シンガポールの美術館・ギャラリー20選──欧米とアジアのアートシーンがハイブリッドに交差【MAP付き】

金融や物流のグローバル・ハブとされるシンガポールは、欧米とアジアのアートシーンをつなぐハブとしても機能している。近年は単に欧米への窓口となるだけでなく、東南アジア諸国の交流も加速させ、実験的なアーティスト・ラン・スペースも増加。20の美術館やギャラリーを辿りながら、グローバルとローカルが入り混じるシンガポール独自のアートシーンを知ろう。

Photo: Hu Chen/Unsplash

金融や物流のグローバル・ハブとして独自の存在感を放つシンガポールは、アートにおいても世界をつなぐハブとして機能してきた。欧米や日本、中国からシンガポールへ進出するギャラリーも少なくなく、近年はArt SGのようなアートフェアも盛り上がりを見せており、インドネシアやタイなど東南アジア諸国へ活動を展開するギャラリーも勢いを増している。

シンガポールのアートシーンは欧米とアジアの交差点であると同時に、アジア圏内部の交流を加速させる場でもあるだろう。さらに注目すべきは、国際的なギャラリーが活躍する一方で、実験的な試みに取り組む小規模なアーティスト・ラン・スペースも増えていることだ。グローバルとローカルが入り混じるこの街で、いま何が起きているのか──ARTnews Japan編集部が選定した20の美術館、ギャラリー、アートブックストアを紹介しよう。

1. National Gallery Singapore

シンガポールのアートシーンにおけるランドマークとして君臨するのが、2015年に開館したNational Gallery Singaporeだ。旧最高裁判所と市庁舎を改装してつなぐことで生まれたこの美術館は、建築そのものがシンガポールという国の歴史を象徴する場でもある。8,000点を超える所蔵品は、19世紀から現代に至るシンガポールおよび東南アジアの美術史を網羅しており、国内トップクラスの規模と質を誇っている。大規模な企画展ではアジア圏のベテランアーティストへ光を当てることでその価値を再評価するほか、館内各所では若手アーティストによるインスタレーションも多く展開。

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2. Singapore Art Museum (SAM)

1996年に設立されたSingapore Art Museum(SAM)は、東南アジアの現代美術にフォーカスしたシンガポール屈指の現代美術館だ。SAMのプログラムは、従来の美術館の枠組みにとどまらずアーティスト・イン・レジデンスや地域コミュニティとの協働、さらには「The Everyday Museum」というコンセプトのもと、公共空間でのアートプロジェクトも積極的に展開。特に、2年に一度開催されるシンガポール・ビエンナーレは、東南アジアの現代美術の最新動向を発信するプラットフォームとして国際的に高い評価を得ている。

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3. ArtScience Museum

世界で最も有名なリゾートホテルのひとつ、マリーナベイ・サンズの麓に位置し、蓮の花を模した独創的な建物内につくられたArtScience Museumは、その名の通り、アートやサイエンス、テクノロジーを横断する展示で知られている。2011年の開館以来、チームラボの常設展「Future World: Where Art Meets Science」をはじめ、デジタル技術を駆使した没入型の体験を数多く提供。アートラバーだけでなく幅広い層の観客を集めており、現代美術を中心としたシーンとは異なる形で人々がアートに触れるきっかけを生み出している。

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4. STPI

かつての倉庫街を再開発した閑静なエリアに位置するSTPIは、プリント作品や印刷技術に特化したユニークな施設だ。2002年の設立以来、国際的に著名なアーティストを招聘し、専門的な技術をもつスタッフとの協働を通じて版画や紙を媒体とした新しい表現の可能性を探求してきた。併設されたギャラリーでは、レジデンスで制作された作品が展示され、その実験の成果を間近に見ることができる。フリーズやArt SGといった国際的なアートフェアにも積極的に参加しており、国際的な注目度も高まっている。

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5. Gajah Gallery

1996年に設立されたGajah Galleryは、東南アジアの現代美術をグローバルと接続するうえで先駆的な役割を果たしてきた。特にインドネシアのアーティストたちを早くから支援し、その評価を確立したことで知られている。SAMと同じ建物内につくられた広大なスペースでは、絵画や彫刻からインスタレーションやパフォーマンスまで、多様な作品を展示。Art BaselやArt SGへの定期的な出展を通じて、東南アジアのアーティストとグローバルなコレクターやキュレーターとを結びつける、重要な架け橋となっている。

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6. Ames Yavuz

かつてイギリス軍の旧兵舎やシンガポール軍の徴兵訓練場として使われてきた建築群が、いまではギルマン・バラックスと呼ばれるアートギャラリーの集積地へ。さまざまなギャラリーが軒を連ねるなか、シドニーにも拠点をもつAmes Yavuzは、アジア太平洋地域の現代美術を発信し独自のポジションを築いている。設立以来、人種、ジェンダー、アイデンティティといった現代社会が直面する複雑なテーマに切り込む、批評性の高いアーティストを積極的に紹介してきた。現在はロンドンにも拠点をもち、グローバルなネットワークを通じて所属アーティストに国際的な活躍の場を提供している。

なお、本記事ではシンガポールをはじめ東南アジア圏を主たる拠点とするギャラリーを中心にピックアップしているが、ギルマン・バラックスにはMIZUMA ART GALLERYやOta Fine Artsなど日本発のギャラリーも集まっている。シンガポールのアートシーンを考えるうえで絶対に無視できない場所だと言えるだろう。

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7. Yeo Workshop

同じくギルマン・バラックスに位置するYeo Workshopは、フリーズやArt Baselなど海外アートフェアへ積極的に参加しながら東南アジア圏のアーティストを紹介。ファウンダーのオードリー・ヨーはS.E.A Focusと題したアートフェアの立ち上げや東南アジアのデジタルアーティストを対象としたJulius Baer Next Generation Art Prizeの創設にも貢献しており、ローカルなアートエコシステムの構築に尽力してきたことでも知られている。

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8. FOST Gallery

2006年に設立したFOST Galleryは、シンガポールを拠点とする現代アーティストの発掘と育成に注力しているギャラリーだ。ギルマン・バラックスのスペースでは絵画、ドローイング、彫刻など、多様なメディアの作品が紹介されており、国内外のアートフェアにも積極的に参加し、所属アーティストのキャリア形成を長期的な視点でサポート。美術史家やアーティストによる書籍の出版も手掛けるなど、シンガポールにおけるアートシーンの成熟へ貢献している。

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9. Sullivan+Strumpf

オーストラリアで開業したSullivan+Strumpfは2019年にシンガポールへ進出し、アジア圏内のネットワークを強化してきた。2025年には人気の歴史地区ティオン・バルへ移転し大幅にスペースを拡張、展覧会はもちろんのこと、若手アーティストの育成やアートシーン内の交流にも積極的に取り組んでいる。東南アジア圏とオーストラリアのアーティストによる作品を多く展示しており、アジア太平洋地域全体のアートシーンの活性化に貢献している。

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10. Richard Koh Fine Art

2005年に設立したRichard Koh Fine Artは、バンコクにも拠点をもつ、東南アジアの現代美術シーンを牽引するギャラリーのひとつ。アーティストのキャリア形成に注力しており、Art SGなどアートフェアへの参加やArtsyのようなオンラインプラットフォームへの進出を通じて、東南アジアのアーティストが国際舞台で活躍する機会を整備している。

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11. Cuturi Gallery

2020年にオープンしたCuturi Galleryは、急速な成長を遂げた新興ギャラリーのひとつ。新進気鋭の若手アーティストの発掘と支援に情熱を注いでおり、「c/residency」と題したレジデンシープログラムも展開するほか、食とアートを融合させる企画も行うなど、多様な活動に取り組んでいる。現地アートシーンの成長を牽引するギャラリーのひとつだと言えるだろう。

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12. Comma Space

ギャラリーの集積地からは少し離れた静かな工業地帯に位置するComma Spaceは、ふたりの中華系アーティストが立ち上げたアーティスト・ラン・スペースだ。 ファウンダーのひとりであるSaiはサウンド・アートやインスタレーションを中心とした作品を制作しており、シンガポール美術館や釜山現代美術館に作品が収蔵。そんなバックグラウンドもあってか、展覧会ではパフォーマンスも多く披露されている。

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13. JW PROJECTS

2022年に設立されたJW PROJECTSは、アーティストによる作品展示だけでなくアートアドバイザリー・サービスも提供する一風変わったアートプラットフォーム。メディアを問わずさまざまな種類の作品を扱っており、シンガポールで活動する新進気鋭アーティストの支援に注力している。

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14. Haridas Contemporary

STPIやGajah Gallery、Richard Koh Fine Artで経験を積んできたクリスチャン・ハリダスが立ち上げたHaridas Contemporaryは、新進・中堅のシンガポール出身及びシンガポール拠点のアーティストへのコミットメントを掲げている。シンガポール・ビエンナーレなどに出展するアーティスト、メリッサ・タンもアドバイザーとして参画しており、作品の販売だけではなくアーティストのキャリア形成を支援しており、シンガポールのアーティストが活躍する場を拡張する存在だ。

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15. starch

アーティストのモーゼス・タンが立ち上げたstarchは、工業団地内に位置しており、実験的なプログラムを数多く展開している。若手アーティストによる挑戦的な展示が行われることも多く、アーティストが自由に新しいアイデアへトライできる環境が整備されている。アーティスト・イン・レジデンスも実施しており、アートマーケットから距離をとったオルタナティブなアートシーンを醸成する場だと言えるだろう。

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16. I_S_L_A_N_D_S

ショッピングセンターの地下に位置するI_S_L_A_N_D_Sは、シンガポールのアートシーンにおける隠れ家のような存在だ。ショーウィンドウを拡張したような小さなスペースは、アーティストが自らの実践を問い、新しいコンセプトを試すための実験的なプラットフォームとして機能している。さまざまなギャラリーが活動を展開するシンガポールのアートシーンのなかでも、独自のポジションを築き上げていると言えるだろう。

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17. Objectifs

2003年に設立されたObjectifsは、写真と映像に特化した非営利スペース。歴史的な礼拝堂を改装したスペースを構えており、国内外の写真家・映像作家の作品を展示している。展覧会や上映会はもちろんのこと、ワークショップやセミナー、レジデンシープログラムも多く展開しており、市民が気軽に参加できるようなイベントも多い。アジアの写真文化をつなぐ役割を果たしている存在だろう。

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18. DECK

DECKは、写真と映像に特化した非営利のアートセンター。2013年の設立以来、展示やワークショップ、アーティスト・トーク、レジデンシープログラムなどを通じて、シンガポールおよび東南アジアの写真文化を育んできた。コンテナを利用した建築で親しまれていたが2021年に休館し、2025年夏から「Shop-House by DECK」と題した新たなスペースをオープン。現在は精力的に活動を展開している。

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19. SHRUB

かつて鍵屋だった店舗を改装して作られたSHRUBは、インディペンデントなアーティストやデザイナーの作品を紹介するアートブックストアである。店内には、ZINEやプリント作品、Tシャツなど、若手クリエイターによる作品が所狭しと並んでいる。DIY精神に溢れた空間は地域コミュニティとのつながりも強く、シンガポールのアンダーグラウンドなクリエイティブシーンのエネルギーが集まる場所となっている。

20. Temporary Unit

Temporary Unitは、グラフィックデザインに焦点を当てたアートブックストアだ。小規模な出版社であるTemporary Pressによって運営されており、デザインのプロセスや思考に関する書籍やZINEなどを扱っている。グラフィックデザインにまつわる展示企画を行うこともあり、シンガポールのデザインコミュニティとも接続している。店舗を訪れるには事前の予約が必要となるため要注意。

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