山火事テーマの作品、本物の山火事で消失寸前──作家は「悲しくシュール」

イタリア・シチリア島で開催中の屋外写真展で、山火事の被害をテーマにした作品が、実際の山火事によって焼失寸前となった。この皮肉な現実により、作品が問いかける気候危機があらためて浮き彫りとなった。

シチリア島ジベッリーナで展示された、ステファノ・チェリオによる山火事をテーマにした写真インスタレーション。Photo: Courtesy of the Artist, Stefano Cerio
シチリア島ジベッリーナで展示された、ステファノ・チェリオによる山火事をテーマにした写真インスタレーション。Photo: Courtesy of the Artist, Stefano Cerio

この夏、シチリア島で開かれた展覧会で、山火事を描いた作品に本物の山火事が迫るという皮肉な出来事が起きた。山火事による荒廃をテーマにしたステファノ・チェリオの屋外写真インスタレーションが、8月9日に発生した実際の山火事で焼失寸前となったのだ。イタリアのアートメディア、アルトリブネ(Artribune)が報じた。

「悲しく、シュールで、不本意なパフォーマンスでした」

チェリオはインスタグラムでそう綴っている。

消防隊は、ジベッリーナの町へ続く道路沿いに設置された7点の大型パネルの数メートル手前まで迫った炎を食い止めることに成功した。火災後に撮影されたスマートフォンの写真には、町の入口近くに設置された作品群を取り囲むように、丘一面が黒く焼け焦げた様子が写っている。

消防隊の消火活動により焼失を免れたステファノ・チェリオの写真インスタレーション。Photo: Courtesy of the Artist, Stefano Cerio

皮肉なことに、約1カ月前に設置されたこれらの作品は、2016年にシチリア島パンテッレリーア島国立公園で発生した大規模な山火事の痕跡を写したものだった。写真には、灰色の霧の中から焼け焦げた森が浮かび上がり、葉や地面に散布された難燃剤が赤橙色に輝いて見える。鑑賞者は後になって、その鮮やかな色彩が難燃剤によるものだと気づく仕掛けになっている。

チェリオは、「The Redemption of Nature(自然の贖い)」と題したインスタレーションについて、アルトリブネに「山火事で散布された赤い難燃剤の痕跡をデジタル処理で増幅し、焼失した風景全体を覆うような表現を試みました」と語っている。

本展は、アリアンナ・カターナがキュレーションを手がけた屋外写真展「ジベッリーナ・フォトロード」の一環として開催されており、町の伝統的なアートフェスティバルにも組み込まれている。9月9日には、同じく「The Redemption of Nature」と題された写真集の刊行が予定されており、ムゼオ・デッレ・アルティ・カッラーラ(MudaC)では9月11日から2027年1月10日まで同名の個展も開催予定だ。写真集と展覧会はいずれも山火事に見舞われた地中海地域を取り上げながら、「自然が再生し、ゆっくりと自らの空間を取り戻していく力──すなわち生態学的遷移の過程を記録する」ことをテーマとしている。作品制作にあたり、チェリオはシチリア島やサルデーニャ島の火災被災地を何カ月にもわたって繰り返し訪れ、季節の移ろいとともに風景が再び生命を取り戻していく姿を見つめ続けた。

屋外写真祭「ジベッリーナ・フォトロード」に出品された、ステファノ・チェリオ《Panteleria 1》(2026)。この作品を含む大型写真パネル7点は、実際の山火事によって焼失寸前となった。

環境保護団体レガンビエンテ(Legambiente)の報告によると、今年シチリア島で発生した山火事による焼失面積は2万4451ヘクタールにも達し、南イタリア全体の焼失面積の約70%を占めた。これはサッカー場約3万5000面分に相当し、シチリアは4年連続でイタリア国内で最も深刻な山火事被害を受けた地域となっている。一方、欧州森林火災情報システム(European Forest Fires Information System)によれば、西ヨーロッパでは記録的な熱波と山火事が続き、8月9日時点で焼失面積は130万エーカー(約53万ヘクタール)を超えた。とりわけイタリア、スペイン、フランスで被害が拡大している。(翻訳:編集部)

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