ICEへの抗議でニューヨークのギャラリーが一斉休廊──アート界は「沈黙しない」

トランプ政権による移民取り締まり強化への抗議として、メガギャラリーのガゴシアンPaceデイヴィッド・ツヴィルナーをはじめニューヨークの多数のギャラリーが30日に一斉休廊を表明した。

アウォル・エリズク《NO ICE》(2025) Photo: ©︎Awol Erizku/Courtesy the artist and Sean Kelly, New York
アウォル・エリズク《NO ICE》(2025) Photo: ©︎Awol Erizku/Courtesy the artist and Sean Kelly, New York

米移民税関執行局(ICE)の取締活動に抗議するデモの一環として、ニューヨークに拠点を置くギャラリーが1月30日(現地時間)に一斉に休廊する。ICEをめぐっては、抗議者を死に至らしめる武力行使や、連邦政府による取締手法が、表現の自由や適正手続など憲法で保障された権利を侵害しているとして国内外から非難の声が上がっている。

休廊を発表しているギャラリーの中には、メガギャラリーのガゴシアンデイヴィッド・ツヴィルナー(いずれもニューヨークとロサンゼルスの拠点)、Pace(アメリカ国内のすべての拠点)も含まれる。また業界大手のデイヴィッド・コルダンスキーリーマン・モーピンアルミン・レッシュも名を連ねているほか、アルテリアー、ハンナ・トラオレ、ヘッセ・フラットウなどの小規模ギャラリーも、トランプ政権の移民取り締まり強化に反対する企業や文化施設と足並みを揃えた。

ICEの取締活動をめぐっては、国民や先住民の拘束、ICE施設への議員や弁護士の立ち入り制限、さらには国内におけるテロ行為の定義をめぐる議論など、連邦政府の越権行為を指摘する報道が相次ぎ、国民の怒りを煽っている。とりわけ、ICE職員による発砲事件でルネー・ニコール・グッドとアレックス・プレッティが殺害されミネソタ州ミネアポリスでは、緊張が高まっている。こうした状況を受け、30日には全米各地で抗議行動が行われるとみられている。

「これほど迅速な連帯は前例がない」

シュライン・ギャラリーのスコット・オグデンによれば、政治には関与しないアート界が大規模かつ瞬時に反応していることが、事態の深刻さを物語っているという。オグデンは「アート業界やギャラリーがここまで団結するのは初めてかもしれません。あったとしてもずいぶん前のことでしょう」と語った。

ロウアー・マンハッタンに拠点を置くアレクサンダー・グレイ・アソシエイツの代表、アレクサンダー・グレイは、グッドが殺害された当時、ウォーカー・アートセンターで個展を開催していたダイアニ・ホワイト・ホークのためにミネアポリスに滞在していたという。グレイは次のように語る。

「これほど多くの美術関係者が今回ほど迅速に反応し声を上げた例は、1989年にVisualAIDSが企画した『Day With(out) Art』以来ではないでしょうか。当時はインターネットもなく、国内のギャラリーや美術館と連携するだけでも大きな労力が必要でした」

グレイはまた、ミネアポリスの怒りは「手に取るように感じられた」と述べ、連邦政府による移民取締りの急増が地元の先住民コミュニティに深刻な影響を及ぼしていると指摘した。また、独自の条約によって一定の自治権が認められている先住民がICEによって拘束され、一部では外出を控えざるを得ない状況が生じていることについて、こう言及した。

「こうした動きは、独裁制の集中が急速に進む兆候にも見えます。しかし同時に、連帯の姿勢が同じくらい早く現れたことには希望を感じています」

非暴力的抗議の力

同じくトライベッカでは、ジェームズ・コーハンとジェーン・ロンバードも休廊を発表した。チェルシーでは、グラッドストーン・ギャラリーとギャルリー・ルロン&カンパニーも同様に休廊する。ギャルリー・ルロン&カンパニーの副社長兼パートナーであるメアリー・サッバティーノは、US版ARTnewsに対し次のように語った。

「私たちは、作品の中で政治的関与と行動主義を前面に押し出し、非暴力的抗議の力を信じる多くのアーティストを代表していることを誇りに思います。この連帯行動に参加することは重要だと感じました」

また、グリーン・ナフタリの創業者であるキャロル・グリーンは、「隣人や弱い立場にある人々を守るために市民が示した勇気に鼓舞された」といい、ICEの廃止に世の中を少しでも近づけられるなら、この抗議行動に参加して声を上げなければならないと述べた。

PPOWの共同創業者兼プリンシパルを務めるウェンディ・オルソフもグリーンに同意し、抗議活動に直接関与すると語った上でこう続ける。

「ICEに反対する一斉休廊に参加することは、ギャラリーがこれまで開催してきた展覧会や所属アーティスト、スタッフメンバー、そしてPPOWコミュニティとの連帯を示すことの重要性を考えれば当然の決断だと思います。2010年にスミソニアンでデヴィッド・ヴォイナロヴィッチの作品が検閲を受け、2017年にはトランプ大統領が初当選した後にウィメンズ・マーチに参加したときと同様に、PPOWは行動します。フォーリー・スクエアで行われる抗議活動に先立ち、スタッフとアーティストがポスターや抗議アートを制作するための場所と資材を提供しています」

国境を越える連帯の波

連帯の波はアメリカ国外にも広がっている。パリで自身の名を冠するギャラリーを運営するブリジット・マルホランドも休廊するといい、Instagramに次のように投稿している。

「私はフランスに住むアメリカ移民です。私の先祖は飢饉、迫害、戦争から逃れるためにニューヨークへ移り住みました。ニューヨークで育ち、多様な人々が共存する都市に住んでいたことを誇りに思っていました。1月30日、ギャラリーは抗議活動への連帯を示すために休廊します。また、アメリカに本社を構える企業の商品の購入も控えます」

1月30日金曜日、これらの動きに連帯して休廊を表明したギャラリーの一覧はこちら。(翻訳:編集部)

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