「ひざまずいて頼んだ」──《バイユーのタペストリー》貸出交渉の舞台裏
およそ1000年ぶりにイギリスへ里帰りした《バイユーのタペストリー》。大英博物館における待望の展覧会の開幕まであと1カ月になった8月11日、ニューヨーク・タイムズ紙がフランスからの貸出決定の裏側を報じた。

この秋、ロンドンの大英博物館で行われる《バイユーのタペストリー》の展示が大きな話題になっている。これは、11世紀にイギリスで作られたとされる全長約70メートルの刺繍作品で、門外不出とされていたフランス・ノルマンディーのバイユー・タペストリー美術館から貸し出されたものだ。それが実現に至った経緯の裏話を、8月11日にニューヨーク・タイムズ紙が報じた。
その記事で同紙記者のアレックス・マーシャルは、1066年のノルマン・コンクエスト(ノルマン人のイングランド征服)を描いたロマネスク様式の貴重な文化遺産が、約1000年ぶりに英国へ里帰りするに至った交渉の舞台裏を明らかにしている。ちなみに、今回の貸し出し期間は、バイユー・タペストリー美術館が改修で休館する時期にあたる。
イギリスがフランスに対して貸し出しを要請するは初めてのことではない。イギリスは1953年(エリザベス2世の戴冠式)、1966年(征服から1000年の節目)、そして1972年と1980年にも同作品の貸与を求めていた。では今回、何があったのだろうか?
マーシャルの記事によると、イギリスの文化担当高官クリス・ブライアントが、昨年カンヌ国際映画祭を訪れ、当時のフランス文化大臣ラシダ・ダチと会談した(右派として度々物議を醸したダチはパリ市長選出馬のため2月に辞任)。
30分間の予定の打ち合わせに25分遅れて到着したダチは、その場でタペストリーについて良い知らせがあるとブライアントに伝えた。ただし、マーシャルの記事によると「ひざまずいて頼むよう告げた」という。
対するブライアントは、実際に片膝をついたと述べている。それから数週間後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が大英博物館でその貸与に関する協定を発表した。
ブライアントの話は、貸し出しを勝ち取った考えるイギリス人が抱くであろう感情とは程遠いものだ。とはいえ、国外には出さないだろうと見られていたフランスから同意を取り付けたことに変わりはない。
《バイユーのタペストリー》の展示は、2026年9月10日から2027年7月11日まで行われる。7月1日に発売された12月末までの観覧チケットは24時間あまりで完売し、2027年分のチケットは10月と1月に販売が開始される。
大英博物館は、同館の2世紀半にわたる歴史の中で最多の来場者を集めるだろうとの見解を明らかにしている。(翻訳:石井佳子)
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