ARTnewsJAPAN

暗号通貨業界の大物ジハン・ウー、美術商のイヴ・ブーヴィエからシンガポールのフリーポート事業を取得

中国の暗号通貨起業家で億万長者のジハン・ウーが、アートディーラーのイヴ・ブーヴィエの所有する「ル・フリーポート」を買収したとブルームバーグが報じた。シンガポールに拠点を置くル・フリーポートは、世界最高のセキュリティを備えているとされる。

ジハン・ウー Photo by Kristoffer Tripplaar/Sipa USA)(Sipa via AP Images

ジハン・ウーは、イヴ・ブーヴィエのフリーポート(*1)事業を2840万ドル(約41億円)で取得。2010年に7000万ドル(約100億円*2)を投じて同施設を建設したブーヴィエにとっては、大きな損失を出したことになる。


*1 美術品や骨とう品などを安全に保管することができ、関税がかからない区画。
*2 本記事での円への換算は、全て直近のレートを適用。

また、売却価格の4分の3は債権者への返済にあてられ、残りはル・フリーポートの70%の株を保有していたブーヴィエと他の株主たちとの間で分配されたため、最終的にブーヴィエが得た利益は354万ドル(約5億円)程度だった。

ブーヴィエは、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)、ドミトリー・リボロフレフとの長年にわたる法的な争いに悩まされている。ARTnewsのトップ200コレクターにもランクインしているリボロフレフは、ブーヴィエが法外な高値で39点の作品を売りつけ、数年間で10億ドル(約1430億円)を騙し取ったと主張。その中には、レオナルド・ダ・ヴィンチの《サルバトール・ムンディ》も含まれていた。

ブーヴィエの問題は、リボロフレフとの訴訟費用だけではない。アートニュースペーパー紙によれば、2019年にル・フリーポートを6000万ドル(約86億円)で売却する話があったものの、ブーヴィエをめぐる数々の悪評が原因で失敗に終わったと見られている。

一方のウーは、世界最大の暗号通貨マイニング企業、ビットメイン社の共同創業者で、暗号通貨業界のキーパーソンだ。ビットメイン社からは退いたが、クラウドマイニングサービスを提供するビットディア社の会長を務めている。

このビットディア社は、アジア・フリーポート・ホールディングスを所有するストレイトディア社の単独株主でもある。なお、アジア・フリーポートとル・フリーポートはともに赤字経営だと報道されている。(翻訳:岩本恵美)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月20日に掲載されました。元記事はこちら

あわせて読みたい