アートは再犯の連鎖を断ち切れるか──イギリスの刑務所で広がる社会復帰プロジェクト
イギリスの慈善団体が受刑者に画材を提供し、完成した作品をオンラインで販売する取り組みを続けている。創作と販売の経験を通じて、受刑中のウェルビーイングや出所後の社会復帰を支える試みだ。
イギリスの慈善団体「Alabaré」は、ホームレス状態にある人々への住宅・生活支援に取り組むと同時に、受刑者に美術作品を制作・販売する機会を提供し、受刑中のウェルビーイングと出所後の社会復帰を支える「Prison Art Project」を展開している。同プロジェクトは、ウィルトシャー州のアールストーク刑務所やドーセット州のザ・ヴァーン刑務所をはじめ、イングランドとウェールズの刑務所・少年院37施設に広がっている。
「Prison Art Project」の参加者は、提供されたアクリル絵具、鉛筆、水彩絵具、パステルなどを収めた画材セットを使って最大4点の作品を制作し、完成作品はオンライン販売される。販売収益の50%は作者に渡り、残りは新たな画材の購入費に充てられるという。
この取り組みの前身は、1968年に始まった「Burnbake Prison Art Project」だ。芸術を通じて受刑者や出所者の社会復帰を支えてきた活動は、その後、Alabaréに引き継がれ、現在のプロジェクトへと発展した。
プロジェクト責任者のローラ・ジョイはBBCの取材に対し、作品づくりには社会復帰につながる意義があり、参加者がより良い選択をする後押しにもなると説明した。一方、刑務所の資金不足や過密化により、美術を学ぶ機会が十分にない施設もあるとした上で、次のように語った。
「参加者の作品が刑務所の外でも見てもらえることをうれしく思います。作品の多くには驚くような個人的な物語が込められ、ふだんは見えない世界観が映し出されています」
イギリス政府の統計によると、住居を確保できないまま社会に戻る出所者は全体の13%、月に約1000人に相当する。Alabaréは、受刑中にPrison Art Projectを通じて参加者が利用できる住宅支援や生活・精神面のサポートに関する情報を伝えることで、出所後に助けを求めやすくなると説明している。
専用のオンラインショップでは、新作が届くたびに掲載内容が更新される。ジョイによると、自分の作品が売れる経験は作者の自信につながり、創作を続ける意欲を高めるという。ジョイは、プロジェクトの意義について次のように語った。
「Alabaréの使命はホームレス状態が繰り返される状況を断ち切ることですが、このプロジェクトには犯罪や再犯の連鎖を断つ可能性もあります。オンラインショップでの一つひとつの購入が、作者の人生を変えるきっかけになり得ます」