「台湾館」の表記をめぐり、光州ビエンナーレと台湾が対立。参加作家らは「政治的検閲」と抗議
9月5日に開幕する第16回光州ビエンナーレで、「台湾館」の名称が「NTMoFA」に置き換えられた。これをめぐり、台湾側と主催側が対立している。

韓国南西部に位置する光州で9月5日に開幕する第16回光州ビエンナーレから、「台湾館」の表記が消え、国立台湾美術館の略称「NTMoFA」に置き換えられた。これに対して、参加アーティストや台湾政府は「一方的な改称」であり「政治的検閲」であるとして非難している。
国立台湾美術館は今年初め、台湾館の名称で展示企画を光州ビエンナーレに提出し、採択された。台湾文化部によれば、双方は4月に契約を締結し、その後も同名称で展示準備を進めていたという。ところが6月以降、主催者側の資料では「NTMoFA」の名称が使われるようになった。この名称をめぐり国立台湾美術館は主催者側との協議を続け、駐韓国台北代表部の釜山事務所も7月初旬に変更を把握し、異議を伝えた。しかし、8月初旬に公開された公式ポスターや広報物に依然として「NTMoFA」と記載されていたため、国立台湾美術館は主催側に「台湾館」に表記を戻すよう要請した。
また、8月15日には、台湾館のキュレーターを務めるチェン・シャンウェン(陳湘汶)をはじめとする10人が、「検閲された台湾館(受審查的台灣館)」と題された共同声明を発表。声明は、参加アーティストやキュレーターの同意を得ないまま台湾館の名称が変更されたことについて、「表現の自由と世界の芸術コミュニティ全体に対する脅威」だと訴えている。
光州ビエンナーレは、1980年の光州民主化運動の歴史を背景に、民主主義や人権をめぐる議論を文化や芸術を通じて継承してきた。共同声明はこうした歴史を踏まえ、参加者が自らの展示をどのように名乗るかに制約を加えるのであれば、ビエンナーレ側にはその理由を説明する責任があると訴えている。参加アーティストのひとり、チェン・シェンユゥ(鄭先喻)はHyperallergicの取材に対し、次のように語っている。
「今回の声明に署名したのは、台湾固有の問題としてではなく、検閲の問題として捉えているからです。あらゆるアーティストが、同様の問題に直面する可能性があります。私たちには誰もが、政治的な干渉を受けることなく、自分の名を名乗ったり、作品や展覧会を命名する権利があるのです」
8月17日、台湾文化部は名称変更にあらためて強く抗議し、会場内のすべての資料で「台湾館」の表記に改めない場合、「必要な措置を取ることを辞さない」と表明した。
だが、光州ビエンナーレは8月19日に発表した声明で、今回の問題は展示内容や表現の自由に関するものではなく、参加区分と名称表記をめぐる運用上の相違だと説明した。主催者側によると、同ビエンナーレには国家と機関の双方が参加しており、ナショナル・パビリオンとして参加する場合には、当該国の大使館または文化省が発行した参加承認の公文書を提出する必要があるという。国立台湾美術館は機関として参加手続きを行ったため、広報物では機関名の「NTMoFA」を使用したと説明している。一方、台湾側は「台湾館」として採択されたと主張しており、名称の位置づけをめぐって双方の主張は対立している。