行方不明から100年、祭壇画がついに帰還──オークション直前にスペイン警察が押収
約1世紀にわたり所在がわからなくなっていたルーカス・ヴァルデスによる祭壇画2点が、スペイン国家警察の捜査を経て、セビーリャの教会に返還された。

およそ1世紀にわたり所在がわからなくなっていた2点の祭壇画が、スペイン国家警察による捜査を経て、セビーリャの教会に返還された。発端は2025年9月、「尊者司祭施療院」付属礼拝堂にかつて展示されていた2作品がオークションのカタログに記載されているとして、同教会の大司教区が警察に通報したことだった。
スペイン国家警察の歴史遺産犯罪班による調査で、これらの祭壇画は17世紀末にバロック画家ルーカス・ヴァルデスが手がけた真作と確認された。5月20日には、松板に描かれた油彩画2点の返還式が施療院教会で開かれ、セビーリャ大司教区の聖職者や捜査当局の関係者が出席した。
2点はいずれも旧約聖書の一場面を描いている。一方は、サムソンがかつて仕留めたライオンの口から蜂蜜を取り出す場面、もう一方は、追われる身となったダビデがノブの祭司アヒメレクから聖別されたパンを授かる場面を題材としている。どちらも、17世紀末から18世紀初頭にかけてセビーリャで活動した彫刻家・建築家フランシスコ・デ・バラオナ制作の主祭壇を飾る装飾の一部だった。

2点は1889年まで祭壇に据えられていたが、その後、祭壇の改修にともなって教会本堂に隣接する部屋へ移された。バロック美術を専門とし、後にマドリードのプラド美術館館長も務めた美術史家ディエゴ・アングロ・イニゲスの記録では、1920年代初頭の時点で2点は聖具室に置かれていたという。
しかし、その後1929年に開催された「セビリア万国博覧会」に出品されたのを最後に、2点は所在がわからなくなった。以後は個人の手に渡ったとみられている。警察は作品の確認を進めたうえで、競売にかけられる数日前に2点を押収。さらに関係者の間に入って調整し、出品者側に正当な所有者への返還を促した。セビーリャ大司教区は声明で、次のように述べている。
「ルーカス・ヴァルデスの作品は、大司教区、返還前の所有者、そして警察の協力によって戻ってきました。これにより、信者やセビーリャを訪れる人々が、これらの作品を再び目にできるようになります」