フリーダ・カーロ大規模展、前売り券4万枚突破──テート・モダン史上最多を更新

フリーダ・カーロの軌跡と影響力に迫る大規模展が、ロンドンのテート・モダンで開催される。開幕前から前売り券は4万枚を超え、同館史上最多の販売記録を更新した。

ロンドンのブラックフライアーズ駅近く、テムズ・パスに掲出された、テート・モダンの展覧会「Frida: The Making of an Icon」の広告。Photo: Kevin Lake, courtesy Tate Modern
ロンドンのブラックフライアーズ駅近く、テムズ・パスに掲出された、テート・モダンの展覧会「Frida: The Making of an Icon」の広告。Photo: Kevin Lake, courtesy Tate Modern

ポップスの女王マドンナが作品をコレクションし、オークションでは女性アーティストの最高額記録を塗り替えた。さらにはネットフリックスで伝記シリーズの製作が進められているほか、オペラの題材にもなる画家、それがフリーダ・カーロだ。

そんなメキシコを代表する作家に、またひとつ注目すべき記録が加わった。ガーディアン紙によると、ロンドンのテート・モダンで6月25日に開幕する展覧会「Frida: The Making of an Icon」の前売り券(一般は25ポンド)販売数が4万1000枚に達し、同館の過去最多を更新したという。これは、2017年に開催されたデイヴィッド・ホックニー展の3万2000枚を上回る数字だ。テート・モダンの暫定館長キャサリン・ウッドは、同紙の取材に対して「販売枚数にかなり驚いています」と語っている。

この展覧会は、カーロがどのように世界的なアイコンとなり、同世代や後続のアーティストたちに影響を与えてきたのかを掘り下げる初の大規模展。ヒューストン美術館との共同企画による本展では、カーロの作品30点以上に加え、ドキュメンタリー写真や遺品、さらに彼女から深い影響を受けたアーティストたちの作品も紹介される。

フリーダ・カーロ《Untitled (Self-portrait with thorn necklace and hummingbird)》(1940) Photo: Courtesy Tate Modern
フリーダ・カーロ《Untitled (Self-portrait with thorn necklace and hummingbird)》(1940) Photo: Courtesy Tate Modern

展示の目玉には、カーロの画業を代表する《Self-Portrait (With Velvet Dress)》(1926)や《Self-Portrait with Loose Hair》(1938)といった自画像が含まれる。テート・モダンは、これらの作品について、「彼女はメキシコの伝統、クィアとしてのセルフイメージ、フェミニズムの理想、そして障がいをもつ女性としての自身の経験を、ありのままに肯定し表現している」と説明している。また、夫でありメキシコ壁画運動の巨匠でもあったディエゴ・リベラの作品も展示され、1935年頃に描かれた《Portrait of Frida Kahlo》が出品される。

カーロ自身はシュルレアリストというレッテルを拒んでいたが、同運動の芸術家たちは彼女を受け入れており、同運動の創始者アンドレ・ブルトンは、彼女を「独学のシュルレアリスト」と評している。アメリカで同運動を支援したニューヨークのジュリアン・レヴィ・ギャラリー(Julien Levy Gallery)は、1938年に彼女の個展を開催。その後、ブルトンはカーロをパリでの展覧会に招いた。本展では、このパリ展を機にフランス国家が買い上げた自画像《The Frame》(1938)をはじめ、《Diego and Frida》(1929)、《Survivor》(1938)、《Memory (The Heart)》(1937)、《Girl with a Death Mask》(1938)なども展示される。

森村泰昌《An Inner Dialogue with Frida Kahlo (Hand Shaped Earring)》(2001) Photo: © Yasumasa Morimura; Courtesy of the artist, Luhring Augustine, New York and Yoshiko Isshiki Office, Tokyo
森村泰昌《An Inner Dialogue with Frida Kahlo (Hand Shaped Earring)》(2001) Photo: © Yasumasa Morimura; Courtesy of the artist, Luhring Augustine, New York and Yoshiko Isshiki Office, Tokyo

本展では、カティ・ホルナやレオノール・フィニなど、シュルレアリスムと近い関心を共有した作家たちの作品も紹介される。死や夢、仮面、骸骨といったイメージを通じて、カーロの作品と同時代の芸術運動との響き合いを浮き彫りにする構成となっている。

1954年にカーロが亡くなった後、1960年代には、彼女はアメリカのチカーノ運動を象徴する存在として受け止められるようになった。1980年代から90年代にかけては、ナウム・B・ゼニルやジョルジーナ・キンタナといったメキシコのアーティストたちが、カーロに触発されながら、メキシコらしさを象徴するイメージや大衆的な伝統を批判的に再構築した。彼女の影響はメキシコにとどまらず、ジュディ・シカゴ、アナ・メンディエータ、森村泰昌キキ・スミスらの作品にも見て取れる。ヘイデン・エレーラが1983年に発表した伝記が25以上の言語に翻訳されたことも、カーロの世界的な人気を後押しした。

その一方で、本展はカーロの作品や劇的な生涯が商品イメージとして消費されてきた現象、いわゆる「フリーダ・マニア」にも目を向ける。現在では、彼女のイメージがテキーラや香水のプロモーションに使われているほか、カーロをモデルにしたバービー人形まで発売されている。こうした過度な商業化は、議論も呼んできた。カーロの大姪にあたるクリスティーナ・カーロは、この状況を「諸刃の剣」と呼び、「偉大な芸術家というフリーダの本当の姿が歪められている」と懸念を示している。

展覧会「Frida: The Making of an Icon」は、ロンドンのテート・モダンで2026年6月25日から2027年1月3日まで開催される。(翻訳:編集部)

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