ピカソの子孫、ピカソ作品のNFT化とオークション出品を予告?
ピカソの孫娘、マリーナ・ピカソとその息子のフローリアン・ピカソが、ピカソの手描きの絵があしらわれた陶芸作品のNFT1010点を、3月のオークションに出品するとニュースメディアのNational(ナショナル)が報じた。(続報は下部へ続く)
これまで、どの作品がNFT化されるかは明確にされていなかったが、マリーナは取材に対して大まかな説明を行なっている。「作品には顔が描かれていますが、とても表情豊かなんです。喜びと幸せに満ちていて、ずっと私と子どもたちの暮らしの中にあったものです」
3月のオークションでは、1958年に制作された作品の現物と、そのNFTの両方が出品される予定。「NFTの世界とファインアートの世界の橋渡しをしたい」とフローリアンはNationalに語っている。ピカソのひ孫であるフローリアンがさらに示唆したところでは、今回の出品は同家が所蔵するピカソ作品のNFT化の第一弾だという。また、それぞれのNFTにはフローリアン自身の作品が添えられる予定だ。
DJとして活動するフローリアンは、歌手のジョン・レジェンドやラッパーのNasとのコラボレーションで楽曲を制作している。同家の広報担当者はNationalに対し、NFT化は若い世代にピカソを知ってもらうためだと述べている(しかし、美術史におけるピカソの位置付けを考えると、その必要があるかどうかは疑わしい)。
NFTブームに乗ろうとしているのはピカソ家だけではない。ジョン・レノンの長男ジュリアンは、父親のビートルズ関連のお宝をNFTで提供するとツイートしている。たとえば、ギターや衣類、ヘイ・ジュードに関するポール・マッカートニーのメモなどだ。
実際、大物アーティストやミュージシャンとコネクションのある誰もが、急激に取引量が増えているNFT市場から何らかの利益を得ようとしているようだ。音楽メディアのLoudwire (ラウドワイヤ)によると、1991年にニルヴァーナのコンサートを撮影した写真家のフェイス・ウェストは、当時の希少な写真のNFT化を進めているという。
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年1月26日に掲載されました。元記事はこちら。
続報:ピカソ作品のNFT化は「まったくの誤報」 ピカソ家が否定
1月24日週の初め、パブロ・ピカソの孫娘のマリーナと曾孫(ひまご)のフローリアンが、ピカソの陶芸作品のNFTを1010点、オークションに出品すると発表した。NFTには、DJとして活動するフローリアンがプロデュースした曲が添えられる予定だった。しかし、このプロジェクトは、ピカソ家の他の親族によって中止されたとAP通信が伝えている。
マリーナとフローリアンは前週にAP通信の記者をマリーナの自宅に招き、計画中のNFTプロジェクトについて説明。正式にローンチする前の限定内覧会のような形でNFTを作成・発行し、3月にサザビーズでオークションをすると話していた。これを報道したAP通信に対し、ピカソ家とサザビーズは、その予定はないと伝えている。
ピカソの名前の使用権などを管理するピカソ財団の弁護士、ジャン=ジャック・ノイヤーは、「ピカソの相続人が『パブロ・ピカソ』のNFTを販売するという情報は、まったくの間違いだ」と書簡で伝えた。NFT化されると報道されていた陶芸作品自体も、販売される予定はないと同家は述べている。
パブロ・ピカソの3人の子供と2人の孫は、ピカソの名前の知的財産を共同所有しているが、NFTプロジェクトを承認できるのは、ピカソの息子で一族の財産の管理者であるクロード・ルイス・ピカソだけだ。
マリーナ・ピカソとフローリアン・ピカソは、その後発言を撤回している。フローリアンの弁護士シリル・ノーターマンは、販売されるNFTはフローリアンの作品だけだとAP通信に伝え、「最初から、もう少しはっきりさせておくべきだったかもしれません」と述べている。(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年1月28日に掲載されました。元記事はこちら