英政府、テートや大英博物館などで「海外観光客への入館料導入」検討──現場は反発
イギリス政府は、国立美術館・博物館において海外来館者への入館料導入を含む改革案を検討している。財源確保を狙う動きだが、美術館の館長らからは反対の声も出ている。
イギリスのデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は、国内で芸術に触れる機会の拡大を目的とした昨年の報告書に含まれる複数の提言を受け入れた。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、その中には国立美術館・博物館の有料化も含まれているという。
この報告書は、アーツカウンシル・イングランドの見直しを目的に、元下院議員マーガレット・ホッジ男爵夫人が主導し、昨年12月に公表された。政府による検討を経て、提言の一部が採用されている。ただし、この方針の実現には課題も残る。海外来館者に入場料を導入するには、来館者を区別するための仕組みとして、国民共通の身分証制度を整備しなくてはならない。
海外来館者への入場料徴収に加え、「慈善活動の奨励や文化関連の税制優遇措置」も財源として想定されている。これらの財源は、新進アーティストを支援する基金の創設や、すべての子どもへの芸術教育機会の保障、地域の芸術プログラムへの助成に充てられる見込みだ。政府は声明で、これにより人々が自国の芸術に触れ、創造性を育み、成長著しいクリエイティブ産業で必要なスキルを身につけられるようになると説明している。文化大臣リサ・ナンディはさらにこう述べた。
「文化がもたらす豊かさが公平に行き渡っていない状態が、あまりにも長く続いていました。国全体のために機能し、分断の時代に必要な力を与えてくれる文化セクターを築く機会を逃してはいけません」
入館料の導入対象には、テート美術館群やヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)、大英博物館、ロンドン・ナショナル・ギャラリーなど、常設展示を無料公開している施設が含まれる。なお、一部の施設では企画展などで有料チケットを導入している。
一方で、海外来館者への入館料導入には反対の声もある。V&Aのディレクター、トリストラム・ハントはフィナンシャル・タイムズ紙に対し、入館料の設定に「魅力を感じていない」と述べた。また、今年春にテートのディレクターを退任予定のマリア・バルショーは、入館料ではなく観光税の導入を提案している。
DCMSが助成する15館に関する2023〜2024年度の政府報告書によると、2023年4月から2024年3月までの海外来館者数は1750万人で、全体の約43%を占めた。フィナンシャル・タイムズ紙は、入場料を15〜20ポンド(約3000〜4300円)とした場合、来館者数が横ばいであれば2億6200万〜3億5000万ポンド(約557億〜744億円)の収入が見込まれると報じている。ただし、料金導入により来館者が減少する可能性も指摘されている。
アート・ニュースペーパーによる2024年の年間ランキングでは、大英博物館は約650万人で世界3位、テート・モダンは460万人で5位に入った。
大英博物館は2019年の過去最高(約620万人)を上回った。一方で、イギリスの複数の美術館・博物館はパンデミック前の水準には戻っていない。ロンドン・ナショナル・ギャラリーも2025年は420万人と前年から増加したが、2019年の600万人には届いていない。イギリスの芸術担当大臣イアン・マレーは声明で次のように述べた。
「我々は、この国における芸術助成のあり方、そしてクリエイターや市民との協働のあり方を根本から変えるべく、アーツ・カウンシルによる改革の実行を全面的に支援していきます。この国で求められている文化に触れる機会を広げるために、この取り組みは不可欠です」
(翻訳:編集部)
from ARTnews