世界的アートフェア「フリーズ」、約300億円で買収完了。新親会社はスポーツ含む体験型事業に注力

世界各地でアートフェアを展開するフリーズが、新たに創業されたMARIに約305億円で買収された。MARIは、旧親会社エンデバー・グループ・ホールディングスの前CEOのアリ・エマニュエルが創業した企業。アートに加え、スポーツやエンターテインメント分野で体験型イベント事業の拡大を図る。

フリーズ・ロンドン2024の様子。Photo: Courtesy of Frieze
フリーズ・ロンドン2024の様子。Photo: Courtesy of Frieze

世界各地で7つのアートフェアを開催するフリーズの買収が成立した。フリーズは、アートフェア以外にも美術誌『Frieze』『Frieze Week』に加え、2つの展示スペースを擁している。買収したのは、フリーズの親会社であったエンデバー・グループ・ホールディングスの元CEO、アリ・エマニュエルが新たに創業したMARI。フリーズの売却条件は公表されていないが、評価額は2億ドル(約305億円)と報じられている

今回の買収は、フリーズに留まらない。マイアミ・オープンやマドリード・オープンといったテニスの大会、さらにクラシックカーのオークションハウス、バレット・ジャクソンの過半数株式も含まれる。買収についてエマニュエルは、次のような声明を発表した。

「モノを所有することよりも体験が重視されるようになったいま、リアルで行われる体験型イベントの需要はかつてないほど高まっています。働き方の多様化やAIによる効率化で生まれた時間的余裕を背景に、スポーツやアート、エンターテインメントといった文化的な体験を求める動きはこれまで以上に深まっていくでしょう。MARIでは、フリーズの世界的な影響力と、マドリード・オープン、マイアミ・オープンを基盤に、人々が集い、興奮を共有できる新たな施策を生み出していきます」

旧親会社のエンデバー・グループ・ホールディングスによるフリーズの売却は今年5月に発表された。タレントエージェンシーやスポーツマネジメント会社も傘下にもつ同社は、3月にプライベート・エクイティ・ファンドのシルバーレイク・マネジメントにより買収・非公開化され、ウィリアム・モリス・エンデバー(WME)へと社名変更した。エマニュエルは今年はじめまで同社CEOを務め、現在はWMEのエグゼクティブ・チェアマンの職にある。

MARIを創業するにあたり、エマニュエルはおよそ20の投資家たちから20億ドル(約3050億円)の資金を調達している。そのなかには、アポロ・グローバル・マネジメント、レッドバード・キャピタル・パートナーズ、カタール投資庁のほか、医師でロサンゼルス・タイムズのオーナーであるパトリック・スーン・シオン、グーグルの元CEOでロサンゼルス現代美術館の環境・芸術賞に資金提供したエリック・シュミットなどが名を連ねる。

MARIは創業に際して経営体制も公表した。エマニュエルは、WMEおよびTKOホールディングスを率いるマーク・シャピロと共同で経営を担う。シャピロはMARIの主要投資家でもあり、取締役も兼任する予定だ。さらに、エンデバーのバイスプレジデントを務めたマット・コーンとベン・エノウィッツの二人が、それぞれマネージング・パートナーとCFOに就任する。イベント事業は既存体制のもとで継続され、フリーズのCEOにはサイモン・フォックスが留任する。

出資者の一社であるアポロ・グローバル・マネジメントのパートナー、ロブ・ギヴォンは、声明で次のように述べた。

「アリ・エマニュエル、マーク・シャピロ、そして彼らのチームの重要なパートナーとして、スポーツとライブイベント業界における体験型事業の構築に携われることを非常に喜ばしく思います。この2つの分野は、当社が持続的な成長を見込んでいる重要な領域です。アポロ・スポーツ・キャピタルは、MARIのチームと緊密に協力し、既存事業の価値を引き出すとともに、ライブイベント分野における新たな可能性を探っていきます」(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい