名家所蔵のルノワール作品、約100年ぶりにオークションへ。予想最高落札価格は56億円

ルノワールがニニ・ロペスをモデルに描いた個人像の作品が、97年ぶりに公開市場に登場する。由緒ある美術収集家一族に受け継がれていたもので、クリスティーズオークションでの予想最高落札価格は約56億円となっている。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《La femme aux lilas (Portrait de Nini Lopez) 》(1876-1877) Photo: Courtesy Christie's

ピエール=オーギュスト・ルノワールの絵画《La femme aux lilas (Portrait de Nini Lopez)(ライラックを持つ女 [ニニ・ロペスの肖像] )》(1876-1877)が、97年ぶりにオークションに登場する。出品されるのは5月18日に行われるクリスティーズニューヨークの20世紀イブニングセールで、落札予想価格は2500万ドルから3500万ドル(約40億〜56億円)。

パリの若い女優ニニ・ロペスをモデルに描かれたこの絵では、金色の髪に乳白色の肌、バラ色の頬を持つ女性が、手にした白とピンクの花束越しに何かを見つめている。特筆すべきなのは、この作品が1929年からホイットニー・ペイソン家に所有されていたという来歴だ。クリスティーズで20世紀・21世紀美術部門グローバルチェアマンを務めるマックス・カーターはニューヨーク・ポスト紙の取材に対し、由緒あるペイソン家は「アメリカ屈指の、20世紀における最も偉大な美術収集家一族の1つ」だと述べている。

この絵画は1929年に、ジョーン・ホイットニー・ペイソンとその夫チャールズ・ペイソンが10万ドルで取得したもので、ホイットニー・ペイソンが最も早い時期に購入した作品の1点とされる。彼女はその後、印象派とポスト印象派作品の優れたコレクションを築き上げ、さらにMLBのニューヨーク・メッツ創設に関わった。そのコレクションは現在、メイン州のポートランド美術館(PMA)に無期限貸与されている。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、この絵は1929年以来ずっと一族の手元にあり、娘のロリンダ・ペイソン・ド・ルーレに受け継がれたが、ド・ルーレは昨年11月に95歳で死去した。クリスティーズは5月の20世紀美術イブニングセールで、ド・ルーレの美術コレクションから9点の作品を競売にかける予定だと報じられている。

ホイットニー家には、ホイットニー・ペイソンとド・ルーレ以外にも広く知られた美術品コレクターがいる。ホイットニー・ペイソンのおばに当たるガートルード・ヴァンダービルト・ホイットニーは、ニューヨークのホイットニー美術館の創設者だ。彼女は「金ピカ時代」と言われる19世紀アメリカの経済発展期を代表する鉄道王コーネリアス・ヴァンダービルト2世の娘で、実業家ハリー・ペイン・ホイットニーの妻でもあった。

なお、今回出品される絵画と同じ時期に制作され、同じく1929年にホイットニー家のジョン・ヘイ・ホイットニーが購入した作品が、1990年にルノワールのオークション最高落札額を記録している。この作品、《Au Moulin de la Galette(ムーラン・ド・ラ・ギャレットにて)》(1876)は、後に《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》へ改題され(*1)、1990年にニューヨークのサザビーズで大昭和製紙の齊藤了英名誉会長(当時)に7810万ドル(当時の為替レートで約119億円)で落札された。この記録はいまだ破られていない。

*1 オルセー美術館所蔵の同名の作品の小型版。

クリスティーズのキュレーターらは《La femme aux lilas (Portrait de Nini Lopez)》を「ここ数十年で市場に出たルノワール作品の中で最も重要なもの」と評しているが、予想最高落札価格が3500万ドルであることを考えると、ルノワールのオークション記録に手が届く可能性は低い。(翻訳:石井佳子)

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