10代の観光客がメトロポリタン美術館の「傑作」を破損。薬物影響の可能性も

ニューヨークメトロポリタン美術館で10代の観光客が歴史的な名画に水をかけるなどして破壊行為をはたらき、逮捕された。容疑者は何らかの薬物またはアルコールの影響下にあったのではないかと報じられている。

ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル《ド・ブロイ公爵夫人の肖像》(1851–53) Photo: Metropolitan Museum of Art

ニューヨークの警察当局によると、11月3日午後4時30分ごろ、メトロポリタン美術館で19歳の観光客、ジョシュアジョシュア・ヴォーリンが展示作品に水を浴びせるなどの破壊行為をはたらいたとして逮捕された。

水をかけられる被害にあったのは、19世紀フランス新古典主義の巨匠、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルの《ド・ブロイ公爵夫人の肖像》と、ジローラモ・ダイ・リブリによる16世紀イタリアの祭壇画《Madonna and Child with Saints(聖母子と聖人たち)》で、さらに2枚のタペストリーが引き裂かれた。アングルの作品は、メトロポリタン美術館のオンラインカタログで「傑作」と評されている。当局によると容疑者は間もなく身柄を拘束され、負傷者の報告はなかった。

タイムズスクエアのホテルに滞在していたヴォーリンは、破壊行為の動機について明らかにしていない。ニューヨーク・ポスト紙が報じるところでは、「何らかの薬物やアルコールなどの物質」の影響下にあったと見られ、母親によって警察に引き渡された。当局の発表では、容疑者は器物損壊罪で起訴される前に病院に搬送されていたという。

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事件が起きたメトロポリタン美術館の入り口。Photo: Lorina Capitulo/Newsday RM via Getty Images

《ド・ブロイ公爵夫人の肖像》は、メトロポリタン美術館ヨーロッパ絵画部門の目玉作品で、アングルが晩年に手がけたものの1つ。青のサテンとレースの飾りに生き生きとした輝きを与える緻密かつ滑らかな筆致が高く評価され、真珠と金の宝飾品がその美しさを引き立てている。

モデルとなった女性の夫、アルベール・ド・ブロイからアングルが肖像画の制作を依頼されたのは、2人が結婚して数年後のことだった。しかし、公爵夫人となったジョゼフィーヌ=エレオノール=マリー=ポーリーヌ・ド・ガラルド・ド・ブラサック・ド・ベアルンは、絵が完成して間もなく結核で亡くなった。

メトロポリタン美術館の声明では、損傷は軽微で、修理費用は1000ドル(約15万3000円)ほどの見込みとされている。(翻訳:石井佳子)

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