イギリスが緊縮路線から大転換。「大戦後の文化復興に匹敵する」3200億円の助成を発表

イギリスの文化・メディア・スポーツ大臣、リサ・ナンディが、約3200億円にのぼる包括的資金援助策を発表した。主に地方における文化施設の支援を意図したもので、老朽化した文化インフラの再整備を目指している。ここ数十年、緊縮予算が続いてきたイギリスの芸術分野における大転換だ。

英メディア・スポーツ大臣のリサ・ナンディ。Photo: PA Images via Getty Images

1月21日、イギリス文化・メディア・スポーツ省のリサ・ナンディ大臣が、15億ポンド(約3200億円)もの画期的な芸術分野助成策を発表した。これによってロンドンの美術館や博物館は、活動範囲の全国拡大を求められることになる。大英博物館ナショナル・ポートレート・ギャラリーなど国立の文化施設には6億ポンド(約1280億円)が支給されるが、この資金にはロンドン以外の観客を惹きつける責任が伴うと同大臣が強調しているからだ。声明では次のように明言されている。

「わが国の国立美術館・博物館のほぼ全てがロンドンに拠点を置いています。つまり、国立の施設として国内のあらゆる地域の若者に機会を提供するため、各機関はより一層の努力を払う必要があるということです。国内のあらゆる地域の若者たちに機会を開放しなければなりません」

ナンディは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのアウトリーチ活動を全国的な取り組みのモデルとして称賛し、「扉は出来ています。次はそれをコミュニティ全体に向けて大きく開く必要があるのです」と付け加えた。

この助成策の主な目的は老朽化した文化インフラの修復で、芸術分野では一世代に一度とも言える大転換だとされている。また、既に発表されている2億7000万ポンド(約580億円)の投資に続き、2010年に予算が30%削減されたイングランド芸術評議会(ACE)への資金援助を大幅に回復させるものでもある。

今回発表された助成パッケージには、全国の芸術施設における約300の資本プロジェクトを支援する4億2500万ポンド(約910億円)の創造的基盤基金が含まれ、地方・地域の博物館へは1億6000万ポンド(約340億円)、文化遺産部門に2億3000万ポンド(約490億円)、公共図書館に2750万ポンド(約59億円)が割り当てられる。さらに、ACEによる助成プログラムの対象団体には、現在行われている審議で8000万ポンド(約170億円)が追加される見込みだ。

ACEの最高経営責任者ダレン・ヘンリーは声明の中で、この支援策を「将来の世代に創造的な機会を保証する」投資だと歓迎している。その一方で、労働組合からは批判の声も上がっており、エンジニア・専門職労組プロスペクトのマイク・クランシー事務局長は、文化を活気づける人材より建物に重点を置きすぎていると主張。「この業界は、賃金と人材確保の点で継続的かつ解決困難な危機に直面している。まず対処すべきはこの問題だ」と批判した。

ナンディはまた、マーガレット・ホッジ(労働党のブラウン政権で文化・メディア・スポーツ大臣を経験)が最近提出したACEの調査報告書における提案を支持する意向を示している。この報告書では、意思決定に政治的介入があると認識されているACEへの「尊敬と信頼の喪失」が指摘されていた。ナンディは報告書中の提案を「長年にわたって資金が不足し、過小評価され、十分に活用されていなかった分野に対する歓迎すべき刷新策」だと称賛。また、今回の資金援助策は、第2次世界大戦後の文化復興に匹敵する歴史的なものだと自信を見せた。(翻訳:石井佳子)

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