スコットランドの名城で「極めて稀な」13世紀の髪飾りを発見。中世のファッション文化を映す
スコットランドのハイランド西部にある有名な13世紀の古城、アイリーン・ドナン城で発掘調査が行われ、「グラボワール」と呼ばれる非常に珍しい整髪具兼ヘアアクセサリーが見つかった。これは、イギリスでは3例目の大発見となる。

アイリーン・ドナン城は、13世紀から15世紀にかけて中世ゲール人のマッケンジー一族とその同盟であるマクレー一族の拠点であった。このほどその城で、スコットランド国立博物館の監督のもとFASヘリテージが主導した発掘調査が行われ、「グラヴォワール」と呼ばれる13世紀の整髪具兼ヘアアクセサリーが見つかったとBBCが伝えた。ほかにも、ブローチやドレスピンが出土した。
グラヴォワールは、おもに13世紀に作られた針状の道具で、凝ったヘアスタイルのために髪を分けて整えるのに使われ、ヘアピンとしても機能した。今回見つかったものは、柄の部分に頭巾のようなものをかぶった人物が彫られている。
スコットランド国立博物館(NMS)のアリス・ブラックウェル博士はBBCの取材に、グラヴォワールが見つかる事は非常に稀で、イギリス国内ではロンドンの2例目に続く3例目であることを明かした。ブラックウェルはロンドンの2例が象牙製であるのに対して、アイリーン・ドナン城のものは地元の赤鹿の角で作られており、中心部の流行が地方でどのように適応されたかを示していると指摘。そして、グラヴォワールには鏡と櫛がセットだった可能性があると付け加えた。
ドゥイッヒ湖に囲まれたアイリーン・ドナン城は、「スコットランドで一番美しい城」と称される人気の観光スポットだ。1986年のファンタジー映画『ハイランダー』や1999年の映画『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』などのロケ地としても使われている。
今回の調査では、銅合金や銀、金を溶かすために使われた小さな陶器のカップも見つかった。そのことから、アイリーン・ドナン城では宝飾品や身の回りの服飾品が作られていたと考えられる。
ブラックウェルは、「13世紀頃、手の込んだヘアスタイルを作るファッションが北ヨーロッパに広まったようです。今回見つかったグラヴォワールの魅力的な部分は、大陸のハイファッションを取りいれ、それを地元の素材で表現していることです」と話す。
今回の発見は、城は政治の中心地であるばかりではなく、文化、職人技、そして家庭生活が交差する活気ある共同体であったことを示している。そして、スコットランドのハイランドという僻地であっても、広範なヨーロッパの流行や傾向と結びついていたことを浮き彫りにしている。エディンバラのグラントンにあるスコットランド国立博物館は、このグラヴォワールをイギリス国内で最も重要な中世金属加工コレクションの一つとして収蔵している。