ナチス略奪のモディリアーニ作品、遺族へ返還へ──11年の来歴争いに決着

ナチスに略奪されたモディリアーニ作品をめぐり、11年に及ぶ訴訟の末、ニューヨークの裁判所がユダヤ人美術商の遺族への返還を命じた。判決の決め手は来歴情報の正当性だった。

モディリアーニ《杖を持つ座った男》(1918)Photo: Via Public Domain

第2次世界大戦中、ナチス占領下のパリで略奪されたユダヤ人美術商所有のアメデオ・モディリアーニの絵画について、11年間の法廷闘争の末、4月3日、美術商の遺族への返還を命じる判決が下された。

問題となったのは、帽子とネクタイを身につけたチョコレート商人を描いた油彩《杖を持つ座った男(Seated Man With a Cane)》(1918)。同作はイギリス国籍のパリのユダヤ人美術商、オスカー・ステッティナーの所有だったが、ナチス占領下のパリから脱出する際、やむなき置き去りにした。

その後ナチスがこの絵画を没収し、ナチス当局から財産処分を委任されたマルセル・フィリポンが1944年にパリの競売場でジャン・ファン・デル・クリップに売却した。それから約50年後、作品は1996年にクリスティーズ・ロンドンのオークションで再び姿を現した。落札者は、世界的コレクターでディーラーでもあるデイヴィッド・ナーマドの会社インターナショナル・アート・センターだ。同社は以後、本作をスイスで保管してきた。同作の現在の評価額は2500万ドル(約40億円)以上とされている。

ステッティナーの孫フィリップ・マエストラッチは同作の所有権を主張し、2015年、ナチス略奪美術品の回収を専門とするカナダ企業モンデックスとともに、ナーマドおよびインターナショナル・アート・センターを相手取り、返還を求める訴訟ニューヨークで提起した。

法廷における争点は、ナチス略奪美術品訴訟で繰り返し問われてきた核心的な問題、すなわち被告が保有する絵画がステッティナーの所有物と記録されている作品と同一であるか否かにあった。

これに対しナーマド側は、《杖を持つ座った男》のプロヴェナンス(所有権の変遷)の記録に脱落や矛盾があると主張。しかしニューヨーク州最高裁判所は、1930年にステッティナーがヴェネチア・ビエンナーレの展覧会に同作を貸し出したという記録や、戦後に彼が提出した返還請求書類など、絵画をステッティナーと結びつける証拠が原告の主張を強く裏付けていると判断した。そして4月3日、この絵画が不法に押収され、強制的に売却されたものであると認定し、ナーマド側の主張を退けた。

同裁判所のジョエル・M・コーエン判事は判決に際して、「オスカー・ステッティナーは、少なくとも違法な押収以前において当該絵画に対する優越的な占有権を有しており、自発的にこれを手放したことはない」と述べたという。

さらに判事は、1996年のオークションにおけるプロヴェナンスの記載についても、意図的かどうかは別として「欠陥があり誤解を招くもの」であったと指摘した。また、ナチスによる略奪の経緯が不正確な来歴情報によって覆い隠され得る問題性にも言及したうえで、「実質的な争点の存在を示す証拠は何ら提示されていない」と述べた。

戦後、ステッティナー本人も1946年に訴訟を提起しており、フランスの裁判所は彼の主張を認めて絵画の返還を命じた。しかしその時点ですでに作品は第三者に売却されており、その人物も作品を所持していなかった。ステッティナーは1948年に亡くなり、ついに絵画を取り戻すことはなかった。

判決後、モンデックスの創設者ジェームス・パーマーはニューヨーク・タイムズの取材に対し、次のようにコメントした。

「依頼人のマエストラッチは喜びと満足感に満ちています。これほどの年月を経て、祖父の悲願がついに果たされたのです。ナーマドが判決を遵守し、裁判所の命令を受け取り次第速やかに絵画を返還することを期待しています」(翻訳:編集部)

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