「驚異的な保存状態」紀元前240年頃の古代ローマ軍ヘルメットを海底で発見。ポエニ戦争兵士のものか

昨年イタリア・シチリア島の西海岸沖にあるエーガディ諸島の海底で行われた調査で、紀元前241年のポエニ戦争でローマ軍が使用したヘルメットが引き上げられた。

イタリア・エーガディ諸島の海底から引き上げられた古代ローマ軍のヘルメット。Photo: Courtesy Sicilian Region

深海潜水士マリオ・アレーナ率いる水中遺跡記録協会(Sdss)のチームが、昨年8月にイタリア・シチリア島西海岸沖にあるエーガディ諸島で行った調査で、ブロンズ製のヘルメットが引き上げられた。9月5日、Archaeonewsが伝えた。

ヘルメットは、古代ローマで最も長く使われた羽根飾りを取りつけるために頭頂部が盛り上がり、頬当てが付いた「モンテフォルティーノ型」だった。現在見られるこの型のほとんどは頬当てが欠けており、完全な状態で見つかるのは非常に稀だ。シチリア文化遺産・アイデンティティ評議員のフランチェスコ・パオロ・スカルピナートは、「これまでに回収された中で最も美しく完全なもののひとつです」と驚きの声を上げた。

考古学者たちは、このヘルメットはおそらく紀元前241年、第1次ポエニ戦争中のエガディ海戦で落とされたものと考えている。ポエニ戦争は紀元前264年から紀元前146年にかけて3度に渡って行われた古代ローマとカルタゴ間の戦争で、最終的にはローマが勝利し、ローマ史上で非常に重要な戦いとなっている。

スカルピナートはこの発見についてArchaeonewsに、「紀元前241年の戦いに関する歴史的知識を豊かにするだけでなく、世界で唯一無二の文化遺産の守護者としての我が島の地位を強化するものです」と述べた。

研究者たちはまた、ヘルメットが見つかった場所で以前引き上げられた、錆に覆われた30点の金属製品をCTスキャンを使って調査した。すると、エガディ海戦期の剣、槍、投槍であることが分かった。それにより、同海戦でローマ軍の船がカルタゴ軍に攻撃され、沈んだことが明らかになった。

さらに、同じ場所で回収された船首衝角のひとつを清掃・分析したところ、「Ser. Solpicius C.F. Quaestor Probavit」という文字が現れた。これは、第1次ポエニ戦争の最中を含む紀元前243年以降にローマ行政官を務めたガイウス・スルピキウスを指すものと考えられている。

今回の調査で、潜水士は5世紀に作られた「用途不明」の大きなブロンズ製の取っ手も発見した。このことから、エーガディ諸島の海底には、海戦や、商業交流、人々の暮らしなど何十世紀にも渡る歴史が多層的に積み重ねられていることが実証された。

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