アート・バーゼル2026出展者発表──来場価値の回復を狙う新施策「Basel Exclusive」を導入
スイス・バーゼルで6月18〜21日(VIPプレビューは16〜17日)に開催されるアート・バーゼル2026が、新施策「Basel Exclusive」の導入を発表した。参加ギャラリーは、展示作品の少なくとも1点を事前プレビュー用のメールに掲載せず、来場者が会場で初めて目にする作品を用意しなければならない。
アートフェア、そしてフェアを中心に動く美術市場に対しては、これまでも多くの批判が向けられてきた。なかでも象徴的なのが、フェアを「会場でリアルタイムに売買が成立する場」と見る一般的なイメージと、実際の売買の進み方とのズレだ。ブースにいち早く足を運んだ顧客が数百万ドル(約数億円)規模の作品を購入する場と思われがちだが、実際には最高額クラスの取引の多くが、開幕前から水面下で準備されている。ギャラリーは開幕の数週間前から、影響力のあるアドバイザーや富裕層のコレクターに事前資料を送付する。そのため、コレクターが会場に足を踏み入れる前に、展示作品をすべて売り切ってしまうディーラーもいる。
1970年にスイスで創設され、現在はマイアミビーチ、香港、パリ、カタールでも毎年フェアを開催しているアート・バーゼルは、スイス・バーゼルで開催される2026年のフェアで、こうした批判をかわすべく新たな試みに乗り出した。「Basel Exclusive(バーゼル・エクスクルーシブ)」と銘打たれたこの取り組みでは、出展ディーラーが、展示作品のうち少なくとも1点を事前プレビュー用のメールに掲載しないと誓約する。誓約の対象は1点から展示作品すべてまで幅があり、会場で初めて目にできる作品を意図的に残す狙いがある。Basel Exclusiveは、6月18〜21日(VIPプレビューは16〜17日)に開催されるアート・バーゼルで初めて導入される予定だ。誓約したギャラリーは会場マップに明記され、対象作品には専用のプレートが掲げられる。
アート・バーゼルの発表によると、メインセクションに出展する232ギャラリーのうち、およそ83%にあたる193軒が参加に同意している。4月にこの構想が初めて発表された時点では170軒だったため、参加ギャラリーは増加している。ガゴシアン、ハウザー&ワース、ペロタンといったメガギャラリーに加え、サディー・コールズHQ、シルバーレンズ、国際画廊といった実力派の中堅ギャラリーも名を連ねている。
事前プレビューの対象外となる作家は約230人にのぼり、現代アートの作家から美術史に名を残す巨匠まで幅広い顔ぶれが含まれる。たとえば、ジャン=ミシェル・バスキア、アレクサンダー・カルダー、ルイーズ・ブルジョワ、パブロ・ピカソ、サイ・トゥオンブリーらの作品が対象となっている。
アート・バーゼルのチーフ・アーティスティック・オフィサー兼グローバル・ディレクターを務めるヴィンチェンツォ・デ・ベリスは、4月にUS版ARTnewsの取材に対してこう語っている。
「私たちはみな、画像の拡散、とりわけ作品画像によって動くデジタル世界に生きています。しかし同時に、実物を直接目にすることの重要性も理解しており、それはアート業界のあらゆる立場の人々に共通して言えることです。だからこそ、私たちは一丸となってこの点を示す必要がありました。バーゼルへ来なければ、特定の作品を実物で見ることができないのだと、人々に改めて思い出してもらう絶好の機会になります」
この動きの背景には、スイス・バーゼルで開催される本家フェアの存在感を守りたいという思惑もあると見られる。2022年に「Paris+ par Art Basel」として始まり、現在はアート・バーゼル・パリに改名したフェアは、開催地そのものの魅力も追い風に、近年ではアート・バーゼルを代表する主要フェアとしての地位を強めつつある。US版ARTnewsが4月に公開した記事でも指摘されているように、バーゼルはトップコレクター、とりわけアメリカの富裕層をスイスの都市まで呼び込む力を以前ほど保てていないように見える。だからこそ、会場に来なければ見られない作品を用意し、現地を訪れた人々に新たな「希少性」を与えることは、コレクターたちを呼び戻すための有効な一手となるかもしれない。(翻訳:編集部)
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