ザネレ・ムホリがハッセルブラッド国際写真賞を受賞──「われわれ黒人クィアは統計でも影でもない」
南アフリカの黒人クィアの人々を撮り続けてきた写真家・活動家のザネレ・ムホリが、ハッセルブラッド国際写真賞を受賞した。賞金約3420万円が授与されるほか、スウェーデン・ヨーテボリのハッセルブラッドセンターで受賞展も行われる。
写真家・活動家のザネレ・ムホリが、世界最高峰の写真賞のひとつとされるハッセルブラッド国際写真賞を受賞した。ムホリは、南アフリカをはじめ世界各地で暮らすクィアの黒人に焦点を当てた作品で知られる。受賞に伴いムホリには、賞金200万スウェーデン・クローナ(約3420万円)が授与された。
授賞式は10月9日にヨーテボリのハッセルブラッドセンターで開催され、翌10日には同館で受賞展も開幕する。関連出版物も刊行され、さらに10月13日にはストックホルムのモデルナ・ムセットでアーティスト・トークも実施される予定だ。
「ビジュアル・アクティビスト」と自らを称するムホリは、1972年に南アフリカのアパルトヘイト体制下に生まれた。ムホリのポートレート作品は、繊細でありながら政治的な切迫感に満ちており、こうした抑圧の構造を背景に生まれている。穏やかなモノクロ表現と、強いコントラストの照明によって写し出される被写体たちは、鑑賞者をまっすぐ見返している。ムホリが手掛ける作品の多くは記念碑的な性質を帯びており、南アフリカの歴史の本流から排除されてきた物語の象徴として機能している。
2018年、US版ARTnewsのインタビューでムホリは、南アフリカを形作ってきた多様な歴史を照らし出したいと語っている。自身の作品に参加した活動家やドラァグパフォーマー、希望を胸にする若手アーティストなど、偏見によって社会の周縁へと追いやられてきた協働者たちについてムホリは、「こうした人々こそ、歴史をつくっていくのです」と述べている。同インタビューでムホリは、さらにこう語っている。
「私はファインアートを作るために写真を撮影しているわけではありません。南アフリカの視覚表現の歴史に語りかけ、表現が一般とは異なるがゆえに歴史に組み込まれない人々に向けて、コンテンツを作っているのです。私自身もそのひとりだと言えるでしょう。だからこそ、“専門家”に依存することなく、当事者による、当事者のために、そして当事者について作られたコンテンツ制作に取り組んでいます」
ハッセルブラッド財団は、ムホリの作品を次のように評している。
「ザネレ・ムホリの写真は、構図や光の扱いといった視覚表現の面で卓越しており、モノクローム表現と照明を通じて、強さともろさの両方を宿した巧みな視覚言語を生み出している。また、偏見と差別に異議を唱えながら、オルタナティブな歴史を視覚的に表現しているポートレート作品は、ムホリをクィアの視覚文化における中心人物へと押し上げている」
今回の受賞に際してムホリは、公式声明の中でこう述べている。
「この賞は、私ひとりのものではありません。私に自らの物語を託してくれた多くの存在、名前、そして歴史なくして、受賞することはできませんでした。ウムラジから、黒人のLGBTQIA+の人々が自由に存在するために闘い続けるあらゆる場所で暮らす人々へ──今回の受賞は、私たちの人生が見られるに値するものであることを示しています。統計としてでも、影としてでもなく、ひとりの完全な人間として」
(翻訳:編集部)
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