全米人文科学基金が、アメリカ例外主義に沿った文化・教育機関を中心に総額118億円の助成金を支給

全米人文科学基金が84のプロジェクトに総額約118億円の助成金を交付した。トランプ政権による評議会メンバー解任後初の交付で、「アメリカ例外主義」を重視した保守系の大学や文化機関が主な対象となった。

全米芸術基金の外観。Photo: Kevin Carter/Getty Images
全米芸術基金の外観。Photo: Kevin Carter/Getty Images

全米人文科学基金(NEH)はこのほど、84のプロジェクトに対し、総額7510万ドル(約118億円)の助成金を支給した。NEHによる前回の助成金交付は2025年9月だったが、その翌月、ドナルド・トランプ大統領は、助成金や政策、資金配分の決定についてNEH議長に助言する機関であるNEH評議会の大半を解任している。

助成対象となったプロジェクトの分野は幅広いものの、採択された内容はいずれも、トランプ政権が重視する「アメリカ例外主義」の理念に沿ったものだった。100万ドル(約1億6000万円)を超える助成金は主に大学に配分され、公民学やギリシャ古典哲学に焦点を当てた取り組みに充てられる。助成金の最高額は1000万ドル(約16億円)で、テキサス大学オースティン校と高等教育卓越性推進財団(Foundation for Excellence in Higher Education、FEHE)が受給した。

現在、元共和党弁護士が理事長を務めるテキサス大学オースティン校は、トランプ政権が掲げる高等教育カリキュラムの保守的改革路線に積極的に対応してきた。今回の助成金を活用し、同校は16人の教員を新たに採用し、「戦略と統治」と「グレート・ブックス(*1)」という二つの専攻を設立すると発表している。

*1 文学・哲学・政治学などの西洋文化の基盤を形成した古典書籍を指す

ニュージャージー州プリンストンの保守系シンクタンクに置くFEHEは、研究大学向けの人文科学プログラムを開発し、教員と学生に能力向上支援を提供するために、1000万ドルを受け取る。NEHはまた、ハーバード大学近くの保守派と連携するアビゲイル・アダムズ研究所に対し、「歴史、文学、哲学、公民学をテーマとした」セミナーとフェローシップのために200万ドル以上を支給した。

ニューヨーク州クイーンズにある小規模な美術学校グランド・セントラル・アトリエには、200万ドル(約3億1500万円)の助成金が支給された。同校は「モダニズムの影響を受けていない芸術教育」を掲げ、写真が登場する以前の19世紀までの伝統に根差した技法を教えている。創設者で写実主義画家のジェイコブ・コリンズは、2025年9月にワシントンD.C.で開催された全米保守主義会議などに出席し、モダニズムや前衛芸術を公に批判してきた。コリンズ本人のウェブサイトには「現代における古典絵画復興の主要人物」と記されている。

フィラデルフィアにあるアメリカ独立革命博物館は、文化機関向け助成としては最高額となる220万ドル(約3億5000万円)を受け取った。助成対象となる文化機関は、アメリカの歴史に焦点を当てた展示、または建国250周年を記念する展示を行う必要があり、個別の展示ごとに10万ドル(約1580万円)が支給される仕組みとなっている。

保存修復に対する助成金も一部支給されており、ニューヨーク大学やデラウェア大学、ミネアポリスの中西部美術保存修復センターといった機関にそれぞれ35万ドル(約5500万円)が渡っている。

NEH助成金受給者の一覧はこちら

(翻訳:編集部)

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