしてデジタルインスタレーションなどの展示作品が観るものに投げかけるのは、いずれも断片的なデータと仮説から世界を読み解こうとする科学的営みと、詩的な想像力との交点に立ち現れるヴィジョンだ。長谷川祐子が主宰する「Hasegawa Curation Lab.」とのコラボレーションのもと、次世代を担う若手キュレーターを起用する2回目の展覧会。今回は、キュラトリアル・コレクティブ「HB.」の共同代表である三宅敦大が担当する。

Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地 ソフィアクレスポ/エンタングルドアザーズ
会期:10月4日(土)〜 12月7日(日)
場所:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3)
時間:11:00〜19:00(入場は30分前まで)※イベント開催により異なる場合あり。最新情報はウェブサイトにて
休館日:無休

あわせて読みたい