ウラン系列年代測定で「世界最古のアート」を特定。後期更新世の芸術文化の存在を裏づけ
インドネシアのスラウェシ島で、約6万7800年前に制作されたとみられる手形の壁画が確認された。これまで最古と考えられてきた、約5万1200年前の豚を描いた洞窟壁画を1万年以上さかのぼるもので、現時点で確認されている中では世界最古級にあたる。
2024年、インドネシア・スラウェシ島南西部で約5万1200年前に描かれた豚の洞窟壁画が発見され、世界最古の絵画とみなされた。その後、同じ研究チームが、これをさらにさかのぼる年代の作品を島の南東部で発見した。いずれの調査も、オーストラリアのグリフィス大学に所属する考古学者たちと、複数のインドネシアの考古学組織、そして国家研究イノベーション庁による共同研究だ。
新たに年代測定された作品は、約6万7800年前に描かれたと考えられる手形の絵だ。ただし、作品の大部分は失われており、学術誌『Nature』に掲載された論文によれば、「指の一部と隣接する手のひら部分を含む、14×10センチメートルの色褪せた顔料」が断片的に残っているという。
研究チームは2019年以降、スラウェシ島南東部の44カ所の遺跡で洞窟壁画を記録してきた。今回の調査に用いられたのが、ウランが自然に崩壊する速度を測定して年代を割り出す「ウラン系列年代測定」という手法だ。これにより、手形7点とその他の絵画4点の制作年代が特定された。論文の共著者で、グリフィス大学の考古学者であるマキシム・オベールは、アート・ニュースペーパーの取材に対してこう語る。
「絵の上に形成された薄い鉱物の層を分析することで、この作品の年代を特定することができました。この層は、壁画が作られた後に重なったものなので、作品が制作された年代を教えてくれるのです」
「後期更新世の芸術文化の繁栄を裏付ける発見」
古代の人々は、岩壁に手を置き、その上から顔料を吹きかけることで手形の絵を制作していた。スラウェシ島で見つかった手形は、指先を尖らせて描かれていることが特徴的で、オベールによれば動物に関連した「象徴的な意味」をもたせるために意図的に変形された可能性があるという。
2024年に発見された豚の壁画は、スラウェシ島の南西にあるマロス・パンケプ地区のカルスト地形で見つかったもので、初期の洞窟芸術として重要な研究対象となってきた。しかし今回の研究により、古い壁画がこの地域に限らず、広範囲に分布していることが明らかになった。
「スラウェシ島南東部で行われた年代調査は、古い岩絵が南西半島のマロス・パンケプ地区だけに集中しているのではなく、17万4000平方キロメートルに及ぶウォレシアの地域に点在していることを示しています。これらの発見は、スラウェシ島が後期更新世に活気に満ちた芸術文化が長期にわたって栄えていたという見解を裏付けるものです」
研究者たちは、この新発見が、人類がボルネオとパプアの間を移動し、オーストラリア、ニューギニア、タスマニアを含む古大陸サフルには早い段階で到達していた可能性を示すものだと考えている。また、人類がオーストラリアとその周辺地域に到達した時期について、従来の約5万年前説ではなく、6万〜6万5000年前とする「長編年説」を裏付ける証拠の一つともなっている。オベールは次のように語った。
「考古学的証拠と遺伝学的証拠を合わせると、現在では長期年代論が強く支持されており、オーストラリアの先住民が東南アジアを移動しながらこうした作品を制作していたことが示されています」
(翻訳:編集部)
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