ジェニー・サヴィルの躍進続く──ロンドン、ウィーンに続き、来年ヴェネチアでも大規模個展を開催

イギリス人画家ジェニー・サヴィルの大規模個展が、2026年3月から11月まで、ヴェネチアのカ・ペーザロ国際近代美術館で開催される。ヴェネチア・ビエンナーレと同時期に開催される本展は、約三十点の絵画を通じて、彼女の画業を振り返る内容となる。

ジェニー・サヴィル。Photo: Tyler Mitchell. Courtesy Gagosian
ジェニー・サヴィル。Photo: Tyler Mitchell. Courtesy Gagosian

ジェニー・サヴィルの大規模個展が、ヴェネチアのカ・ペーザロ国際近代美術館で開催されることが発表された。イギリス人画家のサヴィルによる同館初の個展は、第61回ヴェネチア・ビエンナーレと同時期に開催され、彼女が所属するガゴシアンが展覧会の企画に参画している。

カ・ペーザロ国際近代美術館は、ヴェネチアのカナル・グランデに面したバロック様式の大理石宮殿を転用したものだ。

サヴィルの作品に対する需要はこの10年間で堅調に推移しており、オークションでの落札価格にも顕著だ。2018年には、自画像《Propped》(1992)がロンドンのサザビーズで950万ポンド(現在の為替で約19億3000万円)で落札され、当時の存命女性アーティストのオークション記録を更新した。このほかにも、2016年に《Shift》(1996–1997)が950万ドル(同約14億6800万円)、今年は《Juncture》(1994)が734万ドル(同約11億3450万円)で落札されるなど、高額取引が続いている。

また、美術機関からの評価も高く、サヴィルはこの1年間でロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーやウィーンのアルベルティーナ美術館、そしてフォートワース現代美術館で大規模な展覧会を開催してきた。ヴェネチアでの展覧会開催を伝える声明で、サヴィルはこう語っている。

「芸術が日常生活に組み込まれているヴェネチアで、ビエンナーレに参加するアーティストたちは街の文化施設に展示されている傑作と対話する機会に恵まれます。そんな街で個展を開催できることを大変光栄に思います」

エリザベッタ・バリソーニがキュレーションを担当するサヴィルの個展は、2026年3月28日から11月22日まで開催される。およそ30点の絵画で構成され、1990年代の初期作から近作までを通してサヴィルの歩みを振り返るものだ。美術館は本展について「サヴィルの作品がどのように発展してきたかを示すことを目指します」と説明しており、作品の背景にある絵画史とのつながりについても言及している。

「サヴィルが手がける作品は、絵画の歴史に深く根ざしています。この展示において、彼女の記念碑的なペインティングはヴェネチアに存在する偉大な芸術家たちと響きあい、現代絵画とヴェネチアの芸術遺産がユニークな邂逅を果たすでしょう。サヴィルが過去の巨匠たち──とりわけイタリアの画家たち──と向き合う際の拠りどころとなっているのは、彼女が今も保ち続けているヴェネツィア派絵画との強い精神的・美学的な結びつきなのです」

また、キュレーターのバリソーニは「この展覧会は、ジェニー・サヴィルが愛し、何度も訪れ、長年研究してきたヴェネチアのオールドマスターたちの作品が数多く点在する都市、ヴェネチアへの回帰を示すものでもあります」と語る。

展示の後半では、サヴィルが「水の都ヴェネチアへの敬意を表して」制作した作品が初めて展示されるという。今年初めにサヴィルは、アート・ニュースペーパーのインタビューで次のように語っている

「現代アート作家にとって、オールドマスターの作品は新しい存在ではないかと思います。ナショナル・ギャラリーに設けられているティツィアーノの展示室に行くだけでいいんです。本当に素晴らしい作品ばかりなので。彼の作品はいつ見ても生き生きとしているし、鑑賞者の数だけ解釈が存在します。たとえ大昔に作られた作品であっても(今日を生きる)私たちに通じる要素があり、オールドマスターは、アーティストとして制作を続けるうえで、常に関わり続ける存在でもあるのです」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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