アート・バーゼル・パリ2026出展者発表──史上最多のジョイントブース、存在感増すアジア勢

アート・バーゼル・パリ2026の参加ギャラリーが発表された。前年比9%成長を記録したフランスのアート市場を背景に、新ディレクター、カリム・クリッパのもと、41の国と地域から200超のギャラリーがグラン・パレに集結。約30のギャラリーが初参加を果たすほか、フェア史上最多となる12組のジョイントブース展示が実現する。

Art Basel Paris 2025
アート・バーゼル・パリ2025の様子。Photo: Courtesy of Art Basel

2026年10月23〜25日(「Avant-Première」は10月20日、VIPプレビューは10月21〜22日)に開催されるアート・バーゼル・パリ2026の出展者が発表された。5回目を迎える今回は、カリム・クリッパ(Karim Crippa)を新ディレクターに迎え、41の国と地域から200超のギャラリーが「Galeries」「Emergence」「Premise」の3セクターにわたって参加。約30ギャラリーが初参加を果たす。

クリッパは、「アート・バーゼル・パリは、版を重ねるごとにこの街の文化の一部となってきた。グラン・パレ内のプレゼンテーションの質だけでなく、その周辺で展開される活動──美術館の展覧会、学際的な出会い、対話──こそが、パリのフェア・ウィークを類いまれな文化的・市場的な瞬間にしている」と語っている。

アート・バーゼル・パリの新ディレクターに就任したカリム・クリッパ(Karim Crippa)。Photo: Courtesy of Art Basel

フランスのアート市場が復調

フランスのアート市場はいま、回復軌道にある。アート・バーゼルとUBSによる「グローバル・アート・マーケット・レポート2026」によれば、2025年のフランスにおける売上高は2年間の縮小を経て前年比9%増となり、2019年の水準を上回るまでに回復した。フランスは世界のアート市場で8%のシェアを占め、EU最大の市場として、EU全体の取引額の半分以上を担う。

そんな中で開催される今回のアート・バーゼル・パリでは、60超の参加ギャラリーがフランスに拠点を構えており、パリのギャラリーエコシステムの厚みを示している。テンプロン(Templon)、シャンタル・クルーゼル(Chantal Crousel)、ガルリー・ルロン(Galerie Lelong)、ペロタン(Perrotin)、アルミン・レッヒ(Almine Rech)、モール・シャルパンティエ(mor charpentier)、ガルリー・ジョスランヌ・ウォルフ(Galerie Jocelyn Wolff)など、パリ拠点の老舗ギャラリーが参加するほか、「Emergence」セクションを経て「Galeries」セクターへ昇格したプトリン(Petrine/パリ、デュッセルドルフ)とザ・ピル(The Pill/イスタンブール、パリ)もデビューを果たす。ガゴシアン(Gagosian)、ハウザー&ワース(Hauser & Wirth)、デイヴィッド・ツヴィルナー(David Zwirner)、ホワイトキューブ(White Cube)、タデウス・ロパック(Thaddaeus Ropac)、マリアン・グッドマン・ギャラリー(Marian Goodman Gallery)といった国際的な大手ギャラリーも引き続き参加する。

史上最多のジョイントブースとアジア勢に注目

今回の見どころのひとつが、フェア史上最多となる12組のジョイントブース展示だ。商業ギャラリーモデルの実験の場としてのアート・バーゼル・パリならではの取り組みで、注目の組み合わせとしては以下が挙げられる。

ミサコ&ローゼン(Misako & Rosen/東京)とイザベラ・リッター(Isabella Ritter/パリ)は、杉原玲那(Reina Sugihara)、エリカ・ヴェルツッティ(Erika Verzutti)、廣直高(Naotaka Hiro)、題府基之(Motoyuki Daifu)、ハナ・ミレティチ(Hana Miletić)、ハンネ・リッパード(Hanne Lippard)、ブリラント・ミラジミ(Brilant Milazimi)による彫刻的実践を横断するジョイントプレゼンテーションを行う。ティナ・キム・ギャラリー(Tina Kim Gallery/ニューヨーク)とタケニナガワ(Take Ninagawa/東京)は、パシタ・アバド(Pacita Abad)、キム・リム(Kim Lim)、スキ・ソッキョン・カン(Suki Seokyeong Kang)、イ・シンジャ(Lee ShinJa)、ハ・チョン・ヒョン(Ha Chong-Hyun)、キム・チャンヨル(Kim Tschang-Yeul)といったアジア各地の近現代美術の実践を通じた通文化的な軌跡をたどる。

また、マイケル・ローゼンフェルド・ギャラリー(Michael Rosenfeld Gallery/ニューヨーク)とジェフリー・ダイチ(Jeffrey Deitch/ロサンゼルス、ニューヨーク)は、ボーフォード・ドレイニー(Beauford Delaney)のパリ時代を軸に、アルテロンス・ガンビー(Alteronce Gumby)との世代を超えた対話を展開。クラウパ・タスカニー・ツァイドラー(Kraupa-Tuskany Zeidler/ベルリン、ミュンヘン)とレイヤー(Layr/ウィーン)は、アンナ・ウデンバーグ(Anna Uddenberg)とフランツ・ウェスト(Franz West)を介した身体、彫刻、コントロールの体系についての世代間的考察を提示する。

アジアからは、アンテナ・スペース(Antenna Space/中国)、バンク(Bank/上海、ニューヨーク)、エンプティ・ギャラリー(Empty Gallery/香港)、クッジェ・ギャラリー(Kukje Gallery/ソウル、釜山)、ミサコ&ローゼン(Misako & Rosen/東京)、P21(ソウル)、ロー(ROH/ジャカルタ)、タカ・イシイギャラリー(Taka Ishii Gallery/東京、京都、前橋)、タケニナガワ(Take Ninagawa/東京)、ビタミン・クリエイティブ・スペース(Vitamin Creative Space/北京、広州)の10ギャラリーが参加予定。

各セクターのハイライト

アート・バーゼル・パリ2025の様子。Photo: Courtesy of Art Basel

「Galeries」では180超のギャラリーが近現代・戦後・コンテンポラリーアートを紹介する。今回新たに参加する11ギャラリーには、イザベラ・リッター(Isabella Ritter/パリ)、チャートリュデ(ChertLüdde/ベルリン)、エンプティ・ギャラリー(Empty Gallery/香港)、ルクセンブルク+Co.(Luxembourg + Co./ロンドン、ニューヨーク)、リーナ・スポーリングス・ファインアート(Reena Spaulings Fine Art/ニューヨーク)などが名を連ねる。

「Emergence」では、グラン・パレのメインナーヴを見下ろすバルコニーに16のソロブースが展開される。今回は12の初参加ギャラリーを含む大幅な刷新が図られており、多くがフェアのために新たにコミッションされた作品で構成。注目は、ロ・ブルット・スタール(Lo Brutto Stahl、パリ、バーゼル)のクレマンティーヌ・アドゥ(Clémentine Adou/1988年生まれ)、マリポサ(Mariposa/ロサンゼルス、ニューヨーク)のドレイク・カー(Drake Carr/1993年生まれ)、グリーン・アート・ギャラリー(Green Art Gallery/ドバイ)のアスマ・ベルハマル(Asma Belhamar/1988年生まれ)など。

「Premise」では、歴史的・研究主導型のアプローチによる9の展示が実施される。ガルリー・エリック・ムーシェ(Galerie Eric Mouchet)はロベール・ミシェル(Robert Michel)のワイマール・ダダ期の作品約20点を、パヴェック(Pavec)はジャクリーヌ・ランバ(Jacqueline Lamba)の「Sources」シリーズを前年に続き出品。ガルリー・ズロトウスキー(Galerie Zlotowski)はヴェラ・モルナール(Vera Molnár)のコンピューターアートの概念的基盤を探る。国際ギャラリーからは、オルニー・グリーソン(Olney Gleason/ニューヨーク)はロバート・インディアナ(Robert Indiana)とエルズワース・ケリー(Ellsworth Kelly)の作品を、アマンダ・ウィルキンソン・ギャラリー(Amanda Wilkinson Gallery/ロンドン)はデレク・ジャーマン(Derek Jarman)の「ブラック・ペインティングス」シリーズを紹介する。

パブリックプログラムと周辺イベント

フェアのパブリックプログラムは5回目の開催となり、ミュウミュウが引き続き公式パートナーを務める。トークシリーズ「Conversations」はグラン・パレのオーディトリアムに戻り、アート・カルチャー界の第一人者たちによる対談が無料で公開される(プログラム詳細は近日発表予定)。

さらにフェア期間中には、パリ各所でも重要な展覧会が開催される。オルセー美術館での「メアリー・カサット:自立の選択(Mary Cassatt: Le choix de l'indépendance)」「ジェニー・ホルツァー:私は見た(Jenny Holzer: J'ai vu)」、オランジュリー美術館での「モネ:時を描く(Monet: peindre le temps)」、ピカソ美術館での「トータル・シュヴィッタース(Total Schwitters)」、パリ市立近代美術館での「ケリー・ジェームス・マーシャル:歴史(Kerry James Marshall: The Histories)」のほか、ブルス・ドゥ・コメルスでは写真発明200周年を記念した大型グループ展「Remember Me」(70作家以上、約700点)が開催される。

また、「Oh La La!」は10月23〜24日に実施。これはアート界以外のゲストを招き、参加ギャラリーの展示をその視点で丸ごと掛け替えるという、アート・バーゼル・パリ独自の企画だ。2025年はファッションジャーナリスト・映像作家のロイック・プリジャン(Loïc Prigent)がその役を担った。2026年のゲストとテーマは後日発表される。

*全参加ギャラリーリストはこちら

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