ヨーロッパの写真家14組が東京の公共空間をジャック! 「SEEEUヨーロッパ写真月間2025」が開幕
ヨーロッパ12カ国から14組のアーティストが参加する写真祭「SEEEUヨーロッパ写真月間2025」が、東京都内にある公共空間・屋内会場12カ所で開催中だ(11月23日まで)。250点以上の出品作品を通じて「現実の輪郭」を問いかける。

ヨーロッパを拠点に活動する写真家たちに焦点を当てた「SEEEUヨーロッパ写真月間2025」が、赤坂二・六丁目地区開発計画工事仮囲い、さくらインターナショナルスクール初等部、田町センタービルなど、都内12カ所で開催中だ(10月23日〜11月23日まで)。
「Reframing Realities: 現実の新たな輪郭」をテーマに掲げる本写真祭では、武力衝突や気候危機などに直面するヨーロッパで、「記録」と「創造」のあいだを行き来する表現に挑んだ作品を紹介する。さらに、自己イメージの演出や無意識の加工、合成によって形づくられる視覚的現実が揺らぐ社会に生きる私たちへ、「現実の輪郭はどこにあるのか」「それを描き直すのは誰か」といった問いを投げかける。
参加するのは、ヨーロッパ12カ国14組のアーティストたち。美術館やギャラリーなど既存の展示空間を飛び出し、東京都内12カ所の公共空間・屋内会場を舞台に、250点を超える作品が展開されるのも特徴だ。
その多彩な出展作家のなかから、いくつかの注目作品を紹介しよう。例えば、スイス出身のタイヨ・オノラトとニコ・クレブスは、海洋科学者との協働で制作した写真を通じ、環境の脆弱性や現実と虚構の境界の曖昧さを探る。ベルギー出身のロール・ウィナンツは、氷核の融解を感光紙に写し取った《Time Capsule》や、火山物質から抽出した顔料による版画《Phenomena》などを発表している。
また、ウクライナで生まれ、現在はイギリスを拠点に活動するヴァルヴァラ・ウリクは、旧ソ連崩壊後のウクライナで育った幼少期の記憶を「実際の記憶」と「想像の記憶」を交えて再現した《Sunshine, How Are You?》を発表。社会情勢の変化で故郷や家族とのつながりが難しくなるなか、アルバム写真や断片的な記憶を手がかりに、失われゆく文化や暮らしの記録を試みる。
このほか、リトアニアのタダオ・チェルン、イタリアのクラウディア・フジェッティ、ギリシャのマリア・マヴロポールらの作品や、写真家パトリック・ツァイが審査員を務める「フォト・エッセイ賞」の受賞作も紹介される。
文化事業に特化したスタジオKOIを主宰し、日本文化をリトアニアに紹介するフェスティバル「nowJapan」などのプロジェクトを手掛けるプロデューサーで、SEEEUのフェスティバル・プロデューサーを務めるセルゲイ・グリゴリエフは、アーティストの選出基準についてこう語る。
「現代ヨーロッパが抱える社会問題について敏感な視点をもち、身の回りの生活や社会で起きていることについて積極的に発信している作家たちを選出しました。その背景には、ヨーロッパで暮らす人々が直面する課題や多様な文化を写真を通じて届けたいという思いがあります」
さらにグリゴリエフは、「私たちは、東京の人々の日常の中に作品を届け、ギャラリーや美術館以外の場所でアートとの出会いの機会を創出することを目指しました」と続ける。「都市そのものを遊び場とし、地域コミュニティをつなぐ場にしたいと考えています」
会期中は展示だけでなく、さまざまなイベントも開催される。10月24日には、文化プロデューサーらが東京の都市空間をアートの場として活用する可能性を議論するパネルトーク「アート空間としての都市」が開催される。また、10月28日には、日本とヨーロッパのアーティストやキュレーターが写真を通じて現代社会をどのように映し出し、創り出し、問い直すのかを語り合うトークイベント「T3 × SEEEU: New Perspectives」(T3 PHOTO FESTIVAL TOKYOとの共同企画)も。このほか、ウクライナ避難民支援のためのチャリティオークションや、展示アーティストによる小学生向けワークショップなども予定されている。
展示会場はすべて無料で入場可能。詳細な会場リスト、およびイベント情報は公式ウェブサイトから確認できる。
SEEEU ヨーロッパ写真月間 2025
場所:東京都内の公共空間・屋内会場12カ所
会期:10月23日(木)〜11月23日(日)
料金:無料









