1964年版《泉》も展示──ガゴシアン、NYの新拠点でマルセル・デュシャン展を開催
ガゴシアンがニューヨークの新拠点でマルセル・デュシャン展を開催する。市場に出回る機会が限られる作品群が展示される予定で、その希少性と美術史的価値に関心が集まっている。
長年構えてきたマンハッタンのアッパー・イースト・サイドの拠点を開け渡すことになったガゴシアンが、同地域に新たな展示スペースをオープンする。かつて複数階にわたって展開していたマディソン街980番地の1階に4月25日に開業予定で、こけら落としとしてマルセル・デュシャン展が開催される。
マディソン街980番地は、1965年にデュシャンがニューヨーク展を開催したコーディア&エクストロム・ギャラリー(Cordier & Ekstrom Gallery)が入居していた場所であり、ガゴシアンは2014年にもここでデュシャン展を開催している。ちなみに、ガゴシアンが現在のビルに初めてオフィスを構えたのは1987年。その後フロアを拡張してきたが、ビル管理側が2023年に物件の大部分をブルームバーグ・フィランソロピーズに譲渡したことにより、同ギャラリーを含む入居者が退去することになったとアートネット・ニュースが報じている。上層階での最後の展示は、ジャスパー・ジョーンズのクロスハッチングを用いた絵画の展覧会で、4月24日まで開催されている。
さて、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で現在開催中の回顧展と並行して行われる本展の開催にあたり、ラリー・ガゴシアンは声明で次のように述べている。
「現代美術はデュシャンから始まりました。マディソン街980番地のビルは、60年余り前に彼が展示を行った場所でもあります。新ギャラリーの門出を祝うのに、これほどふさわしいアーティスト、そしてこれほど重要な作品群はほかに考えられません」
本展には、デュシャンの最も有名なレディメイドも展示される予定で、その中には、横倒しにした小便器で構成された1917年の彫刻《泉》の1964年版も含まれる。このレプリカは、自身の作品の一部が失われていた問題に対応するため、美術商アルトゥーロ・シュヴァルツと協力して制作された。同時に、MoMAの回顧展でも論じられているように、オリジナルの価値やコピーの定義を問い直す概念的な戦略としての側面ももっていた。
また、木製のスツールに自転車の車輪を取り付けた1913年のレディメイドの1964年版《自転車の車輪》も展示される。ガゴシアンによれば、この作品は美術館に所蔵されていない唯一の《自転車の車輪》だという。

こけら落とし展の出品作品は販売目的なのか広報担当者に問い合わせたが、回答は得られなかった。また、ギャラリーの声明にも、展示品が借用品かどうかは明記されていない。ガゴシアンは物故作家や歴史的に重要な作品に焦点を当てた展覧会を定期的に開催しており、そこには借用作品が含まれる場合もある。なお、美術館などから作品を借りる場合、通常はプレスリリースにその旨が記載される。
出品総数300点を誇るMoMAの回顧展を見渡しても、個人コレクターが所有するレディメイド作品はごくわずかだ。美術史上の重要性に加え、市場に出回る点数が限られているため、デュシャンの作品は市場に出ると高値で取引されることが多く、2009年にはクリスティーズ・パリで《Belle Haleine – Eau De Voilette》(1921)が作家のオークション記録を更新した。香水瓶のラベルを、デュシャンの別人格である「ローズ・セラヴィ」の名に置き換えたこの作品は、イヴ・サンローランとそのパートナーであるピエール・ベルジェの旧蔵品で、予想落札価格の6倍を超える1150万ドル(現在の為替で約18億3000万円)で落札された。
レディメイドや絵画のミニチュアを詰め込んだスーツケースの作品群《Boîte-en-valise》も定期的にオークションに登場しており、100万ドル代前半(約1億6000万円)で取引されている。(翻訳:編集部)
from ARTnews