ペース・ギャラリーが香港の展示スペースを閉鎖。今後も中国圏でのアーティスト支援は維持
ペース・ギャラリーが香港の展示スペースを今月で閉鎖し、現在入居する「H クイーンズ(H Queen’s)」から退去を予定していることが明らかになった。ただし、香港事務所は維持し、別の場所でのギャラリースペース再開も視野に入れている。

香港・中環(セントラル)にある26階建てのビル「H クイーンズ」は、2017年に「アートのためのビル」として設計された。ここは、国際的ギャラリーを集積させ、香港をアジアのアートハブとして位置づける戦略的拠点でもある。そんなH クイーンズに、2018年3月から香港における2拠点目として居を構えていたペース・ギャラリーが同ビルとの賃貸契約を更新せず、今月中に展示スペースを閉鎖する予定であることをアート・ニュースペーパー紙が第一報として伝えた。10月18日まで開催中のアレハンドロ・ピニェイロ・ベジョの個展が最後の展覧会となる。
ペース・ギャラリーの広報担当者はUS版ARTnewsに対し、同ビルが「我われのニーズに合わなくなったため、他の多くのギャラリーと同様、賃貸契約の満了をもって退去します」と回答。ただし、展示スペースの閉鎖はこの地域からの完全撤退を意味するものではなく、香港と北京の事務所は維持し、適切な機会があれば新たなスペースの開設を検討するという。
ペース・ギャラリーが香港進出を果たしたのは2014年。中環で1920年代に建てられたペダービルに初めての展示空間を構えたが、2018年に現在のHクイーンズに移転した。このタワーは当初、デイヴィッド・ツヴィルナーやタン・コンテンポラリーをはじめとする大手ギャラリーを集めたことで話題になった。しかし、現在残っているギャラリーはわずかで、ハウザー&ワースが2023年に近隣へ移転したのに続き、パール・ラムとホワイトストーンが同ビルを離れている。
相次ぐギャラリーの退去は、香港のアート市場にさまざまな面で逆風が吹いていることを示している。具体的には、中国本土のコレクターによる支出の引き締め、特別行政区である香港に対する中国政府の統制強化、そして世界的なアート市場の低迷だ。そんな中、ニューヨークとロンドンに拠点を持つレヴィ・ゴーヴィ・ダヤンも昨年、顧客行動の変化を理由に香港のギャラリーをクローズした。
H クイーンズのスペースは閉鎖するものの、ペース・ギャラリーは同地域への長期的なコミットメントを引き続き掲げている。広報担当者は、2008年に海外初の支店を北京に開設し、同地に進出した最初期の主要な欧米系ギャラリーとして先駆的役割を果たしたことを挙げ、「我われは香港およびグレーターチャイナ地域への深い関与を継続していきます」と強調。同ギャラリーは事務所運営や美術館との連携、この地域での展示を通じてアーティストへの支援を続けると付け加えた。(翻訳:石井佳子)
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