ARTnewsJAPAN

中国の卯年記念切手が「不気味」と大不評。デザインを手がけたのは98歳の重鎮アーティスト

春節(旧正月)を迎えた中国で、毎年恒例の干支の記念切手が発行された。しかし、今年発売された卯年の切手は大不評。ネットユーザーからは「酷い」「気味が悪い」「怖い」などの声が相次いでいる。

中国アート界の重鎮、黄永玉がデザインした青いウサギの記念切手。Photo: VCG via Getty Images

切手をデザインした黄永玉は中国の著名な芸術家で、年齢は100歳近い。記念切手は2種類のセットで、1つは赤い目と人間のような手を持つ真っ青なウサギがペンと手紙を持っている。これは「福をもたらすウサギ」をイメージしているという。もう1つは3匹のウサギが輪になって走る様子が描かれたもので、ウサギの生命力が表現されている。

中国郵政のプレスリリースによると、黄のデザインは「自然でウィットに富んだダイナミックなスタイル」であり、青いウサギの絵には「中国人が一致協力して、新しい年の壮大な『青写真』を描くという意味」が込められているという。

しかし、中国のツイッターにあたる微博(ウェイボー)で、中華圏のマカオや香港の卯年記念切手とこの切手を比較した画像が投稿されるや否や、「ぜんぜんかわいくない」「福じゃなく恐怖を感じる」といった声が噴出。「悪魔に取り憑かれたようで怖い」「気味が悪すぎて見るに堪えない」というコメントもあった。

切手をデザインした黄は、現代美術家・作家として長いキャリアを持ち、高い評価を得ている重鎮だ。その作品は、木版画、水墨画、彫刻、詩、自伝的小説と幅広く、1980年と2016年にも干支記念切手のデザインを手がけている。

現在、北京を拠点に活動している黄は、美術や文学の教育を受けていない独学の作家だ。それにもかかわらず、28歳で中国を代表する美術学校、中央美術学院の教授に抜擢されて版画部門の長になった。作品はニューヨーク近代美術館やサンフランシスコのアジア美術館にも所蔵されている。

さんざんな評判ではあったものの(あるいはあったからか)、鮮やかなブルーのウサギの切手を手に入れようと、郵便局には長蛇の列ができ、オンラインでも完売した。その意味では、将来的には記念切手コレクターに「福をもたらす」可能性もある。2017年のサウスチャイナ・モーニングポストの記事によると、黄がデザインした1980年の申年記念切手の1枚が、オークションで201万元(約30万ドル)という史上最高値で落札されている。(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい