グッゲンハイム美術館が新収蔵作品39点を発表。西村有やアンベラ・ウェルマンら新進・中堅作家に光

ニューヨークのグッゲンハイム美術館は、歴史的作家から国際的評価を高めつつある新進・中堅アーティストまで、2025年に新たに収蔵した39点の作品を発表した。中でも注目すべき5作品を紹介する。

Freddy Rodríguez, Guaroa, 1973. ©Estate of Freddy Rodríguez/Guggenheim Museum
フレディ・ロドリゲス(Freddy Rodríguez)《Guaroa》(1973)©Estate of Freddy Rodríguez/Guggenheim Museum

ニューヨークのグッゲンハイム美術館は、昨年新たに収蔵した39点の作品を発表した。その中には、現在最も高い評価を受ける現代アーティストによる絵画も含まれている。また、歴史的に重要な位置づけをもつ複数の作品もコレクションに加えられた。ドミニカ共和国出身のフレディ・ロドリゲス(Freddy Rodríguez/1945-2022)、コロンビア出身のファニー・サニン(Fanny Sanín/1938-)による作品がその例だ。両者はいずれも2024年のヴェネチア・ビエンナーレに参加しており、アメリカへ移住した作家だ。

一方で、今回収蔵された作品の多くは、国際的な注目度が現在進行形で高まりつつある新進気鋭から中堅世代のアーティストによるものだ。レイチェル・ロッシン(Rachel Rossin)の《Scry Glass III》(2023)、エル・ペレス(Elle Pérez)の《Force (from Fire Island)》(2019/21)と《Ascension (from Fire Island)》(2019/21)、クラウディア・アラルコン(Claudia Alarcón)の《The ever-present sun and its radiance (La presencia permanente delsol con su resplandor)》(2024)、そして西村有の《Cityscape》(2024)まで多岐にわたる。日本人作家は西村のほか、大竹伸朗の《Scrapbook #62》( November 2, 2002–July 2, 2003)も収蔵されている。

声明の中で、グッゲンハイム美術館のシニア・キュレーターであるナオミ・ベックウィズは次のように述べている。

「2025年に収蔵された作品群は、グッゲンハイム美術館が自らのルーツを丁寧に振り返りつつ、実験的な表現やトランスナショナルなアプローチへのコミットメントを堅持し、同時にコレクションの物語的可能性を拡張しようとする姿勢を示すものです」

以下、昨年グッゲンハイム美術館に収蔵された作品の中から特に注目したい5作品を紹介する。

ファニー・サニン《Acrylic No. 2》(1974)

ファニー・サニン(Fanny Sanín)《Acrylic No. 2》(1974)Photo: ©Fanny Sanín/ Guggenheim Museum

1960〜70年代、ファニー・サニン(Fanny Sanín)はこの作品に見られるようなハードエッジ抽象に取り組んでいた。矩形のフォルムが列をなして重なり合い、色彩と線の用い方によって、画面が奥行きのある空間へと連続しているかのような錯覚を生み出している。現在80代後半の彼女は、アメリカでは長らく十分な評価を受けてこなかったが、昨年ニューヨークのアメリカズ・ソサエティで回顧展が開催されたことをきっかけに、その状況に変化の兆しが見えつつある。

サルマン・トゥール《The Joke》(2024)

サルマン・トゥール(Salman Toor)《The Joke》(2024)Photo: Farzad Owrang/©Salman Toor/ Courtesy the artist; Luhring Augustine, New York; and Thomas Dane Gallery/ Guggenheim Museum

1983年パキスタン生まれのサルマン・トゥール(Salman Toor)は、美術史上の作品を参照した絵画作品で知られる。本作も、パリの夜の社交場を表情豊かに描いたオーギュスト・ルノワールら印象派の作品へのオマージュが読み取れる。背景に漂う霞んだ雰囲気は、店内の客の酩酊状態をなぞるかのようだ。

アンベラ・ウェルマン《Sacrum》(2025)

アンベラ・ウェルマン(Ambera Wellmann)《Sacrum》(2025)Photo: Sebastian Bach/ Courtesy the artist and Company Gallery, New York/ Guggenheim Museum

アンベラ・ウェルマン(Ambera Wellmann)は1982年カナダ生まれ。昨年、ハウザー&ワースとカンパニー・ギャラリーの2会場にまたがる展覧会で、恍惚状態にある人々を描いた絵画を発表し、ニューヨークで高い評価を得た。本作はその後半に展示されていたもので、魚を見つめる女性像を描いたアンリ・マティスの《Woman before an Aquarium》(1921–23)を想起させる一面もある。

ナンシー・ホルト《Trail Markers》(1969)

ナンシー・ホルト(Nancy Holt)《Trail Markers》(1969)Photo: ©Holt/ Smithson Foundation/ Guggenheim Museum

1969年、ナンシー・ホルト(Nancy Holt/1938-2014)は夫でアーティストのロバート・スミッソンとともに、イングランド南西部を横断する道を歩いた。その際、ルートを示すために設置されたオレンジ色のマーカーに強い関心を抱くようになる。彼女はそれらを撮影し、本作を制作した。ランド・アートに連なる多くの代表作と同様、本作もコンセプチュアル・アートの手法を自然環境に適用している。

ルビー・スカイ・スタイラー《Three Blue Women》(2025)

ルビー・スカイ・スタイラー(Ruby Sky Stiler)《Three Blue Women》(2025)Photo: ©2025 Ruby Sky Stiler/ Courtesy the artist and Alexander Gray Associates, New York/ Guggenheim Museum

ルビー・スカイ・スタイラー(Ruby Sky Stiler)の本作は、無数の小さなドローイングをテトリス状に組み合わせ、3人の裸婦が並んで座る姿を描いた絵画だ。1979年ポートランドに生まれたスタイラーは、自身の作品について「ほとんど幾何学へと崩れ落ちていくような存在で、ひとつ要素を欠けば、ただの形になってしまう」と語っている。この作品は、わずか1カ月前に会期を終えたニューヨークのアレクサンダー・グレイ・アソシエーツでの展覧会でも、印象的な存在感を放っていた。

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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