今週末に見たいアートイベントTOP5:サラ・モリス日本初の大規模展、閉店した「ダイエー」が舞台の実験的展覧会
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. ロベール・ドアノー「Robert Doisneau」(art cruise gallery by Baycrew's)
パリの日常を独自の角度で写した「イメージの釣り人」
フランスの国民的写真家ロベール・ドアノー(1912–1994)は、パリの街角や人々の日常をとらえた作品で知られる。石版工の技術を学んだ後、写真家アンドレ・ヴィニョーの助手を経て、1934年にルノー社の産業カメラマンとして勤務。1939年にフリーランスとなった。庶民の生活をユーモアと詩情をもって切り取るスタイルは「イメージの釣り人」とも呼ばれ、国内外で高く評価された。1956年のニエプス賞、1983年のフランス写真大賞など受賞多数。1951年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)が開催した「5人のフランス人写真家」展にも選ばれている。
本展は、ドアノーの遺族が設立したアトリエ・ロベール・ドアノーの全面協力のもと開催されるもの。パリを舞台にした代表作に加え、写真家の原点ともいえるパリ郊外の風景、芸術家の肖像、子どもたちを写した作品など、アトリエ所蔵のモダンプリント約40点が展示される。人間への深い愛情と尽きない好奇心から生まれた写真は、一枚のイメージが持つ物語性と想像力の広がりをあらためて感じさせる。
ロベール・ドアノー「Robert Doisneau」
会期:1月30日(金)〜4月12日(日)
場所:art cruise gallery by Baycrew's(東京都港区虎ノ門2-6-3 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー3F SELECT BY BAYCREW'S内)
時間:11:00〜20:00(入場は30分前まで)
休館日:なし
2. サラ・モリス 「取引権限」(大阪中之島美術館)
30年以上の創作を辿る、日本初の大規模個展
イギリス生まれで現在はニューヨークを拠点に活動するサラ・モリスは、幾何学的なグリッドを用いた抽象絵画で国際的に評価されてきた。1990年代以降、絵画に加えて映像、壁画、ドローイング、彫刻など多様なメディアで制作を展開し、都市の構造や権力、グローバルなネットワークといったテーマを探究してきた。建築的な構造と鮮烈な色彩を組み合わせた作品は、都市の表層とその背後にある制度やシステムを可視化する試みとして知られる。タイトルの「取引権限」は、常に契約関係が求められる、そんな都市部の状況が重ねられている。
日本初の大規模個展となる本展では、モリスの30年以上のキャリアを振り返りながら約100点の作品を紹介。「サイン・ペインティング」「ミッドタウン」「サウンドグラフ」「スパイダーウェブ」などの主要シリーズから絵画約40点を展示するほか、映像作品17点も上映される。また、展示室の壁面には本展のために制作された新作の大型壁画も登場する。また映像作品《サクラ》では、大阪のクレパス®工場や文楽劇場、関西国際空港旅客ターミナルビル、サントリー山崎蒸溜所などを舞台に、都市と文化の関係性を独自の視点で捉える。出展作品の約9割が日本初公開。
サラ・モリス 「取引権限」
会期:1月31日(土)〜4月5日(日)
場所:大阪中之島美術館 5階展示室(大阪市北区中之島4-3-1)
時間:10:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜
3. ダイエー海老名店を銘記するための展覧会 空地のラプソディ(パープルームギャラリー)
スーパー閉店とともに立ち上がる「記憶の展覧会」
2026年2月25日に閉店したダイエー海老名店。その41年の歴史に区切りをつけるタイミングで、同ギャラリーでグループ展が開催されている。企画はアートコレクティブ「パープルーム」主宰で美術家の梅津庸一。タイトルにある「ラプソディ」は、複数の曲調が自由に繋がる楽曲形式を指し、梅津が展覧会を構成する際の方法論のひとつでもある。
本展の中心となるのは、尾関立子による幅3メートルの銅版画作品《Vacant lot》。海老名の原風景を思わせる空地を描いた作品で、三椏紙に刷られた24枚の版画を継ぎ合わせて構成されている。深い腐食を施した版によって、版画における再現性という概念をあえて遠ざけている点も特徴だ。計10人の参加作家には梅津、安藤裕美のほか、海老名にゆかりのある作家たちが集まる。都市の記憶や土地との関係を見つめ直す展示となっている。
ダイエー海老名店を銘記するための展覧会 空地のラプソディ
会期:2月22日(日)〜3月29日(日)
場所:パープルームギャラリー(2神奈川県海老名市中央3丁目2-5 ダイエー海老名店2F)
時間:12:00〜20:00
休館日:月火
4. スティーブン・ウォン・チュンヘイ「See you in future / Never met before」(MAHO KUBOTA GALLERY)
香港と日本の風景を宇宙へと拡張する絵画
香港出身の画家スティーブン・ウォン・チュンヘイは、都市の風景を独自の視点で描く作家としてアジアのアートシーンで注目を集めてきた。高層ビルが並ぶ典型的な都市像ではなく、近代化以前から続く土地の記憶や自然の気配を織り込んだ風景を描くのが特徴的だ。制作では写真を使わず、実際に街や山へ赴き、スケッチを通して五感で得た感覚をキャンバスへと展開する。
東京で初の個展となる本展では、新作絵画11点を発表。山水画の伝統的な遠近法「三遠法」の影響を取り入れ、複数の視点が同時に存在する空間を描き出す。葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》をオマージュした《The Rocky Wave and The Galaxy Fireworks》や、スターフェリーが宇宙空間を漂う《Along the Path of the Full Moon》など、香港と日本の風景が宇宙的なスケールで融合する作品が並ぶ。作家にとって初の試みとなる屏風形式の作品も展示される予定だ。
スティーブン・ウォン・チュンヘイ「See you in future / Never met before」
会期:3月6日(金)〜4月11日(土)
場所:MAHO KUBOTA GALLERY(東京都渋谷区神宮前2-4-7)
時間:12:00〜19:00
休館日:日月祝
5. クリスティーナ・ロシュコワ「unbewitched/アンビウィッチド」(PARCO MUSEUM TOKYO)
夢から醒めた世界に残る、ダークなファンタジー
ロシア出身の写真家クリスティーナ・ロシュコワは、少女や若者たちの親密な関係性を詩的なイメージで捉える作品で注目されてきた。サンクトペテルブルク大学で実践哲学を学び、写真アカデミー「フォトグラフィカ」を卒業。2021年にはPOY Asia Awardを受賞し、「British Journal of Photography」の「注目すべき若手写真家20人」にも選ばれた。写真集『The Bliss of Girlhood』(2022)などを通して、世界各地で評価を高めている。
本展は同名写真集の刊行を記念した展示で、日本では2度目、そして最大規模となる個展だ。「アンビウィッチド」とは「魔法が解けた」「夢から覚めた」という意味を持つ。高度経済成長後の社会に残る厳しい現実と、それでもなお求め続けられる幻想とのあいだにある緊張をテーマとしている。少女や少年、恋人、性的少数者へと向けられるロシュコワのまなざしは、親密さと危うさを併せ持ち、現実と夢の境界を揺さぶるようなイメージを生み出している。
クリスティーナ・ロシュコワ「unbewitched/アンビウィッチド」
会期:3月20日(金)〜4月13日(月)
場所:PARCO MUSEUM TOKYO(東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 4F)
時間:11:00〜21:00(最終日は18:00まで、入場は30分前まで)
休館日:なし






























