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  • 2023.02.10

今週末に見たいアートイベントTOP5: デイヴィッド・ホックニーetc.「タグコレ 現代アートはわからんね」、中国のダイナミズムを表現する「冷广敏(レン・ガンミン)」展ほか

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

中村裕太|ユアサエボシ 耽奇展覧(ギャラリー小柳)より、(写真左)ユアサエボシ《密閉された瓶》(2022)、(同右)中村裕太《ひよこの水差し》(2022)© Yuta Nakamura / Ebosi Yuasa / Courtesy of Gallery Koyanagi Photo: Keizo Kioku

1. 加藤泉–寄生するプラモデル(ワタリウム美術館)

《無題》(2022)⽊、プラモデル、ソフトビニール、アクリル絵具、ステンレススチール Photo: Kei Okano

コロナ禍に出会った「プラモデル」がヒント。加藤泉の今を知る

国内外で注目を集めるアーティスト、加藤泉。胎児のような、プリミティブな「人がた」をモチーフした作品で知られており、その活動は、絵画、彫刻から音楽活動まで多岐にわたる。本展は、加藤がコロナ禍のステイホーム中に動物や虫のプラモデルを作っていたことからヒントを得て制作した新作を中心に構成されている。

ビンテージプラモデルを木彫にコラージュしたシリーズのほか、加藤が参加しているアーティストバンド、「THE TETORAPOTZ」と「HAKAIDERS」の LPレコードに使われたアートワーク、フランス・ノルマンディー地方のル・アーヴルで行われたアートプロジェクトのために制作した、高さ7mのブロンズ彫刻作品の実物大画像など48点が展示されている。

加藤泉ー寄生するプラモデル
会期:2022年11月6日(日)~2023年3月12日(日)
会場:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前 3-7-6)
時間:11:00 ~ 19:00


2. 中村裕太|ユアサエボシ 耽奇展覧(ギャラリー小柳)

(写真左)ユアサエボシ《密閉された瓶》(2022)、(同右)中村裕太《ひよこの水差し》(2022)© Yuta Nakamura / Ebosi Yuasa / Courtesy of Gallery Koyanagi Photo: Keizo Kioku

2名のアーティストが創り出す「耽奇なる」世界

大正から戦前、戦後の文化と習俗に注目する、1983年生まれの2名による展覧会。中村裕太は日本近代の工芸文化に関心を寄せ、「民俗と建築にまつわる工芸」という視点から陶磁器などの学術研究と作品制作を行なっている。一方、ユアサエボシは1924年に生まれ、1987年に没した架空の画家という設定で、福沢一郎や山下菊二ら、往時のシュルレアリスムに根ざした画家たちの雰囲気をたたえる作品を制作している。

本展のテーマは、2人が古書店で見つけた『耽奇漫録』(1824〜25年)。江戸時代後期に開催された、風変わりな古書画や古器物を持ち寄る「耽奇会」の内容を記録した書物である。中村はこれまでに調査してきた文献を素材として、様々な時代や文化の耽奇的なものを参照した陶器作品、ユアサは骨董市通いをして収集した、耽奇なるオブジェの静物画を展示する。

 中村裕太|ユアサエボシ 耽奇展覧
会期:1月28日(土)~3月31日(金)
会場:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F)
時間:12:00 ~ 19:00 


3. タグコレ 現代アートはわからんね(角川武蔵野ミュージアム)

渡辺豪 アエウム 2009–2012 4Kアニメーション(ブルーレイディスクR)18分 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基金

日本随一のアートコレクターの秘話とコレクションから知る、現代アートを見る楽しさ

ビジネスマンの田口弘が1980年代、キース・へリングの版画に出会ったことをきっかけに始めた現代アートコレクションが、日本を代表する「タグチアートコレクション(タグコレ)」となり、現在は娘の美和が運営に携わっている。

田口自身、「現代アートはわからんね」と言いながらコレクションをはじめ、その魅力にのめり込んでいった。本展は、同コレクションから選りすぐりの現代アート作品と田口のエピソードにより、その追体験をする。出品作家は会田誠田名網敬一奈良美智宮島達男アンディ・ウォーホルデイヴィッド・ホックニーオスカー・ムリーリョほか。

 タグコレ 現代アートはわからんね
会期:2月4日(土)~5月7日(日)
会場:角川武蔵野ミュージアム1Fグランドギャラリー(埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
ところざわサクラタウン内)
時間:10:00 ~ 18:00 ( 金・土は~21:00、入場は30分前まで)


4. 佐藤絵莉香個展「SPACE DRIVER」(下北沢アーツ)

佐藤絵莉香《なんか、寝れないね》(2022)キャンバス、油彩 33.3×24.2cm

大らかに、ユーモラスに描き出す、佐藤絵莉香の“宇宙遊泳”

1996年神奈川県生まれ、2021年にシェル美術賞の学生特別賞を受賞した若手アーティスト、佐藤絵莉香。伸び伸びと大らかな筆致や、懐かしさを感じるカラフルで穏やかな色彩が特徴である。

高校時代は天文部で、現在も天体望遠鏡で星の観察をする宇宙好きの佐藤は、夜中の散歩や、グーグルマップでの検索時に、真っ暗な宇宙に放り出され、ひとりぼっちで彷徨っている感覚を覚えるという。それは、絵の具の間にあるスペース(宇宙)を筆で縦横無尽に彷徨いながら描き進めていく自身の作品制作に似ていると語る。ほのかにユーモア漂う、佐藤の「宇宙遊泳」を楽しんでもらいたい。

佐藤絵莉香個展「SPACE DRIVER」
会期:2月10日(金)~2月26日(日)
会場:下北沢アーツ(東京都世田谷区北沢1-40-9)
時間:13:00 ~ 19:00


5. 冷广敏(レン・ガンミン)「壳,仅如蝉翼一般」(MAHO KUBOTA GALLERY)

レン・ガンミン《迷雾》(2022)ミクストメディア、キャンバス 、 200x150x6cm ©Leng Guangmin / MAHO KUBOTA GALLERY

中国社会のダイナミズムを捉えるアーティストによる、表現の実験場

1986 年中国・山東省生まれのアーティスト、冷广敏(レン・ガンミン)。彼女の作品は、中国社会の文化や経済のダイナミックな変容をポジテ ィブに捉え、伝統的な絵画の手法にとらわれない自由闊達な表現とパーソナルな視点を持つ。

本展のタイトルは、「殻、蝉の羽のごとく」という意味。絵画のルールでは、すべての対象は外殻、あるいは表皮に覆われており、外殻を描くことで表面的にはその対象を描くことができるとされるのに対し、レンの創作は、対象にナイフを入れて解体して中身を理解し、新しい価値と結び付けていく実験場と言える。本展ではさらなる進化を遂げたレンの新作絵画を中心に11 点が展示される。

冷广敏(レン・ガンミン)「壳,仅如蝉翼一般」
会期:2月10日(金)~3月18日(土)
会場:MAHO KUBOTA GALLERY(東京都渋谷区神宮前2-4-7)
時間:12:00 ~ 19:00

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