テート、女性作家3人の作品を新収蔵。資金源はフリーズによる3000万円の慈善支援

フリーズ・ロンドンのVIPデーが行われた10月15日、イギリス政府の美術コレクションを管理するテートが、新たに女性アーティストの作品3点を購入した。この取得は、フリーズの旧親会社であるエンデバー社が設立した基金を活用して行われたもの。

テートが購入した3点の作品のうち、タンザニア出身のルブナ・チョウドリーによる《Assembly》(2025)。Photo: Courtesy Tate

フリーズ・ロンドンのVIPデーで精力的な動きを見せたイギリステートが、女性作家による次の新作3点の所蔵を決めている。

まず、ジャベル・コンテンポラリー・ギャラリーからは、タンザニア出身でロンドンを拠点とするアーティスト、ルブナ・チョウドリーの陶器と木を用いた彫刻作品《Assembly》(2025)。ヴィクトリア・ミロからは、イギリス人アーティスト、バーバラ・ウォーカーの2025年の新作《End of Affair II》(紙にコンテ、木炭、パステル)。そして、イギリスのアウトサイダーアート作家、故マッジ・ギルによる《Untitled (Venus Mid Heaven)》(1920-30、カルコ紙にインク)を、フリーズ・マスターズに出展したギャラリー・オブ・エブリシングから購入している。

これらの作品取得はフリーズ・テート基金を通じて行われた。基金は最近までフリーズを所有していたエンデバー・グループ・ホールディングスによって設立され、毎年15万ポンド(約3000万円)の慈善支援をテートに提供するというもの。今月初め、同社の前CEOであるアリ・エマニュエルが新たに創業したMARIによるフリーズの買収完了が発表されたが、フリーズ・テート基金が今後も継続されるかは明らかになっていない。フリーズは、アートフェアのほか、美術系出版物と2カ所の展示スペースを所有・運営している。

2003年のフリーズ・ロンドン初開催以来、テートは同フェアで100人を超えるアーティストが手がけた170点以上の作品を購入。同組織は声明で、「フリーズでの取得作品はその後、テートの4つの美術館で数百万人の来館者に鑑賞され、国内外の美術館やギャラリーと共有されてきました」と説明している。それに加え、テートのディレクターであるマリア・バルショーは声明でこう述べている。

「フリーズ・テート基金による寛大な慈善支援が、今年も継続されたことを大変喜ばしく思います。今回取得した素晴らしい作品によって、テートのコレクションはさらに充実したものになります。これらが今後テートの各美術館に加わり、一般の皆様にご覧いただける日を心待ちにしています」

今年のフリーズ・テート基金選考委員会は、リーダーのグレゴール・ミュア(テート・コレクション・ディレクター)のほか、ドミニク・ヘイゼ=ムーア(イギリス現代美術部門シニアキュレーター)、ニコレッタ・ランベルトゥッチ(イギリス近現代美術部門キュレーター)、ヴァレンティン・ウマンスキー(国際美術部門キュレーター)で構成されている。

なお、昨年のフリーズ・ロンドンでテートが取得したのは、ナミナプ・マイムル=ホワイト、モハメド・Z・ラーマン、エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの作品だった。(翻訳:石井佳子)

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