ルシアン・フロイドを代表する裸婦像、75億円で競売へ──モデル本人が当時を語る

ルシアン・フロイド(1922-2011)の代表作《ライオンの絨毯のそばで眠る(Sleeping by the Lion Carpet)》(1995-96)が、6月24日にサザビーズロンドンで開催されるオークションに出品される。予想最高価格は75億円。

ルシアン・フロイド《ライオンの絨毯のそばで眠る》(1995-96)Photo: Courtesy Sotheby's

ルシアン・フロイドの代表作《ライオンの絨毯のそばで眠る(Sleeping by the Lion Carpet)》(1995-96)が、6月24日にサザビーズロンドンで開催されるオークションMasterpieces from the Lewis Collection」に出品される。予想落札価格は2500万~3500万ポンド(約53億5000万円~74億9000万円)。

このオークションでは、イングランド・プレミアリーグのサッカークラブ、トッテナム・ホットスパーの元オーナーとして知られるイギリス人実業家ジョー・ルイスのコレクションから、モディリアーニ《首飾りをした裸婦(Nu assis au collier)》(1917)をはじめとする名品50ロットが競売にかけられる

《ライオンの絨毯のそばで眠る》は、ロンドンの公共職業紹介所で給付担当職員として働いていたスー・ティリーを描いた4点のカンバス作品からなる「Benefits Supervisor」シリーズの最後を飾る作品だ。フロイドがティリーと出会ったのは1993年。2人の共通の知人で、ファッションデザイナー兼パフォーマンスアーティストのリー・バウリーの紹介がきっかけだった。

バウリー自身もフロイドの代表的なモデルとして知られ、すでに数々の印象的な裸体画のモデルを務めていた。それらの作品では、骨格の上に重なる肉体の起伏が厚塗りの絵の具によって克明に描き出されている。

フロイドは制作にじっくり時間をかけることで知られ、モデルたちは何日も、ときには何カ月にもわたって長時間スタジオでポーズを取り続けた。そのため多くのモデルは横たわるか座った姿で描かれており、なかには眠り込んでしまう者もいた。夜に働き、日中フロイドのモデルを務めていたティリーもその1人だった。

ティリーは、6月10日に公開されたBBCラジオ・サセックスのインタビューで、オークションの過熱ぶりについて「驚いています。本当に起きていることだとは、とても信じられません」と語った。

「みんなが痩せたがる世界なんて退屈」

現在はイーストサセックス州セント・レナーズに暮らすティリーは、フロイドのモデルを務めた経験を「とても心地よかった」と振り返りつつ、「私はいわゆるヌーディストではありません」と、どこか愉快そうに付け加えている。だが、劇的な陰影をまとった肉体の襞を容赦なく描き出すフロイドの表現を受け入れるまでには、それなりの時間がかかったようだ。ティリーはBBCにこう語っている。

「今ではもう慣れました。私は私です。みんなが棒のように痩せたがる世界を想像してみてください。退屈じゃありませんか?」

一方のフロイドは人体への執着について、「皮膚は無生物ではない。生きた素材なのだ」と端的に説明している。

サザビーズは《ライオンの絨毯のそばで眠る》を「ティリーを描いた記念碑的4部作における、最後にして最も野心的な作品」と位置づけ、その市場への登場自体が極めて稀であることを強調している。同シリーズの作品が最後に競売にかけられたのは2015年で、このときは3590万ポンド(現在の為替で約77億円)で落札され、作家の最高額記録を打ち立てた。4部作はその歴史の大半を通じて、ロマン・アブラモビッチをはじめとする著名コレクターの個人コレクションに収蔵されてきた。

ティリー自身が望むのは、本作が「お金のためではなく、作品そのものを心から愛してくれる人」の手に渡ることだという。そして、「せめて美術館に寄贈されたらいいのに。そうすれば、みんながこの作品を見ることができますから」と付け加えた。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい