古代ローマ時代の浴場跡から大量の宝石を発見。利用者の落とし物?
イギリス北東部にある、古代ローマ時代の浴場やサウナの排水溝跡から、彫刻が施された半貴石「インタリオ」約30個が見つかった。カーライルの考古学者が発見した。
これを最初に報道した英ガーディアン紙の取材に対し、浴場の発掘調査を率いるフランク・ジェッコは次のように語っている。「当時、指輪の宝石は植物性の接着剤で固定されていましたが、蒸気で接着剤が弱くなったために土台から宝石だけが抜け落ちてしまったようです」
インタリオ(沈み彫り)の技術は、約5000年前のメソポタミアで始まったとされており、柔らかい粘土に刻印を押し込む、サインの用途で使われることが多かった。そして数千年の時を経て、富裕層のファッションアイテムになった。ローマの政治家・作家のキケロは、ローマ人の中には自分の好きな哲学者の肖像画を彫ったインタリオを指輪につけている人がいると書いている。
発掘された宝石の中には、アメジストに女神ヴィーナスを彫ったものや、褐色のジャスパーに柱の横で岩に座っている半人半獣の精霊、サテュロスの像を刻したものがあった。
ジェッコは、「インタリオの大きさは5mmから16mmで、そのような小さいものを彫る職人技に驚かされます」と語る。同様のインタリオは、最近、ロンドンのクリスティーズのオークションで7千560ポンドから3万ポンド(約120万円~500万円)で落札されている。
インタリオが発見された浴場は、有名な遺跡、ハドリアヌスの長城で最も重要な砦のすぐ後ろにあった。この砦には精鋭騎兵隊が駐在しており、皇帝の刻印入りのタイルで装飾されていたことから、かつてこの浴場が「重要で様々な用途を果たしていたことがうかがえる」とガーディアン紙は伝えている。(翻訳:編集部)
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