サザビーズが黒字転換──アート市場回復の波に乗る一方で財務課題も残る

サザビーズが数年にわたる赤字から黒字へ転換した。アート市場の回復が追い風となる一方で、負債や訴訟といった財務課題への対応も続いている。

3月4日にサザビーズ・ロンドンで開催された近現代美術オークションの様子。Photo: Rayan Bamhayan/Courtesy Sotheby's
3月4日にサザビーズ・ロンドンで開催された近現代美術オークションの様子。Photo: Rayan Bamhayan/Courtesy Sotheby's

サザビーズは数年間にわたる赤字から黒字に転換したが、巨額の負債や係争中の訴訟など、財務面では依然として課題が残っている。

フィナンシャル・タイムズ紙が入手した財務資料によると、同社は2025年に5300万ドル(現在の為替で約84億円)の税引前利益を計上し、前年の1億9000万ドル(同・約302億円)の赤字から大きく改善したという。売上高は20%近く増加して71億ドル(同・約1兆1300億円)に達し、中核であるオークション事業の収益も26%増の約10億ドル(同・約1600億円)へと引き上げられた。

サザビーズが発表した通期業績でも、事業全体の改善が確認できる。2025年の総収益は前年比21%増の14億ドル(同・約2230億円)に上り、調整後EBITDA(*1)は同社史上最高水準となる3億6300万ドル(同・約577億円)を記録した。

*1 Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization(利払い・税引き・減価償却前利益)。税金や支払利息などを差し引く前の利益を指し、企業の純粋な収益力を評価するための財務指標。

サザビーズの業績回復の背景には、アート市場全体の緩やかな持ち直しもあるとみられる。UBSアート・バーゼルが発表した最新の「The Art Market Report 2026」によれば、過去2年間にわたり縮小傾向にあったアート市場は、昨年4%の成長を記録した。特にオークション販売が全体のけん引役となっており、高価格帯の作品に需要が集中した結果、9%の増加を示している。

こうした業績の改善と並行して、サザビーズはキャッシュフロー管理の強化にも乗り出している。同オークションハウスは2025年に「延長決済」と呼ばれる仕組みを導入した。これは、通常500万ドル(約7億9000万円)以上の支払いを受ける出品者を対象に、45日の標準的な支払いスケジュールではなく、数カ月にわたる分割払いを選択できるものだ。この支払い方法を選択した場合、出品者にはおよそ7%の利息が支払われる。アメリカの政治経済メディアPuckのコラム「Wall Power」で指摘されているように、この取り決めは、差し迫った資金不足を示しているのではなく、支払い時期に柔軟性をもたせる、資金調達方法のひとつとして機能している。

だが、不動産仲介会社に対する巨額の未払いをめぐる訴訟からは、サザビーズの資金繰りの厳しさもうかがえる。不動産大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは、サザビーズが旧本社ビルの売却に伴う1020万ドル(約16億2100万円)の手数料を支払っていないとして提訴した。同社は売却の決め手となったテナント確保に貢献したとして、2%の仲介手数料を求めているが、サザビーズはこの訴えを「根拠がない」と一蹴し、法廷で争う構えを見せている。

サザビーズはさらに、オーナーであるパトリック・ドラヒが2019年に行ったレバレッジド・バイアウト(*2)による債務への対応も続けており、2027年に満期を迎える約7億6500万ドル(約1215億円)の負債の借り換えにも取り組んでいる。

*2 買収対象企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に借入を行い、その資金で企業を買収する手法。買収後、借入金は買収された企業自身が返済していく点に特徴がある。

2026年初頭の業績を見ると、第1四半期の収益は2億8900万〜3億900万ドル(約460億〜491億円)に達すると推定されており、回復基調は維持されている。(翻訳:編集部)

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