盗難から5年、17世紀フランドル絵画を回収──オークション出品前の調査で発覚

サザビーズに持ち込まれた17世紀のフランドル絵画が、出品前のデータベース照合で盗難品と判明した。2020年にカナダの個人宅から盗まれた本作は、回収を経て約1400万円で落札された。

回収された《Interior of a Collector’s Cabinet: An Allegory of Sight》(1660年頃)。Photo: Courtesy of Art Loss Register
回収された《Interior of a Collector’s Cabinet: An Allegory of Sight》(1660年頃)。Photo: Courtesy of Art Loss Register

盗難美術品のデータベースを運営する「アート・ロス・レジスター」は6月23日、2020年9月にカナダの個人宅から盗まれた17世紀のフランドル絵画を回収したと発表した。

行方不明となったこの絵画は、盗難直後に警察へ通報され、アート・ロス・レジスターのデータベースに登録されていた。盗み出されたのは、ヤン・ファン・ケッセルとアブラハム・ウィレムセンによる《Interior of a Collector’s Cabinet: An Allegory of Sight》(1660年頃)だ。2023年10月、サザビーズオークション出品に向けた事前調査の一環として同機関の盗難品データベースと照合を行った結果、2020年に被害に遭った作品と一致することが確認されたという。

出品者はサザビーズに対し、本作は2015年にスイスのオークションで購入された作品だと説明していた。この来歴は、盗難被害に遭った所有者が同年のオークションで本作を取得した事実と一致していた。(編注:一方、2020年の盗難後にどのような経緯で出品者の手に渡ったのかは示されていない。)

アート・ロス・レジスターによれば、出品作品が盗難品と一致することが判明した後、出品者からは約1年にわたって回答がなかったという。その後、出品者側との協議がまとまり、作品は無事に回収された。同機関は、保険会社AXA XLを通じて本作を回収したと説明している。AXA XLはすでに元の所有者へ保険金を支払っていたため、盗難品が市場に現れた際には、作品の返還を求める権利を有していた。

回収された絵画は昨年8月にサザビーズへ送られ、今年2月にニューヨークで開催されたオークション「Master Paintings & Sculpture from Four Millennia Part II」に出品された。落札予想価格は3万〜4万ドル(最近の為替レートで約485万〜646万円)とされていたが、高値予想の2倍を超える8万8900ドル(同約1438万円)で落札された。アート・ロス・レジスターの回収部門ディレクターを務めるジェームズ・ラトクリフは、声明のなかで次のように語っている。

「今回の回収は、盗難作品を私たちのデータベースに登録しておくことの意義に加え、アート市場における事前調査の重要性を示すものです。本件でサザビーズが示した真摯な対応と協力に、深く感謝しています。同社の尽力により作品は返還され、保険会社にとっても満足のいく売却につながりました」

US版ARTnewsは本件についてサザビーズにコメントを求めているが、記事公開時点で返答は得られていない。一方、サザビーズはオークションカタログのなかで、この絵画について次のように解説している

「本作は、17世紀半ばのアントワープにおいて、コレクション、真贋を見極める鑑定眼、視覚を通じた知の探求に対し、フランドルの人々が深い関心を寄せていたことを示す、緻密に構成されたクンストカマー(*1)だ。視覚の寓意として描かれた画面には、数々の絵画や彫刻、科学機器、貴重な工芸品、自然物がまばゆいばかりに並び、壮大な目録のような広がりを見せている」

*1 ドイツ語やオランダ語で「美術の部屋」を意味し、16〜17世紀のヨーロッパの王侯貴族や学者たちが、美術品や珍しい自然物、科学機器などを一堂に集めて展示した空間のこと。

また同社によれば、画中に描かれた彫刻、女神ユノ、プットーの姿はウィレムセンが手がけた。一方、「洗練された小品のキャビネット絵画や静物画で高く評価されていた」ファン・ケッセルは、それ以外の細部を描き込んだという。カタログの解説は、次のように締めくくられている。

「両アーティストは共同で、『見ることの喜び』に対する深い学識に裏付けられた、極めて豪華な一作を作り上げた。それはアントワープの豊かな芸術文化を讃えると同時に、鑑賞者をコレクターの鋭い眼差しへと誘うものでもある」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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