フリーダ・カーロ作品の国外管理は「違憲」──美術関係者がメキシコ政府を提訴

メキシコ近代美術屈指のゲルマン・コレクションをめぐり、管理をスペイン側財団に委ねる協定に批判が集まっている。美術関係者らは違憲だとして、メキシコ政府などを相手取り訴訟を起こした。

ゲルマン・コレクションに所蔵されているフリーダ・カーロの作品。Photo: Chandan Khanna/AFP via Getty Images
ゲルマン・コレクションに所蔵されているフリーダ・カーロの作品。Photo: Chandan Khanna/AFP via Getty Images

フリーダ・カーロをはじめとする、20世紀メキシコ美術屈指のコレクションを有するゲルマン・コレクションをめぐり、メキシコ政府とスペインのサンタンデール銀行が関わる管理協定に、メキシコ国内の文化関係者から強い反発が起きている。

コレクション売却が波紋

300点に及ぶこのコレクションは、1940年にメキシコへ移住したユダヤ系映画プロデューサーのジャック・ゲルマンと、妻のナターシャによって築かれた。1998年にナターシャが死去した後、コレクションの行方は長らく明らかになっていなかった。その後、遺言をめぐる争いを経て、ニューヨークの美術商ロバート・リットマンの管理下に置かれ、2023年にはセメント事業で財を成したメキシコの実業家一族、サンブラーノ家にコレクションの大半が売却されたことが判明した。

そして今年1月には、スペインの金融大手サンタンデール銀行、サンブラーノ家、メキシコ国立美術・文学研究所(INBAL)が、コレクションの管理をサンタンデール財団に委ねる長期協定を結んだ。これに伴い、コレクションは「ゲルマン・サンタンデール・コレクション」に改称されている。メキシコ近代美術を代表する作品群がスペイン側の財団が管理することを受け、地元の美術関係者たちは、文化遺産を保護する国内法に抵触すると主張している

こうした批判に対し、INBALは「これほどの規模のコレクションの買い取り費用を、公的資金だけで賄うことは難しい」と説明している。批判が相次ぐなか、メキシコ政府はコレクションを2028年にメキシコ国内へ戻すと発表したが、それでもゲルマン・コレクションをめぐる反発は収まっていない。

抗議団体は「官民の不適切な癒着」と糾弾

反発を主導してきたのが、アーティストや批評家、歴史家らで構成されている抗議団体「ゲルマン・コレクションを守る会(Defendamos la Colección Gelman)」だ。サンタンデール銀行とメキシコ政府への批判を続けてきた同団体は7月1日に声明を発表し、コレクションの管理・移管に関する正式な調査を改めて要求するとともに、銀行と政府の双方を提訴したことを明らかにした。

メキシコ・シティの裁判所に提出された訴状には、サンタンデール銀行とINBALの行為は「違憲」だと記されている。また、同団体の広報担当者はUS版ARTnewsの取材に対し、今回の訴訟を「今後予定されている法廷闘争の第一歩」と位置づけている。

声明では訴状の具体的な内容には触れていないが、抗議団体はコレクションの管理をめぐる一連の手続きを官民の不適切な癒着とみなし、「メキシコの芸術的遺産は、行政の都合や個人の利益ではなく、憲法と法律によって守られるべきだ」と訴えている。

メキシコ政府所蔵のカーロ作品はたった7点

その反発の背景には、コレクションそのものの重要性がある。ゲルマン・コレクションには、ダビッド・アルファロ・シケイロス(David Alfaro Siqueiros)やディエゴ・リベラ、ルフィーノ・タマヨら、メキシコ近代美術を代表する作家の作品が含まれている。また、メキシコ政府が所蔵するカーロ作品は7点にとどまる一方、同コレクションには彼女の作品が10点収蔵されている。こうした重要作を多数含むことから、抗議団体はコレクションの意義を訴え、声明に次のように記している。

「この議論を通じて、明確な対立構造が浮かび上がりました。一方にいるのは、メキシコ政府と世界最大級の金融機関、そして私的利益を追求する人々です。もう一方にいるのは、政治的権威や資金力をもたない歴史家、弁護士、ジャーナリスト、アーティスト、コレクター、そして多くの市民です。私たちは、法的問題の調査や公文書の精査、議員や美術館、文化機関との対話、そしてこのコレクションがなぜ重要なのかを説明するために、数え切れないほどの時間を費やしてきました。それは名声や報酬を求めたからではなく、法の支配とメキシコの芸術的遺産には守るべき価値があると信じているからです」

さらに抗議団体は、個人コレクターの没後に所蔵品が一般公開される例を引き合いに、ゲルマン・コレクションを公開するための常設展示スペースの設置を求めている。

なお、US版ARTnewsはサンタンデール銀行とINBALの広報担当者にコメントを求めたが、返答は得られていない。(翻訳:編集部)

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