ローマで中世の塔が崩落、閉じ込められた作業員1人が死亡。保存修復作業中の事故

11月3日、イタリア・ローマ中心部のコロッセオやフォロ・ロマーノに近い13世紀の塔の一部が崩落し、修復工事を行っていた作業員1人の死亡が確認された。崩落は2回にわたり、1度目の救出作業中に2度目の崩落が起きている。

ローマのトッレ・デイ・コンティで起きた崩落事故の救助活動の様子。Photo: Claudia Chieppa/Anadolu via Getty Images

11月3日、古代ローマ時代の遺跡が集中するローマの中心部で、13世紀に建造された要塞塔トッレ・デイ・コンティの南側の控え壁の一部が崩落し、修復作業中の作業員4人が閉じ込められた。

はしご車などが出動し、約140人の消防士が救助活動に当たっていたところ、階段や屋根の一部を巻き込んだ2度目の崩落が発生。閉じ込められていたうちの1人が瓦礫の下敷きになり、約11時間後に救出されたが搬送先の病院で死亡が確認された。当局の発表では、死亡したのはルーマニア国籍の男性作業員、オクタイ・ストロイチとされている。

高さ約30メートルのトッレ・デイ・コンティは、1238年に教皇インノケンティウス3世によって家族の住居として建てられたが、1349年の地震で損傷を受け、17世紀にはさらに崩壊が進んだ。塔は2006年以降使われておらず、老朽化が進んだため保存修復作業中だった。工事は約800万ドル(約12億円)の予算で2022年に開始され、2026年に完了が予定されていた。ローマ市の公式サイトでは、修復プロジェクトについて次のように説明されている。

「この事業は、トッレ・デイ・コンティとその地下部分の構造的な復旧、修復、安全対策、そして保存を目的としています。修復工事は市民や観光客がこの遺産を利用できるようにし、その価値を高めるための準備段階であり、特に皇帝たちのフォルム遺跡群(フォリ・インペリアーリ)に関する博物館や、ローマ中心部の考古学地区サービスセンターとしての活用が期待されています」

イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、事故の発生に対しAP通信への声明で次のように述べている。

「ローマのトッレ・デイ・コンティ崩落事故で亡くなられた労働者オクタイ・ストロイチ氏の悲劇的な死に対し、私個人および政府を代表して深い哀悼の意を表します。言葉に尽くせぬ悲しみの中にあるご遺族と同僚の皆様に、心よりお見舞い申し上げます」

また、ローマのロベルト・グアルティエリ市長は、11月5日を哀悼の日とすると宣言し、声明でこう述べた。

「トッレ・デイ・コンティの崩落事故で亡くなられたオクタイ・ストロイチ氏に対し、衷心より哀悼の意を捧げます。ローマ市の代表として、そして私個人として、ご遺族、同僚、そして彼と交流のあった全ての方々に心からお悔やみ申し上げます。また、複雑かつ劇的な状況の中で、高い専門性と献身をもって対応を行った消防士、警察官、救助隊員に深く感謝します」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい