100キロ超えの18金製トイレに19億円! マウリツィオ・カテラン代表作を購入したのは誰?
ニューヨーク・メッツのオーナー、スティーブ・コーエンから委託されたマウリツィオ・カテランの18金製トイレがサザビーズのオークションに出品され、1210万ドル(約19億円、手数料込み)で落札された。本作を購入したのは、アメリカでは誰もが知るあの企業だ。
過去10年でも屈指の物議を醸したアートワークが記録的落札となるか──そんな期待は、火曜日夜に行われたサザビーズのセールで水に流れることとなった。ニューヨーク・メッツのオーナー、スティーブ・コーエンが所蔵していたマウリツィオ・カテランの18金製トイレは、わずか1件の入札の末、手数料込みで1210万ドル(約19億円)で落札された。
サザビーズの「The Now & Contemporary」セール第9ロットとして出品されたカテランの《America》(2016)は、完全に機能するトイレであり、ハンマープライスは1000万ドル(約15億7000万円)だった。重量は100キログラム超、金含有量は約2440オンス(前日夜時点で998万ドル=約15億7000万円相当)。今回のオークションでは、素材としての金の価値にほぼ等しい価格が開始価格に設定されていた。オークションは最初の入札者がそのまま落札し、手数料により最終価格が金の価値をわずかに上回った。
落札したのは、珍妙なオブジェクトやオカルト的現象などを集めた「奇妙なものの博物館チェーン(オッドティーズ・ミュージアム)」として世界的に知られるアメリカのリプリーズ・ビリーブ・イット・オア・ノット!(Ripley’s Believe It or Not!)。リプリーズはインスタグラムで自身が落札者であることを明かし、《America》が同館のコレクションに加わる「最も高価なオブジェ」であると説明した。
《America》には長く、そしてあり得ないほど奇妙な歴史がある。エディション3点にアーティストプルーフ2点を加えた計5点のうち、実際に制作されたのは2点のみ。本作は2016年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の使用可能なトイレ空間で公開され、10万人以上が列を成した。もう1つの作品は2019年にブレナム宮殿に展示された際、盗難に遭い、現在も行方不明のままだ。つまり、今回落札された作品が現存する唯一のバージョンということになる。
リプリーズは投稿でこの点を強調し、今後このトイレを一般公開する予定だと述べた。さらに、来館者がこの「完全に機能する彫刻」に座れるようにするかどうか、検討していくとも付け加えている。
委託者であるスティーブ・コーエンは、2017年にマリアン・グッドマン・ギャラリーから本作を入手している。サザビーズはセール前に、本作にはイレボカブル・ビッド(事前約定入札)やギャランティは付いておらず、落札者による暗号資産での支払いも受け付けると発表していた。
オークションに先立ち、この彫刻はサザビーズの新本社ブロイヤー・ビル内のトイレに設置され、来場者は一人ずつ鑑賞することができた。ただし、過去のインスタレーションとは異なり、トイレとしての使用は禁止された。
サザビーズのコンテンポラリー部門責任者、デヴィッド・ガルペリンは、このトイレを「カテランの最も象徴的かつ影響力のある作品の一つ」と評し、「価値、不条理、制度批判という、作家が一貫して探求してきた関心を完璧に体現している」と述べた。
なお、カテランのオークションレコードは、2016年のクリスティーズ・ニューヨークに出品され、1720万ドルで落札された《Him》(2011)から更新されていない。本作は、ひざまずくアドルフ・ヒトラーをかたどった彫刻作品だ。
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