『建築について』の記述と「完全に一致」──ダ・ヴィンチに影響を与えた古代建築家の作品を特定
長らく所在地不明とされてきた古代ローマの建築家ウィトルウィウスが手がけたバシリカ(古代ローマの公共建築)が、イタリアで発見された。専門家によれば、唯一現存する建築理論書『建築について(De architectura)』の記述と遺構が「完全に一致」したという。
イタリア当局は1月19日、約2000年前に建設されたバシリカ(*1)が、古代ローマの建築家ウィトルウィウスの設計によるものと考えられると発表した。ロイターが報じた。
*1 バシリカとは、古代ローマにおいて、裁判や商取引、行政集会などに用いられた公共建築。後世にキリスト教会堂建築の原型となった。
この古代バシリカは、紀元前19年に完成した。古代ローマ時代に公共建築として用いられていたとみられ、現在のイタリア・ファーノにあたるファヌム・フォルトゥナエ(Fanum Fortunae=古代ローマ時代、女神フォルトゥーナの神殿を中心に発展した都市)に建設された。ウィトルウィウスが著した現存する古代唯一の建築書『建築について(De architectura)』にも言及されており、ウィトルウィウスによる建築として確認されている唯一の建造物だ。ウィトルウィウスはのちに、人体に理想的比例を当てはめたウィトルウィウス的人体図で知られるレオナルド・ダ・ヴィンチによって、不朽の存在となった。
その名声にもかかわらず、バシリカの正確な所在地は時の流れのなかで失われていた。ペーザロ=ウルビーノ県の考古学および美術監督官を務めるアンドレア・ペッシーナは、今回の発見について、ウィトルウィウスによる記述と「完全に一致する」と説明している。長方形の建物の短辺にあたる4本の柱を発掘した際、ペッシーナらはその記述をもとに、長辺側右上に位置するはずの柱の場所を割り出し、すぐにそれを発見したという。ペッシーナは、「考古学において確実なことは多くないが、今回の精度には驚かされた」と語っている。
イタリア文化相のアレッサンドロ・ジュリは、今回の成果を伝える記者会見にオンラインで参加し、「これはセンセーショナルな発見だ。孫の世代まで語り継がれるだろう」と称えた。また、20世紀初頭に発見された古代エジプト王の墓になぞらえ、「21世紀のツタンカーメンだ」とも表現し、歴史は今後、「ウィトルウィウスのバシリカ発見以前と以後に分けられることになる」と語った。
ファーノ市長、ルカ・セルフィリッピは会見で、「このバシリカは500年以上にわたって科学者や研究者が探し続けてきた。これは世紀の発見だと感じている」と喜んだ。
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