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今週末に見たいアートイベントTOP5: NYの気鋭作家ジョナサン・チャプリンが夢想する未来都市「Metropolis」、ヒグチユウコの活動を1500作品から振り返る「CIRCUS FINAL END」ほか

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

ジョナサン・チャプリン「Metropolis」(NANZUKA UNDERGROUND)より、キャプション入る

1. ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END(森アーツセンターギャラリー)

《終幕》 2022年 ©Yuko Higuchi

可愛くも怪しいヒグチワールドを一望する「サーカス」のフィナーレ

可愛らしいが不穏さも併せ持つ少女、キノコや奇妙な生き物など、幻想世界を緻密な筆致で描き出すヒグチユウコの全国9会場を巡回した大規模個展が、東京で集大成を見せる。作品点数は、巡回先で展示された約500点の3倍となる、圧巻の約1500点。東京展のために描き下ろされた大作《終幕》だけでなく、全会場の描き下ろしメインビジュアルも並び、フィナーレに花を添える。

約20年の画業を見渡す本展。会場ではヒグチが背景を担当した、ぬいぐるみ作家・今井昌代のビジュアルブック『カカオカー・レーシング』(2017年、グラフィック社)の立体展示が出迎え、『ギュスターヴくん』などの絵本の仕事を始めとする多くの作品原画が空間を“サーカス”のように彩る。本の装画や、近年精力的に取り組む映画にまつわる作品なども紹介する。4月3~6日と10日は開館時間を20時まで延長し、すべてのエリアで写真撮影ができるイベントを開催。

ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END
会期:2月3日(金)~4月10日(月)
会場:森アーツセンターギャラリー(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階)
時間:10:00 ~ 18:00 (金曜と土曜は~20:00、入場は30分前まで)


2. 宮島達男「Numerical Beads Painting」(SCAI THE BATHHOUSE)

Tatsuo Miyajima, 《Numerical Beads Painting - 006》 (detail) 2022, Acrylic on Canvas, Numerical Beads, pencil, 259 x 259 cm ©Tatsuo Miyajima Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE

平面と空間の境界を越える、世界的アーティスト・宮島達男の新シリーズ

1から9までの数字が明滅するLEDのインスタレーションで世界に知られる、コンセプチュアル・アーティストの宮島達男。今展で発表する新作シリーズでは、代名詞のLEDではなく数字が刻まれたアクリル製ビーズを用いる。作家が追究し続ける「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」の3つのコンセプトの、新たな展開を目の当たりにする。

新作シリーズ「Numerical Beads Painting」は、グリッド線が引かれたキャンバスに、コンピューターでランダムに算出させた設計図面に沿ってビーズを配置。その偶然性は自然淘汰や突然変異などの生命のふるまいを感じさせる。さらに、ビーズの数字の間を縫うように絵筆で色彩が乗せられ、静的なビーズに動的な視覚効果が加えられている。また別の作品は、白いキャンバスからビーズが床に散らばり、平面と空間を隔てるメディアの境界を越えていく。1990年代初めにパリの手芸問屋街で数字のビーズを見つけ、本シリーズに昇華させたという。

宮島達男「Numerical Beads Painting」
会期:2月28日(火)~4月15日(土)
会場:SCAI THE BATHHOUSE(東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡)
時間:12:00 ~ 18:00 


3. マベル・ポブレット展「WHERE OCEANS MEET」(CHANEL NEXUS HALL)

Mabel Poblet, WANDERING, 2022/ MY AUTUMN SERIES Artwork photo courtesy of Alejandro Gonzales  

キューバの注目作家が日本初個展。島国のアイデンティティと海を渡る移民を見つめる

2017年のヴェネチア・ビエンナーレで注目された気鋭のキューバ人アーティスト、マベル・ポブレットの日本初個展。カストロ政権下に育った1986年生まれのポブレットは、自身のアイデンティティや経験を基に、写真やミクストメディア、ビデオアート、パフォーマンスアートなどを制作し、キューバ社会と今日の世界について問いかけてきた。

作家の大事なテーマである「水」「海」は、島国キューバの象徴でもあり、移民の話題も切り離すことはできない。海を渡って救われることも、時に命を失うこともある。ポブレットは本展を「生と死の歌、海風の歌、そして愛と憎しみ、喜びと悲しみ、涙とため息、安穏と激動の歌」と説明している。展示作品の「My Autumn」シリーズでは、写真のイメージを無数のピラミッド型の折り紙で再構成。移民がテーマの「Homeland」シリーズでは、海への供物を想起させるプラスチック製の花で、青いキャンバスを埋め尽くした。眼球を思わせる半球型の映像作品や、鏡の空間を歩かせるインスタレーションなどで、鑑賞者を作品世界へと巻き込んでいく。

マベル ポブレット展「WHERE OCEANS MEET」
会期:3月1日(水)~4月2日(日)
会場:CHANEL NEXUS HALL(東京都中央区銀座3-5-3シャネル銀座ビルディング4階)
時間:11:00 ~ 19:00 (入場は30分前まで)


4. VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち(上野の森美術館)

VOCA 賞 永沢碧衣《山衣(やまごろも)をほどく》 アクリルガッシュ、岩絵具、熊膠、墨汁、ティッシュ、カンヴァス、木製パネル 249.5×399×4.5 ㎝

VOCA展グランプリは、熊を狩猟し、自らの記憶と重ねて描く永沢碧衣

平面作品を手掛ける現代の若手作家の登竜門として知られる「VOCA展」も今年で30周年。国際的にも優れた才能を支援するため、全国の学芸員ら“目利き”が候補者を推薦し、これまで福田美蘭や、やなぎみわといった逸材に光を当ててきた。グランプリであるVOCA賞は今回、1994年生まれの永沢碧衣が受賞。奨励賞にエレナ・トゥタッチコワと七搦綾乃、佳作賞は黒山真央と田中藍衣、大原美術館賞は七搦綾乃。

本展では、気鋭の29人の出品作を紹介する。ツキノワグマを描いた《山衣(やまごろも)をほどく》でVOCA賞に選ばれた、秋田県在住の永沢碧衣は狩猟免許を持ち、自ら山に入って神聖な動物とも害獣ともされる熊を狩り、毛皮から抽出した熊膠を使って絵を描いている。各地の風土に触れ、動植物の本能から人間の営みに思いを至らせる永沢は「同じ奥羽山脈の中で暮らす彼(熊)の身体と私自らの記憶を画面上で再び重ね合わせていく時間は、私達がいつかどこかでつながり合っていた世界を示してくれたように思えます」とコメントしている。

VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち
会期:3月16日(木)~30日(木)
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
時間:10:00 ~ 17:00 (入場は30分前まで)


5. ジョナサン・チャプリン「Metropolis」(NANZUKA UNDERGROUND)

キャプション入る

NYの新世代アーティストが新作を発表。デジタルテクノロジーと美術・建築史の融合

デジタルテクノロジーを駆使するニューヨーク在住のアーティスト、ジョナサン・チャプリンが、「建築」や「空間」からイメージした新作ペインティングを発表する。物体の形状や質感、光源、シェーディングなど絵画制作に必要なあらゆる物理的要素を、コンピューターの3Dソフトであらかじめシュミレートするのが、チャプリンのスタイル。そんな独自のアプローチを経ることで、画題に選んだ対象物の本質を浮かび上がらせる。

今回展示するのは、20世紀半ばにル・コルビュジエやロバート・モーゼスらが手掛けた未来都市建築プロジェクトと、ロシアの美術家カジミール・マレーヴィチが提唱した絵画様式のシュプレマティスム(絶対主義)を研究して生みだした作品シリーズ。長い構想期間と複雑な工程により完成させた、大掛かりなブロンズ製の噴水の立体作品も展示する。

ジョナサン・チャプリン「Metropolis」
会期:3月18日(土)~4月16日(日)
会場:NANZUKA UNDERGROUND(東京都渋谷区神宮前3-30-10)
時間:11:00 ~ 19:00

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