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今週末に見たいアートイベントTOP5: メイン作家は栗林隆+Cinema Caravanと鴻池朋子!「六本木アートナイト」、約500作品で60年の創作を紐解く「森山大道展」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.6「TOKYO GAMES」(SKY GALLERY)より、あの×渋⾕

1. 須田悦弘「補作と模作の模索」(ギャラリー小柳)

須田悦弘 菫 2023年 木に彩色、ジンボトル Photo: Hiroshi Sugimoto

超絶技巧の現代美術家・須田悦弘が、杉本博司と創り上げる「模作」の世界

独学で木彫の技術を磨き、命の気配を感じさせるほどに精緻な草木や花を彫り上げる須田悦弘。部屋の片隅など思いがけない場所に作品を配して、空間自体をインスタレーションに変えてきた。今展では、国宝の仏像の展示ケースに「雑草」を忍ばせるなど、古美術と自作を共に展示する近年の仕事に注目。現代美術作家の杉本博司が「お題」に選んだ古美術の器に、須田が「答え」を提示する。ギャラリー小柳とロンドンギャラリー白金(東京都港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス4F)の2会場で同時開催。

展覧会名の「補作と模作の模索」は、杉本が名付けた。自然を模してきたこれまでの作品を「模作」、神・仏像の欠損部を補って古色を施す近年の創作を「補作」と捉えたという。ギャラリー小柳では、室町時代の鹿像の背に、須田が鞍と蓮台を補作した《春日神鹿像》などを展示。蓮台の上には杉本が作った、写真シリーズ「海景」のフィルムを納めた光学ガラス製の「海景五輪塔」が載る。ロンドンギャラリー白金では、結髪部分を補作した唐時代の《婦人立像》などが並ぶ。

須田悦弘「補作と模作の模索」
会期:4月8日(土)~ 6月24日(土)
会場:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F)
時間:11:00 ~ 19:00 


2. 「森山大道 光の記憶」(島根県立美術館)

森山大道《犬の記憶》1982年 Akio Nagasawa Gallery蔵 ©Daido Moriyama Photo Foundation

60年間に撮った約500作品で紐解く、森山大道の全貌

写真家・森山大道といえば、粗い粒子と、コントラストが強いモノクロのストリートスナップが代名詞だ。2019年に「写真界のノーベル賞」といわれるハッセルブラッド国際写真賞を受賞するなど国際的にも名高いが、本展ではこれまでの評価とは切り離し、森山の写真そのものを真正面から捉え直す。子ども時代を過ごした島根の地で、作品約500点と資料約200点から60年の創作の歩みをたどっていく。

展示は、時代ごとに考察する3部構成。「PART.Ⅰ 写真よさようなら 1964-1973」では、写真集のデビュー作『にっぽん劇場写真帖』などを取り上げ、写真に体ごとぶつかっていった時代を紹介。「PART.Ⅱ 光の化石 1974-1990」では「写真は光と時間の化石である」という原点に立ち返った森山に注目。「街 1991-2023」では、新宿やハワイ、ブエノスアイレスといった街の景色を切り取った眼差しに迫る。漆黒の闇から照射される光に満ちた生命体のような作品群を目の当たりにする。5月28日(日)14時から、本展を企画した学芸員による美術講座を開催。

 「森山大道 光の記憶」
会期:4月12日(水)~ 6月26日(月)
会場:島根県立美術館(島根県松江市袖師町1-5)
時間:10:00 ~ 日没後30分(入場は日没時刻まで)


3. 「大巻伸嗣──地平線のゆくえ」(弘前れんが倉庫美術館)

⼤巻伸嗣《Liminal Air Space-Time 事象の地平線》2023 年 本展⽰⾵景 撮影:木奥惠三

青森の風土に見た「死生観」をテーマに繰り広げる、再生と創造の物語

「存在」とは何か──。そんな普遍的で途方もない問いに向き合い続ける大巻伸嗣。「空間」「時間」「重力」「記憶」をキーワードに、ダイナミックで幻想的なインスタレーションやパブリックアートで「存在」に迫るための空間の創出を試みてきた。今回の展示に際し、青森県内の風物や自然、信仰などに取材するなかで、死生観というテーマにたどり着いたという。館内に展開される再生や創造の物語により、新たな風景が広がっていく。

展示の始まりと終わりを飾るのは、鬼が腰かけたという伝説が残る柏の葉をかたどった彫刻作品。その間には、代表作「Liminal Air Space-Time」シリーズの新作インスタレーションが展開される。高さ15メートルの吹き抜け空間に有機的な動きでなびく薄い布は、海辺で見た波からイメージしたという。「Echoes-Infinity」シリーズの新作バージョンも登場。床一面の白いフェルトに色とりどりの花や紋様が描かれた同作の上を歩くと、雪の白から生まれ出るような春の光や色に包まれる感覚を覚える。

 「大巻伸嗣──地平線のゆくえ」
会期:4月15日(土)~10月9日(月・祝)
会場:弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市吉野町2-1)
時間:9:00 ~ 17:00 (入場は30分前まで)


4. SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.6「TOKYO GAMES」(SKY GALLERY)

あの×渋⾕

「あの×渋谷」「今田美桜×原宿」、写真で“すくい撮った”美しい挙動

渋谷スクランブルスクエア46階にある屋内展望回廊・SKY GALLERYが、この場所からインスピレーションを受けて制作された作品を主軸にして開く展覧会の6回目。今回、雑誌や広告などで活動しながら日常の風景も切り取ってきた写真家の松岡一哲を迎える。松岡が選んだのは、SHIBUYA SKYの展望空間からも望むことができる東京の街々を舞台にした俳優のポートレート。「あの×渋谷」「飯豊まりえ×目黒」「今田美桜×原宿」「片山友希×新宿」「野内まる×SHIBUYA SKY」「古川琴音×東京タワー」「南琴奈×浅草」の組み合わせで撮り下ろした32点を含む計42作品を公開する。

松岡は東京に、一人ひとりがクレーンゲームのように何かをつかみ取ろうとしている姿を見いだす。そして「別に掴みそこねたっていいんだよ。そこへ向かう君の、一挙手一投足がうつくしいんだ。僕はその美しい挙動を写真ですくい撮る」と、展覧会にコメントを寄せている。なお、7月14日(金)22:30~同会場にてスペシャルトークショーが開催される(先着50人)。

SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.6「TOKYO GAMES」
会期:5月25日(木)~ 7月30日(日)
会場:SKY GALLERY(東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア46F SHIBUYA SKY)
時間:10:00 ~ 22:30(最終入場は21:20)


5. 六本木アートナイト2023(六本木ヒルズほか六本木地区各所)

鴻池朋子《高松→越前→静岡→六本木皮トンビ(Takamatsu→Echizen→Shizuoka→RoppongiBlack Kite)》 2022年 約W12x H5.5m 牛革、水性塗料、クレヨン|Water -based paint, Crayon on Cowskin

4年ぶりにオールナイト開催、六本木の一夜を彩るアートの饗宴

美術館や大型複合施設、商店街が集積する東京・六本木の街を舞台にした現代アートの饗宴「六本木アートナイト」が4年ぶりにオールナイトで開催される。今年のテーマは「都市のいきもの図鑑」。国内外の作家約45組が参加し、街の各所でペインティングやインスタレーション、映像作品など70前後のプログラムを繰り広げる。

2組のメインアーティストのうち、栗林隆+Cinema Caravanは「アートエネルギー」を載せて世界に届けるというコンセプトの下、大掛かりな「船」のインスタレーションを出現させる《Tanker Project》(会場:六本木ヒルズアリーナ)。同じくメイン作家の鴻池朋子が出展するのは、牛革を縫い合わせて作った、10メートルを超える巨大なトンビ《皮トンビ》。全国で屋外展示をして話題になった複数の《皮トンビ》を六本木に呼び集める(同:東京ミッドタウンほか)。フランス出身のマニュエル・ムホーによる100色の素材を連ねたインスタレーション(同:六本木ヒルズ66プラザ)、オランダを拠点にするパフォーマンス集団Close-Act Theatreの、大きな白い翼をまとったキャラクターが音楽に合わせて歩く幻想的なパレード(同:六本木ヒルズアリーナほか)なども見どころ。

六本木アートナイト2023
会期:5月27日(土)、28日(日)
会場:六本木ヒルズ(東京都港区六本木6-10-1)ほか六本木地区各所
時間:27日10:00 ~ 28日18:00(コアタイムは27日18:00 〜 28日6:00)

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