ルーブル美術館が初めて女性現代アーティスト作品を収蔵。マルレーネ・デュマスの新作シリーズ

存命女性アーティストのオークション記録を今年5月に更新したマルレーネ・デュマスの作品が、ルーブル美術館の常設コレクションに加わった。同館が女性の現代アーティスト作品を収蔵するのはこれが初。

マルレーネ・デュマス。Photo: Getty Images
マルレーネ・デュマス。Photo: Getty Images

ルーブル美術館が現代で最も影響力のある画家の一人、マルレーネ・デュマスによる作品を収蔵した。同館が女性の現代アーティストによる作品を収蔵するのは史上初だ。

フランスのル・モンド紙によれば、収蔵されたのは「Liaisons」と題された9点のシリーズ作品で、ルーブル美術館ドゥノン翼1階での展示がはじまった。デイヴィッド・ツヴィルナーに所属するデュマスは、荒々しい筆致で描かれた幽霊のような人物像と独特な色調の作品で知られ、人々の内側に眠る謎めいた部分を描き出す。今回、ルーブル美術館に収蔵された彼女の新作も例外ではなく、松葉色や土色、明るいオレンジ、褪せた青色で塗りつぶされた顔が美術館の壁に並ぶ。こうした作風について、デュマスはル・モンド紙に次のように語っている

「絵画の制作は、成功が保証されていない戦いに挑むということ。絵の具とキャンバスと戦い、自分の身体を限界まで追い込んで、自分の思考や先入観に抵抗することが必要となります」

今年5月にクリスティーズで開催されたオークションでは、デュマスの作品《Miss January》が1360万ドル(当時の為替で約19億円)で落札され、存命女性アーティストの最高額を更新している

デュマスは、数十年にわたり市場と批評の双方で高い評価を受けてきた。芸術祭にも積極的に参加し、ドクメンタには2度選出されている。1995年のヴェネチア・ビエンナーレでは拠点とするオランダの代表作家を務めたほか、メイン会場での展示を含め、これまでに4度にわたって同芸術祭に出展している。さらに2008年には、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で大規模な回顧展が開催され、国際的な評価を決定づけている。

デュマスに作品制作を依頼したルーブル美術館館長のローランス・デカールは、コレクション作品の多様化を目指してきた。ところが、10月中旬に同館で発生した宝飾品の窃盗事件、そして浮き彫りになった警備システムの欠陥により、美術館の予算の優先順位が厳しく問われることとなった。デュマス作品の収蔵が発表されたのは、こうした状況下の11月6日だった。

フランスの会計検査院が同じく6日に発表した報告書では、「警備システムの近代化が繰り返し延期されてきた」ことが指摘され、監視カメラは主に「展示室の改修時のみ」設置されてきたと記されている。また、ルーブルが年間3億2300万ユーロ(約574億円)もの運営予算があるにもかかわらずセキュリティ強化を優先しなかったことを批判し、「システムの改善に割り当てられた金額は、推定される必要額を大きく下回っている」と結論づけた。ルーブル美術館とエマニュエル・マクロン大統領が今年初めに発表した同館の大規模改修計画では、費用は7〜8億ユーロ(約1245〜1423億円)と見積もられていた。

フランス文化大臣のラシダ・ダティはその後、監査報告書に沿って予算の一部をルーブルの警備システム整備にあてると発表している。(翻訳:編集部)

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