ダリやモンドリアンの名作も! 2026年、アメリカでパブリックドメインとなった重要作6選
アメリカの著作権法に基づき、1930年に公表された複数の名作が新たにパブリックドメイン(著作権消滅状態)となった。ここでは、デューク大学のパブリックドメイン・リストをもとに、サルバドール・ダリやピエト・モンドリアン、パウル・クレーらの作品を含む、モダンアートとシュルレアリスムの重要作6点を紹介する。

年を追うごとに、新たな作品が著作権による保護を失い、パブリックドメイン(著作権消滅状態)へと移行している。これにより、そうした作品は管理を担う遺族や財団などから明示的な許可を得ることなく、自由に利用できるようになるが、これらの作品の利用方法には重要な例外も存在する。だがアメリカでは、著作権は更新されない限り95年で消滅するという著作権法があり、これに基づけば(あくまで理論上は)1930年に制作されたすべての作品が、保護の枠を外れたことになる。
しかし、デューク大学のパブリックドメイン研究センターが設けた「パブリックドメイン・デー」に際して毎年指摘しているように、アメリカにおける著作権はきわめて扱いが難しい制度だ。というのも、保護の有無は、作品が制作された時期だけでなく、公に公開された時期、さらに遺族や管理団体が当該作品の権利を更新しているかどうかにも左右されるからだ。なお、今年のデューク大学のリストは作品そのものに適用されるものであり、しばしば作家の遺族や財団と連携する組織が権利を管理している高精細画像などの利用には当てはまらない点にも留意したい。
※ 編注:日本においては、著作者の死亡した年の翌年1月1日から70年を経た作品がパブリックドメインとなる。また、日本との平和条約に署名した連合国・連合国民が第二次世界大戦前または対戦中に取得した著作権については、通常の著作権の保護期間に戦争の期間分(1941年12月8日、または著作権を取得した日のいずれか遅い日から平和条約発効時までの日数)を加算して保護する「戦時加算」の義務があるので、注意が必要。
こうした注意点がある中ではあるが、サルバドール・ダリやホセ・クレメンテ・オロスコをはじめとする著名アーティストの美術作品を含め、今年も複数の分野にまたがる重要作のいくつかが正式にパブリックドメイン入りを果たした。
ウィリアム・フォークナーの革新的な1930年の小説『死の床に横たわりて(As I Lay Dying)』(『響きと怒り(The Sound and the Fury)』に次ぐ代表作)は、ジークムント・フロイトの1929年の哲学的論考『文明とその不満(Civilization and Its Discontents)』、そして1930年のマルクス兄弟の名作映画『Animal Crackers』とともに、今年パブリックドメインとなった。さらに、ベティ・ブープや、後にプルートと改名されることになるディズニーの犬キャラクター、ローバーなど、複数のアニメキャラクターもこのリストに名を連ねている。
以下では、デューク大学のリストに基づき、アメリカにおいて今年パブリックドメインに加わった6つの美術作品を紹介する。
ピエト・モンドリアン(Piet Mondrian)《Composition with Red, Blue and Yellow》(1930)

太い黒線によって区切られた不連続な色面で構成されるこの作品は、モンドリアンがモダンアートに残した決定的な足跡を示す一例だ。オランダ出身の画家である彼は、鑑賞者を超越的な境地へと導く「純粋造形芸術(pure plastic art)」の実現を目指していた。本作はスイスのチューリッヒ美術館(Kunsthaus Zürich)に所蔵されているが、極めて近似した第2ヴァージョンは2022年にサザビーズで5100万ドル(最新の為替レートで約80億円)で落札されており、その画像が上に掲載されている。
ルイス・ブニュエル(Luis Buñuel)&サルバドール・ダリ(Salvador Dalí)『黄金時代(L’Âge d’Or)』(1930)

シュルレアリスムを代表する作品のひとつである『黄金時代(L’Âge d’Or)』は、初期のトーキー映画のひとつであること、そして官能性を帯びたイメージが当時大きな論争を巻き起こしたことの両面から、映画史における金字塔とみなされている。すでにパブリックドメインとなっているブニュエル&ダリの先行コラボレーション『アンダルシアの犬(Un Chien Andalou)』(1929)と同様、『黄金時代』も一貫した物語構造を欠き、代わりに観る者を魅了するイメージの連鎖によって記憶される作品だ。なかでも有名なのが、女性が彫像の足の指をフェラチオするシークエンス。
ホセ・クレメンテ・オロスコ(José Clemente Orozco)《Prometheus》(1930)

メキシコを代表する壁画家としてすでに高い評価を確立していたオロスコが、アメリカで初めて手がけたフレスコ画がこの《Prometheus》だ。カリフォルニア州クレアモントのポモナ・カレッジ(Pomona College)のダイニングホールに設置されており、ゼウスの意に反して人類に火を与えた古代ギリシャ神話の神プロメテウスを描いている。鑑賞者の一部を不快にさせることを恐れ、オロスコはこの裸体像を性器のない姿で描いた。
ソフィー・トイバー=アルプ(Sophie Taeuber-Arp)《Composition》(1930)

巡回回顧展によって再評価が進むまで、ソフィー・トイバー=アルプは長らく過小評価されてきたモダニストのひとりだった。現在では、絵画からテキスタイル、衣服に至るまで、抽象表現の実験を複数のメディウムに横断させた手法で高い支持を集めている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵の《Composition》は、油彩に金属片を混ぜ、画面をきらめかせることで、彼女が伝統を超えた表現に果敢に踏み出していたことを示している。
エドワード・スタイケン(Edward Steichen)の写真作品

『VOGUE』のために撮影した写真によって、後続のファッション・フォトグラファーたちに道を切り開いたスタイケン。1923年には同誌および『VANITY FAIR』のチーフ・フォトグラファーに就任し、その後、人工照明や演出的なアートディレクションを積極的に取り入れ、新しい写真“表現”のパラダイムを打ち立てた。1930年に『VOGUE』のために撮影された一部の写真は、今年パブリックドメイン入りしている。
パウル・クレー(Paul Klee)《Tier Freund Schaft》(1930)

クレーの絵画の多くには、私たちの世界の外側を示唆するかのような謎めいた記号が散りばめられている。《Tier Freund Schaft(Animal Friendship)》はマドリードのソフィア王妃芸術センターに所蔵されており、くちばしのような口をもつ生物とバイソンを思わせる動物が、筆触の残る背景のなかで交流する姿が描かれている。
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