フランシス・ベーコン、ルシアン・フロイドなど「世界屈指」のルイス・コレクションが初セールへ

著名コレクター、ジョー・ルイスのコレクションから選りすぐりの4点が、3月4日に開催されるサザビーズロンドンのイブニングセールに出品される。なかでもフランシス・ベーコンの傑作《Self-Portrait》(1972)は800万~1200万ポンド(約16億7000万円~25億円)と予想され、市場の注目を集めている。

フランシス・ベーコン《Self-Portrait》(1972)Photo: Sotheby's

3月4日、サザビーズロンドンで開催されるイブニングセール「Modern & Contemporary Evening Auction」に、著名なコレクター、ジョー・ルイスのコレクションからロンドン派を中心とする4作品が出品される。サザビーズは本件について、「これまで市場に出たロンドン派作品のなかでも屈指の質を誇る一群」と評している。

ジョー・ルイスはイギリスの実業家・投資家であり、US版ARTnewsのトップ200コレクターにも名を連ねた人物だ。一族はプレミアリーグの名門、トッテナム・ホットスパーの長年の筆頭株主としても知られる。1990年代には、当時ロンドン証券取引所に上場していたクリスティーズの株式を約30パーセント保有。1998年にフランソワ・ピノーがその株式を買い取り、同社は非公開化された。

ルイスが娘ヴィヴィアンとともに築いたコレクションは、印象派およびロンドン派を軸に構成され、その評価額は10億ドル(約1530億円)にのぼるとされる。今回が同コレクションからの初の本格的な放出となる。

ロンドン派(School of London)とは、1950年代後半以降、抽象表現主義が台頭するなかで具象絵画を追求したロンドン拠点の作家群を指す呼称で、1976年にアーティストのR・B・キタイが提唱した。フランシス・ベーコンルシアン・フロイド、フランク・アウアーバックをはじめ、デイヴィッド・ホックニー、ハワード・ホジキン、マイケル・アンドリュースらがその中心的存在とされる。

今回の目玉は、フランシス・ベーコンの《Self-Portrait》(1972)だ。パートナーであったジョージ・ダイアーの死後まもなく制作された本作は、ベーコンが自己と徹底的に向き合った時期の重要作と位置づけられ、サザビーズ・ヨーロッパ会長のオリヴァー・バーカーは、1972年をベーコンにとっての「特別な年」と表現する。同年彼はソーホーで暴力事件に巻き込まれ、その治療にあたった医師ポール・ブラスに本作を贈ったという。予想落札価格は800万~1200万ポンド(約16億7000万円~25億円)。

ルシアン・フロイドの2作品、《Blond Girl on a Bed》(1987)と《A Young Painter》(1957–58)も出品される。前者の予想落札価格は800万~1200万ポンド(約16億7000万円~25億円)、後者は400万~600万ポンド(約8億3500万円~12億5200万円)。バーカーは《A Young Painter》について、初期の厳密にコントロールされた画風から、より物質感を強調した筆致へと移行する転換点を示す重要作だと述べている。

4点目は、レオン・コソフの《Children’s Swimming Pool, 11 o’clock Saturday Morning, August》(1969)。予想落札価格は60万~80万ポンド(約1億2500万円~1億6000万円)で、スイミングプールを主題とした代表的連作のひとつだ。同シリーズは美術館所蔵作も多く、バーカーは本作を「傑作中の傑作」と評し、「きわめて妥当な価格設定だ」と語る。

ルシアン・フロイド《A Young Painter》(1957–58)Photo: Sotheby's
ルシアン・フロイド《Blond Girl on a Bed》(1987)Photo: Sotheby's
レオン・コソフ《Children’s Swimming Pool, 11 o’clock Saturday Morning, August》(1969)Photo: Sotheby's

現在89歳のルイスがこのタイミングで出品を決断した背景について、バーカーは「偶然ではない」と強調する。彼は「市場には力強さが戻っていると彼らは感じており、私たちも同意しています」と述べ、市場回復への確信をにじませた。

今回のセールは、サザビーズが昨秋ニューヨークのブロイヤー・ビルへ移転したことや、昨年11月に同地で行われたオークショングスタフ・クリムト《エリザベート・レーデラーの肖像》(1914–16)が2億3640万ドル(約367億円)で落札されるなど、活況を呈した流れを受けて開催される。バーカーは「私たちは市場のムードに敏感な銘柄のような存在です。直前シーズンの空気を反映します」と述べ、現在は入札者層に「確かな厚み」があると分析する。

一方で、昨年初頭は高金利や地政学的不安定が市場の重荷となり、厳しい局面が続いていたとも振り返る。「最初の6、7カ月は非常に難しかったです。しかし9月に何かが変わりました」とバーカーは語る。

そして現在、コレクターが求めているのは「市場に新たに登場する、高品質で適正価格の作品」だという。ルイス・コレクションはまさにその条件を満たすとバーカーは見る。彼は、「良質な作品を見つけるのは容易ではありません。しかし卓越した作品を市場に出せば、反応は必ず返ってきます」と付け加えた。

ルイス・コレクションの広報担当者も声明で次のように述べている。

「ロンドン派は、コレクション創設当初から中心的な関心分野でした。この運動は芸術家が『人間の存在』と向き合う方法を大きく変えました。私たちはその遺産と今日的意義を深く尊重しています。同時に、同じように恐れず探究を続ける現代の前衛芸術家を支援したいとも考えています。お気に入りの作品を手放すのは容易ではありませんが、今回の出品がこの運動の最良の成果を広く示し、イギリス美術の重要な一章に次世代のコレクターが関心を寄せる契機となることを願っています」

4作品は、ロンドンでの競売に先立ちニューヨークで展示される予定だ。(翻訳:編集部)

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