訃報:グロリア・スタイネムが92歳で死去。アート界にも大きな影響を与えたフェミニスト活動家
女性解放運動をけん引してきたグロリア・スタイネムが、92歳でこの世を去った。アート界とも深く関わり、ジュディ・シカゴやアニー・リーボヴィッツらと交流を重ねてきた。
現代の女性解放運動をけん引したフェミニスト活動家のグロリア・スタイネムが、92歳で死去したことが、本人のInstagramを通じて発表された。投稿のキャプションにはこう記されている。
「スタイネムは晩年、他者と交流すること、そして文章を書くことという、彼女が最も愛した2つのことに時間を費やしていました。自宅のリビングルームでは『トーキング・サークル』を開き、これまでに何百人ものゲストを迎えてきました。彼女はこの集まりを、自分が亡くなった後も続けてほしいと強く望んでいました」
また、近刊予定の著書『An Unexpected Life』では、50年以上暮らしてきたブラウンストーンの自宅について、自分以前にも人々が暮らし、自分が去った後も新たな人々を迎える場所だと記している。投稿では、この本と、自宅を社会正義運動の拠点として残そうとする彼女の取り組みを、後世に受け継がれることを願って残したものとして紹介している。なお、彼女の死因は明らかにされていない。
スタイネムの影響力は多岐にわたり、とりわけアート、写真、ポップカルチャーの分野で顕著だった。彼女の人生は多くの映像作品で描かれている。ヒュー・ヘフナーが経営するニューヨークのプレイボーイ・クラブで、彼女自身がプレイボーイ・バニーとして潜入取材し、ウェイトレスの労働実態を暴露した記事を基にした1985年の映画『A Bunny’s Tale』では、カースティ・アレイが彼女を演じた。また、2020年の伝記映画『グロリアス 世界を動かした女たち』では、ライアン・キーラ・アームストロング、ルル・ウィルソン、アリシア・ヴィキャンデル、ジュリアン・ムーアらが各年代のスタイネムを演じている。同年には、ミニシリーズ「ミセス・アメリカ〜時代に挑んだ女たち〜」でも、ローズ・バーンが彼女の役を務めた。

映像作品の題材となっただけでなく、スタイネムは生涯を通じて多くのアーティストと親交を結んだ。なかでもよく知られているのが、6年間にわたって同居したバーバラ・ネシムとの関係だ。2人は、当時ネシムと交際していた『エスクァイア』のアートディレクター、ヘンリー・ウルフを通じて知り合った。当時スタイネムは、同誌でウルフのアシスタントを務めていたロバート・ベントンと交際していたという。2016年のi-Dマガジンのインタビューには2人そろって登場し、スタイネムはネシムから「ものの機能ではなく、形を見る視点」を学んだと語っている。
また、スタイネムはファッション写真家のアニー・リーボヴィッツの友人であり、よき相談相手でもあった。彼女は、ニューヨークのベイビュー女性刑務所で開催されたリーボヴィッツの2016年の展覧会「Women: New Portraits」のために序文を執筆している。
晩年のスタイネムは公の場に姿を見せる機会を減らしていた。それでも、ジュディ・シカゴのためなら例外だったという。ハマー美術館の元ディレクター、アン・フィルビンはアート・ニュースペーパーに、スタイネムを同館のガラに何度招いても断られていたが、2019年に表彰されたシカゴの紹介役を依頼すると引き受けてくれたと明かしている。
壇上でスタイネムは、「アート界はジュディ・シカゴ以前と以後に分けられると言ってもいいでしょう。少なくとも、私の人生はそうです」と称賛。「私たちはあなたを愛し、尊敬しています。今日、あなたを紹介できることを心からうれしく思います」と語った。
2023年、マリリン・ミンターは、ニューヨークの東89丁目にあるLGDRギャラリーで開いた個展で、自身が敬愛する女性たちの肖像画を発表した。そのなかにはスタイネムをはじめ、活動家のモニカ・ルインスキーやレディー・ガガらが含まれていた。ロー対ウェイド判決が覆された2022年、ミンターはUS版ARTnewsのインタビューでこう語っている。
「希望を捨ててはいけません。自らを『Hopeaholic(希望中毒)』と呼ぶグロリア・スタイネムがいつも私たちに思い出させてくれるように、どれほど困難な状況でも、希望を持って毎日行動し続けることが大切なのです」
1983年に出版されたスタイネムのベストセラー『Outrageous Acts and Everyday Rebellions』は、2025年10月10日から2026年7月5日までブルックリン美術館で開催された展覧会「Everyday Rebellions: Collection Conversations」の着想源となった。同館によれば、展覧会では、現代アーティストたちが日々の生活のなかで既存の価値観や社会のあり方にどのように異議を唱えているのかを紹介したという。スタイネムのエッセイと同様に、個人の選択や行動によって、既成の考え方を揺さぶり、抵抗のあり方を捉え直す可能性に光を当てた。
一方、スタイネムのフェミニズムや女性解放運動への姿勢が、誰からも歓迎されたわけではない。ガーディアン紙によると、1970年代にスタイネムがニューメキシコ州にあるジョージア・オキーフの自宅を訪ねた際、玄関先で追い返されたという。スタイネムはオキーフの絵画を深く敬愛していた。ところが、オキーフ自身は「女性アーティスト」というレッテルを貼られることに激しく反発しており、自分のジェンダーによって作品を位置づけられることを強く拒んでいた。(翻訳:編集部)
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