4万年前の極小・精巧な「鳥の彫刻」を洞窟で発見──羽毛まで彫り込まれた世界最古級の芸術

ドイツ南西部のホーレ・フェルス洞窟で、約4万年前にマンモスの牙から作られた2点の鳥の小像が見つかった。親指の爪ほどの小像には、羽根や目などが精巧に刻まれており、初期の現生人類の高い観察力と表現力を伝えている。

ホーレ・フェルス洞窟で発見された鳥の彫刻。Photo: Mohsen Zeidi, University of Tübingen

ドイツ南西部のシュヴァーベン・ジュラにあるホーレ・フェルス洞窟で、約4万年前にマンモスの牙から作られた2点の鳥の小像が発見された。Live Scienceが伝えた。

発見したのは、テュービンゲン大学の考古学研究チーム。2点は2025年、オーリニャック文化期(約4万3000~3万3000年前)の地層から、約1.5メートル間隔の場所で出土した。いずれも親指の爪ほどの大きさで、重さはそれぞれ約1.3グラムと0.7グラムしかない

一方は、うずくまって休んでいる、あるいは抱卵している鳥を表したとみられる。頭を体に引き寄せ、脚をたたんだような姿勢が特徴だ。もう一方は、翼を広げ、首を伸ばしている。飛翔や着水、威嚇、求愛の際の誇示行動などを表現した可能性がある。

どちらも鳥の種類は特定されていない。研究チームは、ヨーロッパオオライチョウなどのキジ科の鳥や猛禽類を候補に挙げている。周辺の発掘現場からは、ライチョウ類の骨もたびたび見つかっている。

ホーレ・フェルス洞窟では、オーリニャック文化期に初期の現生人類が暮らしていた。この時期には人類の創造活動が大きく発展し、同洞窟を含む南ドイツの6つの洞窟から、女性像や動物の彫刻、楽器、装身具などが出土している。これらの洞窟群は「シュヴァーベン・ジュラの洞窟群と氷河期の芸術」として、2017年にユネスコの世界遺産に登録された

ホーレ・フェルス洞窟で発見された鳥の彫刻。Photo: Mohsen Zeidi, University of Tübingen
ホーレ・フェルス洞窟で発見された鳥の彫刻。Photo: Mohsen Zeidi, University of Tübingen
発掘調査のようす。Photo: Mohsen Zeidi, University of Tübingen

今回の小像は、ヨーロッパに到来した初期の現生人類が残した最古級の造形作品であり、芸術が当時の暮らしで重要な役割を担っていたことを示す資料となる。発掘調査を率いるテュービンゲン大学の考古学者ニコラス・コナードは、7月29日に発表された声明で、次のように述べている。

「これらの小像は、世界最古級の芸術を生み出した彫刻家たちが、鳥を多様かつ非常に繊細な形で表現できたことを示しています。また、特定のモチーフが特定の遺跡に結び付いていた可能性もあります」

翼を広げた鳥は、小さいながらも翼には羽毛を示す平行線が刻まれ、くちばしも明瞭に表現されている。うずくまった鳥にも、丸い目などの細部が丁寧に彫り込まれている。

大きな謎は、こうした小像がホーレ・フェルス洞窟の住民にとって、どのような意味を持っていたのかという点だ。個人が携帯する護符だった可能性のほか、特定の集団への帰属意識を示す象徴だった可能性も考えられている。

ホーレ・フェルス洞窟では25年前にも水鳥を表した精巧な小像が発見されており、今回の2点を合わせると、同洞窟で見つかった鳥の小像は計3点となる。一方、世界遺産地域内で氷河期の彫刻が出土しているほかの3遺跡では、マンモスやホラアナライオン、野生馬などの小像は見つかっているものの、鳥を表した作品は確認されていない。

2点の小像は、ブラウボイレン先史・氷河期美術博物館で開催中の特別展「Feather light, research heavy: Discover the miniature birds in Ice Age Art(羽のように軽く、研究課題は重く──氷河期美術の小さな鳥を発見)」で、2027年4月4日まで展示されている。

同館の館長シュテファニー・ケルブルは、鳥とこの地域との深い関わりについて、次のように語っている。

「この土地は古くから、多種多様な鳥の生息地でした。現在では、近隣のシュミーヒェン湖がヨーロッパの鳥類保護区に指定されています。4万年前にも、鳥は人々の身近にいました。さえずりで一日の始まりを告げ、南へ渡ることで季節の変化を知らせ、群れが一斉に鳴くことで危険を伝えました。人々は骨笛を使い、その鳴き声をまねることもできたでしょう。こうした魅力的な生き物を、象牙の中に生き生きと表現していたことは、実にすばらしいことです」

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