サザビーズがアブダビで「1570億円」規模の展覧会。現地コレクターとの永続的な関係構築目指す
2025年12月3日から5日まで、サザビーズがラグジュアリー分野の大規模オークション「アブダビ・コレクターズ・ウィーク」をアラブ首長国連邦の首都、アブダビで初開催する。同ウィーク中には、グスタフ・クリムト《扇を持つ貴婦人》(1917-18)などの美術作品を集めた展覧会も開催する。

2大オークション会社であるサザビーズとクリスティーズは、ここ数年続く美術品市場の停滞をリカバリーするため、ラグジュアリー市場と湾岸地域へのシフトを進めている。そうした動きの中でサザビーズは今年8月、アブダビで12月3日〜5日にかけて、ラグジュアリー分野の大規模オークション「アブダビ・コレクターズ・ウィーク」を初開催すると発表した。さらに同ウィーク中に、総額10億ドル(約1570億円)相当の美術品と高級品を展示する展覧会を開催すると明らかにした。
展覧会では美術品は非販売とされる一方、ラグジュアリーアイテムはオークションにかけられる。この構図は、2023年以降の美術品市場と高級品市場の勢力図を如実に反映しており、サザビーズが近年、スポーツカー、不動産、宝飾品、時計、ハンドバッグといった高級分野に収益源を求めている実態を示している。同ウィークでは、オークションにかけられるのは1億5000万ドル(約235億円)以上で、さらに1億ドル(約156億円)相当が個人売買される予定だ。
同ウィークのねらいについて、サザビーズのグローバル高級品部門責任者であるジョシュ・プランは次のように話した。
「アブダビでの初のコレクターズ・ウィークに向けて、私たちはラグジュアリー分野で前例のない出品物を集め、世界有数のブランドと協力してきました。この時期のアブダビはイベントが集中しており、またとないタイミングです。私たちの目的は、オークションで世界クラスの宝物を提示するだけでなく、講演やマスタークラス、美術館級の展覧会を通じて、この地域のコレクターと永続的な関係を築くことです」
会場となるのは、ザ・セントレジス・サーディヤット島リゾート。期間中はスポーツカーから宝石、アートまで多彩なオークションが目白押しだ。目玉のひとつは、12月5日の「RM Sotheby’s」に出品されるマクラーレンF1カー「2026年 マクラーレンF1チーム MCL40A」。予想落札価格は1000万〜1200万ドル(約15億7000万〜18億8600万円)とされる。
同日開催の「Le Voyageur: Jane Birkin’s Handbag」には、ジェーン・バーキンがサインを加えて愛用したエルメスのバーキンが出品され、24万〜44万ドル(約3800万〜7000万円)が見込まれている。今年7月、エルメス初代バーキンがサザビーズ・パリで手数料込み860万ユーロ(約14億円)で落札されたこともあり、今回も高額落札が期待される。
さらに「Precision & Brilliance: Prestigious Jewels & Watches from an Important Private Collection」では、31.86カラットのファンシー・ビビッド・オレンジピンク・ダイヤモンド「The Desert Rose」が予想落札価格500万〜700万ドル(約7億9000万〜11億円)で出品される。ほかにも同ウィークの関連として、フランス・リビエラの邸宅が3500万ユーロ(約63億3000万円)、ザハ・ハディッド設計のオーストリア・グラーツのアパートが1900万ユーロ(34億3800万円)など、高額物件の出品も明らかになっている。
サザビーズによれば、個別に売買される高級品には、世界最大の無傷のダイヤモンドや、世界最大の深緑色ダイヤモンドが含まれるという。また、ハリー・ウィンストンの重要なルビー・ジュエリーセットをはじめ、ロレックスやパテック・フィリップの時計も出品される。
アブダビ投資局(ADIO)と共同で、サーディヤット島のセント・レジス・ホテルで開催される展覧会には、こうした高級品に加え、過去にサザビーズで落札された象徴的な作品群が集結する。たとえば、2023年にサザビーズ・ロンドンで7400万ポンド(約136億円)を記録したグスタフ・クリムト《Dame mit Facher(扇を持つ貴婦人)》(1917–18)や、初代バーキン、古代美術として史上最高額の5700万ドル(約89億3000万円)で落札されたメソポタミアの石灰岩彫刻「グエノール・ライオンネス」などだ。
サザビーズの理事でUAEとの連携拡大を主導するジャン=リュック・ベレビは、声明で次のように述べた。
「アブダビは、先見的な野心、無限の機会、文化的活力が強力に融合した都市です。ここでの存在感を高めることで、著名なパートナーや機関との関係を深め、芸術と高級品に対する世界的需要を再定義しつつある地域に有意義な貢献ができるでしょう」
サザビーズは今年2月、サウジアラビアで初のイブニングセールを開催した。これは、オーナーで億万長者のパトリック・ドラヒによる、サザビーズを高級小売の巨人へと変革する計画の第一段階とされる。中東市場に狙いを定めた戦略は理にかなっている。ドバイのチャルフブ・グループの報告書によれば、同地域の高級品市場は昨年6パーセント増の130億ドル(約2兆437億円)に達した。さらにボストン・コンサルティング・グループとアルタガンマの共同調査では、UAEとサウジアラビアが牽引役となり、2030年までに中東の高級品市場は350億〜400億ドル(約5兆5000億〜6兆3000億円)に倍増すると予測されている。(翻訳:編集部)
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